白隠正宗 愛国純米酒きもと造り:「気になる日本酒」 vol.33 あおい有紀

2016.07.12

rd500__1

コミュニケーションツールとして、ひと晩中飲み続けられるお酒

今回ご紹介する、「白隠正宗」を醸す高嶋酒造は、静岡県沼津市で1804年(文化元年)創業。白隠禅師(はくいんぜんじ)ゆかりの松蔭寺のお膝元であることから、白隠正宗、と命名されました。富士山からの超軟水の湧き水を地下150mから組み上げ、仕込み水として使用しています。

現在、蔵元杜氏として酒造りに情熱を注ぐのは、高嶋孝一社長(38)。東京農業大学卒業後、酒類総合研究所の研修後23歳で蔵に戻り、酒造りに携わることに。25歳で代表取締役社長に就任、29歳から杜氏も兼任することとなりました。「酒造りは天職だと思います」ときっぱり言い切る高嶋社長。大学三年生の時に、同県にて「開運」を醸す土井酒造場で2週間研修を受けた際、波瀬正吉杜氏の酒造りへの姿勢や、土井清愰現会長の「酒造りは誰にでもできる商売ではないから、楽しんでやりなさい」というひと言に、とても感化されたといいます。

rd500__2

大学時代は、醤油の麹の酵素などを研究していましたが、師事していた先生が非常に食に対して関心が高かったことから、高嶋社長も大きな影響を受けることになります。

「バイト代などはほとんど食に費やし、エンゲル係数が異常に高かったですね。友人と高級フレンチに行ったり、25歳の時には、すきやばし次郎に一人で行ったこともあります。小学校時代に、料理評論家の山本益博氏がお勧めの店を紹介する番組をやっていて、好きでよく見ていたのですが、その時放送していた銀座の地下にあるお寿司屋さんが凄い、という当時の記憶を頼りに…。食に対する憧れが人一倍強かったんですね」と。ミシュランガイドなどまだない時代に、本物にたどり着く探究心、そして行動力に驚きました。

「食べたことがないと、どんな味だか分かりませんし、本物を知ることで、例えば回転寿司で美味しいかまずいかが分かるようになりました。自分のなかで、どんどん判断基準が明確になっていったんですね。酒造りも、どういうシチュエーションで楽しむ酒なのか、料理から考えていかないと、と思っています。流行の味わいもあっていいのですが、それを知っててやるかやらないかを自分で判断できる基準を持っていなくてはいけないと感じています」

若い頃の食への投資が、今のブレない酒造りにも活かされていたのですね。

次ページ《コミュニケーションツールとしての役割》