「食の王道」vol.63

【東京 大手町】巽:グルメキュレーター 広川道助

2017.01.26

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最近のホテルは、料理ジャンルによっては自前でダイニングを用意せず、街場の定評あるところと提携することが多くなっています。

皇居前にある由緒正しいパレスホテルも、2012年に新装オープンした際、鮨部門はかねさかグループ、中華部門は中国飯店グループにゆだね、「鮨かねさか」「琥珀宮」を立ち上げました。どちらも評判は上々で、うまくいっていると思います。

パレスホテルのような都心の一等地にある高価格帯のホテルは、東京の美味しい料理店を食べ歩いている世界各国のビジネスマンが使います。泊まっているんだからそのまま食べてくれるだろう、という発想はいまや通じないということなんでしょう。ホテルの飲食担当者はさぞや、日ごろから食べ歩いているに違いありません(笑)。

日本料理は定評のある「和田倉」ブランドをそのまま使っています。ランチも最低6000円からと強気な価格設定なのは新装前と変わらず、立地の良さも手伝って、パレスの和田倉人気は不動なのでしょう。

しかし天ぷらは大幅に変わりました。内装も明るい、現代的なものになりました。「巽」と名づけられた6席の独立したコーナーで、和田倉の一角にあります。

開店当初、六本木ミッドタウンのホテル「リッツ・カールトン東京」の天ぷらコーナーの評判を上げ、いま東京でも一番ホットな天ぷら店の麻布十番「たきや」を立ち上げた笠本さんの指導を受けたそうで、たきやと同じ紅花一番絞りの油を使っています。どうりで油の匂いがしないわけです。

私は江戸前天ぷらの胡麻油の香りは決して嫌いではないのですが、あれは天丼に似合った味です。やはり、匂いが強すぎると素材の繊細さを凌駕してしまう可能性を懸念するのです。海鮮だけならまだしも、野菜を多用する現代の天ぷらでは、油の種類はもっとセンシティブに考えたほうがいいと思います。

まずはシャンパーニュで乾杯。

突き出しの小鉢が美味しいのも、最近の天ぷら店の特徴です。天ぷらに限らず、いまの料理はジャンルの違いを飛び越えたマリアージュが評価されています。外国人の多いホテルならなおさら、そこのところに敏感な料理人がいなくてはいけません。

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車海老から始まる天ぷらは、油の種類も手伝って軽快でもたれません。衣の存在を感じさせないふわりとした着地感で、いくらでも食べられる。この日は日本酒を合わせましたが、ワインにも合いそうです。
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野菜が多く、きちんとうまみを閉じ込めて揚げる。特に中がジューシーな茄子の天ぷらは秀逸でした。海鮮はもちろん、大きなきすの揚げ方も上々だし、穴子もきっちり着地しています。

 

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