SAKAEMASU(榮万寿):「気になる日本酒」 vol.11 あおい有紀

2015.12.18

 

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25年ぶりにSAKAEMASUブランドとして再スタートを切った清水屋酒造

「これは、日本酒ですか?!」ボトルを手にした方は、驚きをもって大抵そのように言われます。ワインボトルでコルク栓、ラベルもスタイリッシュで、白ワインかと見間違えるのも頷けます。

「私自身、若い頃は日本酒に対する良いイメージを持っていませんでした。むしろ悪かったことから、従来の日本酒のイメージを払拭するため、日本酒をスタイリッシュに楽しんで頂きたく、現在のSAKAEMASUスタイルにしました」

そう話すのは、1873年群馬県館林市に創業した清水屋酒造 六代目の渡辺昌宏氏(35歳)。1985年から日本酒の製造を休止していましたが、2010年、渡辺氏が蔵に戻り、25年ぶりに造りを再開しました。

「もともとは蔵に戻るつもりはありませんでした。転機は、小京都と呼ばれる飛騨高山には酒蔵が多く、初めて日本酒を美味しいと思えた経験から、一から構築し自ら醸造したいという想いが強くなりました」と言う渡辺氏は、大学卒業後、酒販会社やシャンパン会社などで営業とロジスティックを学びます。そのときに、従来型の日本酒がお店の雰囲気を重視する一部の飲食店から敬遠されがちなことや、和食の料亭や鮨屋でも、今やワインは定番だと実感。なぜレストランなどで日本酒が出ないのかを身を持って経験します。

洋食のテーブルに日本酒が置かれる光景を想像した時に、まずはスタイリッシュでないと受け入れられない。しかも初心者には手が出しづらく、分かりづらいと感じていた渡辺氏は、新しい販路開拓のため、ターゲットはお酒好きのなかの1割の日本酒党ではなく、9割の非日本酒党に。その人たちのなかで日本酒ファンを増やしながら業界を盛り上げたいと考え、SAKAEMASUブランドを立ち上げました。

「料理は目で食すことと同様に、日本酒もボトルのデザイン、グラスなど外観が変わるだけで味わいや楽しんでいただける幅が広がると考えました。ラベルの6つのドットは、歴代の蔵元と六代当主を表しています。ドットの赤色は“情熱”と漢字“榮”の炎を表し、現在のコーポレートカラーになっており、グラデーションは歴代からの進化の過程、相違を表しています」

渡辺氏が、蔵に戻ることを前提に入社したのがシャンパン会社のヴーヴ・クリコ ジャパン。そこでは主に、グローバルな考え方、品質・デザイン・ブランディング、スケールアップするための海外展開のヴィジョン、スピード感など、多くのことを学んだと言います。

新鮮な目で清酒業界を観るため、蔵に戻るまでは清酒業界に携わらないことを念頭に従事し、2009年の春、29歳の時に蔵に戻り、一からのスタート。右も左も分からず苦労もありましたが、準備期間を経て2010年秋から第一弾の仕込みが始まりました。

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ヴィンテージで繊細ながら円熟した米の旨味を表現

総米600キロの小さいタンクで少量仕込みにすることにより、品質管理や温度管理を徹底。また、通常アルコール発酵の過程である醪(もろみ)日数は20日ほどですが、この榮万寿は、低温で29~34日とゆっくり時間をかけて発酵させることで、洗練された香り、綺麗でなめらかな口当たりと共に、上品で芳醇なお米の味わいが感じられるようになります。

「同じ醸造酒のワインのように、日本酒を楽しんでいただきたく、ヴィンテージ展開しています。また、ボトルエイジを前提とした酒質と、密閉度を高く品質を維持するため、栓には3.5センチ以上の樹脂製のコルクを使用し、5度以下の冷蔵庫で熟成させています」

外観だけではなく、綺麗に熟成させるための細部にこだわる工夫が感じられます。

SAKAEMASU(榮万寿)は、新潟産の酒造好適米、五百万石を使い、無濾過原酒の純米吟醸、純米酒を中心に展開しています。ワイングラスでいただくと、グレープフルーツやりんごのような繊細なフルーティーさが感じられ、温度が上がってくると米の旨味も膨らみ、しっかりボリュームを感じながらもスッと切れていく余韻、思わず杯を重ねてしまう一本です。

 

世界に誇れるJapan Qualityをスタイリッシュに楽しんでもらいたい

渡辺さんの想いが通じ、SAKAEMASU(榮万寿)は現在、イタリアンやフレンチビストロ、バル、ホテルなどで提供されることが多くなりました。さらに今後は、もっと幅広いレストラン業界にオンリストされるように、そして日本酒バーではなく、オーセンティックなバーでスタイリッシュにサービスしてもらえるような酒にしていきたい、と考えています。

昨年からは香港など、海外にも輸出、展開が始まりました。「微力ながら日本酒業界を盛り上げていきたいですし、国内外問わず一人でも多くの方に日本酒の素晴らしさやJapan_Qualityをお伝えしたいですね。特に、日本酒嫌いや初心者の方にこそ、SAKAEMASUを召し上がっていただければ嬉しいです。他の日本酒に手を伸ばしていただくきっかけのお酒になれば」との目標どおり、クリスマスパーティーやホームパーティに持参しても、きっと喜ばれることでしょう。


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SAKAEMASU(榮万寿)のロゴは、榮の文字、升を表す正方形で『SAKAEMASU』を表し、四方の隙間は型にハマらない経営方針を、升の右回転と時が相まって時代に合わせて進化・創造をし続けていくことを表しています。まさにその想いを形にすべく、7名のスタッフとともに、6年目の造りに情熱を燃やす清水屋酒造。これからの進化が楽しみでなりません。

 

取材・文/あおい有紀

【あおい有紀の〈気になる日本酒〉】一覧記事はこちら
http://www.premium-j.jp/yuki-aoi/

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 あおい有紀

フリーアナウンサー・和酒コーディネーター

テレビ、ラジオなど各媒体で活躍する一方、日本の食や和酒の魅力発信を積極的に行い、大切さ、楽しみ方を伝えている。フィールドワークを信条とし、全国の酒蔵に200回以上足を運ぶ。酒蔵ツアーや日本文化×日本酒のコラボイベント、様々な国籍の料理×日本酒のマリアージュイベントなどの企画・主催をはじめ、各地での講演、セミナー講師多数。ル・コルドン・ブルー日本酒講師。観光庁「平成25年度 官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」にて、目利き役。女性向け日本酒本「日本酒日和」(舵社)監修。日本酒造青年協議会「酒サムライ」叙任。 

【資格】きき酒師、焼酎きき酒師、WSET(International Higher Certificate in Wines and Spirits)、一級フードアナリスト、日本箸教育講師など

 

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