福寿 純米吟醸 ブルーボトル:「気になる日本酒」 vol.07 あおい有紀

2015.11.20

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言わずと知れた、日本酒生産量全国No.1である兵庫県灘の地で260年以上続く老舗

宝暦元年(1751年)創業、兵庫県の灘五郷に260年以上に渡り蔵を構える神戸酒心館。「福寿」という酒銘を醸していますが、七福神の一柱「福禄寿」に由来しており、この酒を飲む方に財運がもたらされますようにとの願いが込められています。

六甲山と瀬戸内海の間に位置する灘五郷は、江戸時代には樽廻船で灘の酒が江戸に運ばれるなど、良質な酒造りに適した場所として知られています。六甲山系を流れる河川から運ばれ、西宮市のわずか数百メートル四方にだけ湧き出ている「宮水」は鉄分が少なく、カリウムやリンが豊富に含まれた硬水。そして海に近いことから塩分も適度に含まれていて、このミネラル成分が酵母によるアルコール発酵をしっかり促進することで、江戸まで運んでも劣化しにくく、重宝されました。キレがあり力強く、しっかりとした味わいが灘の日本酒の特徴、「男酒」と言われる所以です。また六甲山から吹き降りてくる「六甲おろし」の寒気が、冬の酒造りに好環境をもたらしています。

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六甲山の裏側には、酒造好適米、山田錦の生産地が広がりますが、この地は高品質の山田錦が生産できる条件が揃っているとのこと。六甲山の花崗岩が風化して出来た粘土質が、酒米の生産に最適な土壌環境となり、さらに日中は日当たりがよく、夜は瀬戸内海からの温かい風を六甲山が遮ることで、夏から秋にかけて昼夜の気温差が10度以上に。この環境が酒米の王様と言われる山田錦のなかでも最高品質のものを生み出す要因。まさに灘の日本酒造りに最適な気候風土は、六甲山の恩恵によるものだったのです。

そんな六甲山のお膝元にある神戸酒心館は、平成7年1月の阪神淡路大震災で、木造蔵すべてが倒壊しましたが、そこから見事復興し現在に至ります。「芳醇な味わい」「エレガントさ」「バランスの良さ」を追求し、近年は管理プロセスのデータ化を重点課題として、さらなる手造りによる高品質な酒造りに取り組んでいます。

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広い敷地内に醸造棟のほか、蕎麦と日本酒を中心に楽しめる蔵の料亭や蔵を改築した多目的ホール、ギャラリー、直売所、試飲コーナーなど、お酒とともに文化を楽しめる施設を設けており、事前に予約すれば、蔵内の見学も可能。外国人の見学者も多く、英語でのガイドも対応し、酒造りのビデオも、英語・中国語・韓国語対応しているので、一般観光客はじめ外国人の方にも広く門戸を開いています。また、灘の地域では酒蔵ツーリズムにも力を入れており、「灘の酒蔵めぐり」バスの運行や、酒蔵ツーリズムタクシー、酒蔵スタンプラリーなどで、灘酒蔵探訪も楽しめます。

 

ノーベル賞授賞式の晩餐会で数量限定の「福寿 純米吟醸 ブルーボトル」が抜擢

福寿は、アメリカ、イギリス、香港などを中心に、15カ国に輸出されていますが、現地の日本料理店だけではなく、高級レストランでも白ワインのような感覚で楽しまれています。世界三大美術館のひとつ、アメリカのメトロポリタン美術館のレストランで「福寿 純米吟醸」が提供されたこともありました。

10年ほど前からスウェーデンにも輸出されていますが、ストックホルムで開催されるノーベル賞授賞式の華やかな舞台で、どのような料理やお酒が振る舞われるのかも注目されるところ。2008年に4名の日本人がノーベル賞を受賞した際に、地元のソムリエ達から「福寿 純米吟醸」が候補に上がり高い評価を受け、採用に至りました。それ以降、日本人がノーベル賞を受賞するたびに「福寿 純米吟醸」が提供され、毎回メディアでも話題になっています。

兵庫県産山田錦や兵庫夢錦などを使い、精米歩合60%の数量限定製造。白い花のような気品ある香り、なめらかな口当たりで瑞々しい果実が伸びやかに広がり、繊細ながらもふくよかな旨味、そしてミネラルを感じる味わいが特徴です。2012年ノーベル経済学賞を受賞されたアメリカのアルヴィン・ロス氏は、ノーベル賞晩餐会で飲んだこの福寿に魅せられて、授賞式の1年後、神戸酒心館を訪問したというエピソードがあるほど。晩餐会では日本人のみならず、外国人受賞者をも魅了しているようです。

 

海外への日本ブランド発信に尽力

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外務省主導の日本ブランド発信事業は、日本の強みや日本的な価値観、伝統、現代日本を形作る文化的背景等、日本の多様な魅力を海外に発信し、日本全体のブランド向上を目指そうという取り組みです。その一貫として、安福武之助社長(42)は今年10月、日本酒の専門家として、オーストラリア、フィジー共和国に派遣され、日本酒セミナーや試飲会を実施しました。安福社長いわく、「初めて日本酒を飲む参加者も多く、特にフィジーは世界のセレブに愛されるリゾートですが、日本酒の浸透度は低く、商流も確立されていません。現地の流通業者に向けて日本酒の多様な魅力や価値を紹介し、またタロイモなど現地の食材を使用したフィジー料理と日本酒を合わせて日本酒の多様性を知ってもらうことで、日本酒への関心は高まり、流通業者から取引の依頼が多くありました」とのこと。世界に通用する日本酒ブランドの確立に向け、手ごたえを感じられたようです。

毎年12月10日に開催される、ノーベル賞授賞式。今年も「福寿 純米吟醸」が祝福のシーンで華を添えることでしょう。

 

取材・文/あおい有紀

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 あおい有紀

フリーアナウンサー・和酒コーディネーター

テレビ、ラジオなど各媒体で活躍する一方、日本の食や和酒の魅力発信を積極的に行い、大切さ、楽しみ方を伝えている。フィールドワークを信条とし、全国の酒蔵に200回以上足を運ぶ。酒蔵ツアーや日本文化×日本酒のコラボイベント、様々な国籍の料理×日本酒のマリアージュイベントなどの企画・主催をはじめ、各地での講演、セミナー講師多数。ル・コルドン・ブルー日本酒講師。観光庁「平成25年度 官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」にて、目利き役。女性向け日本酒本「日本酒日和」(舵社)監修。日本酒造青年協議会「酒サムライ」叙任。 

【資格】きき酒師、焼酎きき酒師、WSET(International Higher Certificate in Wines and Spirits)、一級フードアナリスト、日本箸教育講師など

 

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