シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー・シグナチャー2011「いますぐ飲みたい日本ワイン」vol.02 柳忠之

2015.10.01

 

メルローG2011

 

奇跡を起こしたメルローの栽培

シャトー・メルシャンのフラッグシップ、桔梗ヶ原メルローの初ヴィンテージは85年。誕生から今年で30周年を迎えます。

このワインの原料となるメルローが栽培されているのは、長野県塩尻市の北部、奈良井川の扇状地にあたる通称桔梗ヶ原。もともとこの土地では、甘味果実酒(ふつうのワインに甘味料などを加えた酒)に使われる、北米系品種のコンコードがたくさん栽培されていました。ところが日本国民の生活が豊かになり始めた60年代後半から、甘味果実酒の需要は減少。75年には辛口のテーブルワインに逆転されてしまいます。

当然、ワイナリーは甘味果実酒の減産を決断しますが、困るのはブドウ農家の人たち。独特の香りをもつコンコードは、辛口テーブルワインには不向きな品種で、ワイナリーももはや、ブドウを買い支えられなくなっていました。そこで本格的なテーブルワインの時代が来ることを見据え、どのワイン専用品種ならこの土地で成功するかを考えた末、メルローに決まったのです。

この英断を下したのは、当時の工場長でワインに関する著作を多く遺した故浅井昭吾(ペンネームは麻井宇介)さん。リスクヘッジとして他の品種を同時に植えることさえしない、大きな賭けでした。

しかし、その賭けは見事に当たります。初ヴィンテージの桔梗ヶ原メルロー85年が、リュブリアーナ国際ワインコンクールで大金賞を受賞。日本ワインのポテンシャルの高さを内外に示す第一歩となりました。

さらなる高みを目指し、シグナチャー登場

その後、醸造アドバイザーにシャトー・マルゴーのポール・ポンタリエさんを招聘し、パワフルからフィネスとエレガンスに軌道修正した桔梗ヶ原メルロー。ここに紹介するのは桔梗ヶ原メルローでも、ただの桔梗ヶ原メルローではありません。ブレンドの段階で秀逸なロットを選び、限定本数を瓶詰めした特別品。その名も「シグナチャー」です。

最新の2011年ヴィンテージはじつに素晴らしいワイン。色調は深みのあるルビー色。完熟したブラックベリーやブルーベリーに香ばしいビターチョコレート。甘草や丁子のフレーバーもほんのりスパイシー。口に含めば豊潤な果実味が広がり、まるで果物の風船が膨らんだかのよう。舌触りは滑らかしなやかで、どこかが引っかかることのない、見事な球体をしています。

話をうかがったところ、この2011年のシグナチャーには100%、フランスと同じ垣根仕立てのメルローが使われてるとか。日本式の棚仕立てだと病害のリスクが減る反面、反収が大きく、どうしても質の点では垣根に及びません。垣根のブドウのみになって、またワンステップ先に進んだ印象を受けます。

2011年は二度も台風が襲い、晩腐病に見舞われながら、選果に次ぐ選果でここまで質を高めることが出来ました。桔梗ヶ原メルロー・シグナチャー、日本が誇るグラン・ヴァンですね。

オープン価格(参考小売価格17,870円)/メルシャン■0120-676-757

取材・文/柳 忠之

 

【柳忠之の〈いますぐ飲みたい日本ワイン〉】一覧記事はこちら
http://www.premium-j.jp/tadayuki-yanagi/

Area