「食の王道」vol.74

【東京 六本木】てんぷら みかわ 六本木ヒルズ店:グルメキュレーター 広川道助

2017.04.14

早乙女さんが築いた「みかわ流天ぷら」を
一番弟子の六本木ヒルズで味わう

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たとえば寿司屋の場合、おつまみと握りを交互に出すのは四谷「すし匠」が最初に行ったとか、軍艦巻を発明したのは銀座「久兵衛」だとかいわれますが、そういったスタイルはあっという間に広まってしまいますから、はじめて寿司屋を訪れても、どこの系列で修行したのかが明確にわかることは滅多にありません。

しかし天ぷらは別です。もともと寿司屋の10分の1しかないと言われていますし、高級天ぷらの世界は、天一、天政、山の上などが弟子を輩出し、弟子はその流儀を守りながら発展させている場合が多いからです。

なかでもわかりやすいのが「みかわ」グループです。いまは門前仲町の自宅を改装して「みかわ是山居」で揚げている早乙女哲哉さんが「脱水作業」に注目して、独自の揚げ方を生み出したので、そこの弟子の天ぷらはだいたいわかるものです。

先日も関西の天ぷら屋にうかがう機会があり、最初の数品を見て「みかわさんにいらしたのですか」と聞いたら、修行したわけではないけれど、ずっと通って教わっていたとのことでした。

特に穴子の揚げ方に特徴があって、かなり揚げ色が濃くなるまでしっかり揚げながら、穴子の旨味を最大限に引き出すところにみかわ独特の考え方があると思っています。

ところが先日、ある天ぷら屋で、みかわと正反対の考え方をする主人に出会い、彼の話もなるほど理解できました。そこで、みかわさんの天ぷらをもう一度食べようと、六本木ヒルズ店に訪れたのです。

2-min是山居に行くのがいいのですが、なかなか手軽に予約が取れる場所ではないし、みかわの支店のなかではヒルズ店が一番いいと聞いていたからです。

六本木ヒルズの開店時からいままで営業している飲食店はかなり少なくなってしまいましたが、みかわはその中の一軒。絢爛豪華な内外装はまさに早乙女さん好みです。

寿司好きはよく「天ぷらは火を入れるからネタにはさほどこだわらないでしょう」などといいますが、そんなことはありません。昨今の上質の天だねの高騰ぶりには驚いてしまいます。そんななかで、大振りで肉厚のキスや穴子を置いてあることで、みかわの矜持が見てとれます。

3-minそのキスを外側はしっかりと、中身はホクホクとしながらもはらりと口のなかで溶けていくように揚げる技術は、さすが早乙女さんの薫陶を受けただけのことはあります。周囲の食いしん坊が「ヒルズのみかわはいい」というのもその通りです。

4-minこの日は冬の食材の最後のほうで、なんとか鱈の白子にも間に合いました。この火入れも見事で、中身のとろけ具合がたまりません。隣の常連と思しき人たちが「これが食べたかったんだよ」と感嘆していました。

4a-minそして穴子は一本をじっくり揚げ、ふたつに切ると「ジュワッ」という音がします。穴子の香りと油の匂いが相まって、すぐにでもかぶりつきたくなるほどです。

最後はかき揚げ。これまた大粒の小柱を揚げ、天丼でいただき、大満足でした。

5-minみかわと別のアプローチをしている天ぷら屋さんの話は、また折をみて話したいと思いますが、早乙女さんが一代で作り上げた「みかわ流天ぷら」はじゅうぶん健在だと思った一夜でした。

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「てんぷら みかわ 六本木ヒルズ店」
住所:港区六本木6-12-2 六本木ヒルズ けやき坂通り レジデンスB棟 3F
電話:03-3423-8100
営業:11:30〜14:00、17:30〜21:30 水曜休み

 

《プロフィール》
広川道助
学者の家系に育つ。西欧で一時期を過ごし、早い時期から食の世界を志す。20代はフレンチに凝ったが、その後、日本料理の深遠さに目覚め、ここ数年は和食全般を系統だてて食することにこだわる。伝統芸能や茶道も齧るが、これまたあまりに深いので、いまだ入口あたりをちょろちょろ。昨年、若いころに通いながら、最近ご無沙汰だった料理店の主人が相次いで亡くなったのが後悔してもしきれなかったので、今年は円熟の料理人を訪ね歩き、しっかり頭に刻んでおこうと考えている。

【広川道助の〈食の王道〉】一覧記事はこちら
http://www.premium-j.jp/dousuke-hirokawa/

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