プレミアムジャパン・アートプロジェクト<建築家シリーズ> Vol.21

リノベーションを通じて建築の新しい可能性を探る建築家、   青木弘司(前編)

2017.03.10

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「プレミアムジャパン・アートプロジェクト」の若手建築家の連載インタビュー。10回目に登場するのは青木弘司。前半ではリノベーションのプロジェクトを中心に彼の設計の方法論について話を聞いた。

暮らす人の時間を断絶させないリノベーションを

近年リノベーションは建築家が積極的に関わる領域のひとつとして注目を集めている。特に若い建築家にとっては、リノベーションは新しい建築の可能性を見出すうえでの格好の思索と実践の場といえる。

藤本壮介建築設計事務所から独立後、最初に発表した「調布の家」には、彼が考える新しい方法論が明確に反映されている。改修の基礎となっているのは築25年の木造住宅だ。内部をいったんスケルトンの状態に戻したうえで、構造的な補強と設備のリニューアルを行うという点では一般的な改修工事と大きな違いはない。青木の独自性はその先の部分、つまりリノベーションを通じて建築の新しい可能性をいかに広げていくかにある。

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写真(上)/ 「調布の家」House in Chofu 2014 Photos by Anna Nagai(上)あらゆるモノが断片的に並置され、新旧の要素が渾然一体となった内観。(下)トップライトの直下に再配置された真っ白い階段や本棚は、インテリアに緩やかな秩序を与えている。

「藤本さんの事務所には8年間いたのですが、当時はリノベーションの仕事はほとんどありませんでした。ところが独立すると立て続けに住宅の改修の依頼を頂いた。自分にはリノベーションの経験がなかったので、いろいろなリノベーションの事例を気にかけて見るようになりました。なんとなく見えてきたのは、新旧の対比を際立たせるような手法でしたが、直感的に『それは違うのではないか?』と思いました」

このように青木はリノベーションを通じて思考を深めた経緯を語り始めた。新旧のコントラストを強調したデザインは、両者を時間的に断絶し、過去を標本化してしまうという。 

「施主はリノベーションに対して複雑な感情を抱いています。今まで住んでいた家には愛着を持ちつつ、いろいろと不具合もあるのでリニューアルしたいと思っているわけです。つまり既存の部分に対して新たに手を加えていくことは、本来とてもデリケートな作業なのです。それにも関わらず、両者の対比をデザインのアリバイにしてしまうような態度は、傲慢でしかないと思います」

こうした考えかたは設計のプロセスにも反映されている。リノベーションの場合は、建築家が現場で「この部分は残そう」といった判断を行うケースが多い。しかし青木は敢えて現場での直感的な判断を避けたという。

 

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