【東京 田町】鼓次郎:グルメキュレーター 広川道助

2017.05.04

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冬ももう終わりだというのに、このところ、話題の鍋の店が二軒も立て続けにオープンしました。

ひとつは四川飯店総料理長の菰田欣也さんが五反田で手がけた中国火鍋「ファイヤーホール陳」、もうひとつは久我山「器楽亭」の浅倉鼓太郎さんが田町に作った水炊き居酒屋「鼓次郎」です。

みんなで鍋を囲むというのは居酒屋の原点だし、最近は季節と関係なく、楽しむグループが多くなっているようです。菰田さんの店も評判がいいようですが、こちらは和食のお店を紹介する連載なので、後者をご紹介することにしましょう。

「器楽亭」をどう表現するかでまず迷いました。久我山駅のすぐ近くで当初はリーズナブルな居酒屋といってよかったものの、研究熱心な店主がいい素材を使い、料理もグレードアップ、いまでは割烹といっても遜色のないような店になっています。

その浅倉鼓太郎さんの二番目の店なので「鼓次郎」という名前なのですが、こちらは居酒屋メニューも豊富、最後に水炊きで〆る店という位置づけです。

場所は田町駅の芝浦口から歩いて5分ほど。夜は人通りのない道を心細げに歩いていくと店が出現します。

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手前にカウンターがあって、奥にテーブル席。居酒屋のつもりで器楽亭クオリティのポテサラやビフカツ、唐揚げ、胡麻カンパチなどをつまむだけでも十分楽しいので、それならふたりでカウンターというのもいいですが、最後に鍋を楽しむなら4人以上でテーブルがベストでしょう。

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サイドメニューが魅力的なのであれこれ酒肴を注文したくなるのはわかりますが、多すぎるとあとに堪えるので要注意。よきところで水炊きにまいりましょう。

セットされた鍋に注がれた黄色いスープにまずびっくり。水炊きはストレートスープ派と濃厚系に分かれますが、こちらは後者のタイプ。見ているそばからすぐにコラーゲンの膜が出来てしまい、女性陣には喜ばれること間違いなしです。

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そこにあらかじめ炊かれた総州古白鶏を入れて温め、まずは塩で食べると、唇がプルプルとなり、スープの美味さと肉の歯ごたえを感じます。

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次に竹筒に入ったつくねを落とし、必ず誰かが持っているであろうiphoneのsiriに「4分経ったら教えて」と話しかけるというのが楽しいアイデア。4分後には、中にちょうど火が入ってふわふわ状態のつくねが味わえるというわけです。

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肉のあとは野菜へ。キャベツ・ネギ・エノキ・マロニーなどがセットになっているので、それを投入し、野菜の旨味をスープに吸わせるのです。

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最後はラーメンか雑炊を。ダブルで頼むグループも多いようですが、明日を考えこの日は雑炊に。米粒の一つ一つに鶏と野菜の出汁がしみこみ、絶品の〆でした。

この日はまだ冬の終わりで、帰りは身体中がぽかぽかとしながら家路に着きましたが、真夏に汗をかきながらフハフハと鍋を楽しむのもよさそうです。

「鼓次郎」
住所/東京都港区芝浦1-14-17 布川ビル
電話/03-6435-4840
営業/17:00〜23:00 日曜休み

 

《プロフィール》

広川道助
学者の家系に育つ。西欧で一時期を過ごし、早い時期から食の世界を志す。20代はフレンチに凝ったが、その後、日本料理の深遠さに目覚め、ここ数年は和食全般を系統だてて食することにこだわる。伝統芸能や茶道も齧るが、これまたあまりに深いので、いまだ入口あたりをちょろちょろ。昨年、若いころに通いながら、最近ご無沙汰だった料理店の主人が相次いで亡くなったのが後悔してもしきれなかったので、今年は円熟の料理人を訪ね歩き、しっかり頭に刻んでおこうと考えている。

【広川道助の〈食の王道〉】一覧記事はこちら
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