カルチャー

プレミアムジャパン・アートプロジェクト<建築家シリーズ> Vol.18

想像力がもつ変革の力を信じる建築家、海法 圭(後編)

2017.02.25

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「プレミアムジャパン・アートプロジェクト」の若手建築家の連載インタビュー。海法 圭の後半では、空想と現実というふたつの面から建築を捉える彼の手法を紹介。建築における想像力の大切さについて語ってもらった。

空想的な提案で解の可能性を広げたい

海法の発想は時として、従来の建築の守備範囲をあっさりと超えてしまう。彼が宇宙工学の研究者であるサイスッチャリット・ポンサトーンと共同で発表した『空飛ぶマンタ』は、SF的とも言えるスケールのプロジェクトだ。高度1キロメートルの上空に10キロメートル四方のマイクロフィルムの膜を浮遊させ、その表面で太陽光発電を行うと同時に太陽光を適度に遮蔽し、快適な都市環境を作り出す。

(2)rd1000_manta1写真(上)/「空飛ぶマンタ」Flying Manta
都市全体をひとつの巨大な空間と捉え、その環境をパッシブに調節するという壮大なプロジェクト。屋内とも屋外ともいいきれない大きな環境が生まれる。上空でマイクロフィルムの皮膜が水平に広がるための工学的なアイディアも検討されている。

「宇宙の出来事のほとんどは不可視で非同時的であるとバックミンスター・フラーが示唆したように、世の中の多くのことは正しく理解することは非常に難しいと思います。宇宙の世界は建築とは完全に専門分化した別のものというイメージがありますが、建築の検討条件から人と重力の2つを抜けば宇宙の提案もできるというのが発見でした。都市空間を考えるときも前提条件ばかりに支配されて議論が矮小化することがないように心がけています。」

(3)_MG_0687-min海法はこうした空想的な提案を行ういっぽうで、極めて現実的なプロジェクトも手がけている。その一例が2012年に竣工した『西田の増築』だ。既存の木造住宅の平屋部分の屋根のうえに四坪弱の細長い部屋を増築。

中学生の女の子が利用する部屋なので天井高を1.9メートルに抑え、部屋幅は両手を広げるとぎりぎり届かなそうな幅に抑えてある。開口部の引き違い窓も子供の手で扱いやすいサイズに調整されている。また将来的には床を抜くことで、一階の和室に光をとりこみ、風を送りこむ塔屋の役割を果たすこともできるという。

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(5)rd1700_n2写真(上)/「西田の増築」Extension N Photos by Kei Kaihoh Architects
(上)増築部分の内部。天井の低い細長い空間になっている。(下)建物の外観。増築部分は既存の平屋部分の屋根のうえに載っている。建築とも工作物ともとれる独特のスケール感が興味深い。

「ここでは、地方の住宅地の街並みを主に構成するミニアパート、戸建住宅、物置、車庫などの諸要素のスケール感に当てはまらない大きさのボリュームを挿入しています。住まい手の生活の一部が身体感覚によりそったボリュームとして規定され、それが街の風景に新しい要素として参加するようにしました。」

 

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