【東京 台東区駒形】松波:「食の王道」vol.37 広川道助

2016.07.28

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「下町の粋」とは、この人のために作られた言葉ではないかとさえ思っています。浅草駒形の鮨「松波」の大将、松波淳一郎さんのことです。いまは好々爺という感じもしますが、私がはじめてうかがったときは颯爽として、ダンディそのものでした。

この店はまず、暖簾をくぐると驚かされます。一階は玉砂利を敷き詰めた参道しかないのです。そして、中央に備えつけられた螺旋階段を上がっていくと、二階に樹齢200年の備前檜のカウンターがあるという贅沢な仕立てになっています。

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松波さんはカウンターの真ん中に陣取って、にこにこと迎えてくれました。京橋「与志乃」の出身と聞くと、寿司好きなら頷くことでしょう。「すきやばし次郎」の小野二郎さんを始めとして、数多の名人を輩出した名寿司店として知られたところです。その「与志乃」の先代の下で修業した松波さんは、「本手返し」と呼ばれる流線型の美しい握り方をする、いまや数少ない職人のひとりです。

ビールを飲んでいると出されるのが梅干しのペーストと海苔。定番のおつまみですが、これが実に酒に合い、幾度もお代わりをしてしまいます。日本酒を所望すると、金箔入りの「ゴールド賀茂鶴」のみとのこと。これを置いてある店は通な老舗というのが私の経験則ですが、今回も見事に当てはまりました。

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カウンターの置かれたざるに乗っているのが、この日のネタ。さほど数は多くありませんが、どれも一級品だとわかります。ほしかれい、たこ、あわびと、この時期のネタが、きちんと仕事をされて出てきます。

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