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姫路城の漆喰:「美しき城」vol.1 萩原さちこ

2016.02.01

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世界遺産・姫路城、純白の美の秘密

パールのような光沢でもなく、ニスのような艶でもなく。その輝きは、白無垢をまとった花嫁のよう。2015年3月にリニューアルした姫路城大天守の白壁は、とにかくキラキラとまばゆさを放っています。

輝きの秘密は、壁と屋根に塗られた白漆喰にあります。紐解けば、漆喰はバベルの塔に関する記述にも名が出るほど歴史あるもの。しかし姫路城の漆喰には、単なる接着剤や塗装剤としてではなく、強度と美を格段に上げるためのこだわりと職人技が惜しみなく投じられているのです。

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仕上がりを左右する素材へのこだわり

消石灰、貝灰、スサ、海藻糊——。姫路城の漆喰は素材選びに抜かりがありません。材料のなかには現代では使用の機会が減っているものも多く、選定と確保だけでなんと半年間を要したといいます。

石灰より穏やかに仕上がる、日本古来の貝灰漆喰であるのもポイントです。太陽の光を受けたときに生命を宿したように輝くのは、自然が生み出す色だからかもしれません。

素材の配合試験にもかなりの時間を要し、なんと場所によって配合の違う6種類の漆喰が塗り分けられているというのですから驚きです。ただ白さの明度が高いのではない姫路城の漆喰は、紛れもなくメイド・イン・ジャパンなのです。

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100種類の鏝(こて)が使い分けられた、繊細な美

漆喰塗りには場所に応じて大小・形さまざまな鏝(こて)が使われ、その数は100種類以上に及ぶそうです。とくに壁面の細かな彫刻や懸魚(げぎょ)という妻飾(つまかざり)、蟇股(かえるまた)などの塗り直しは職人技の極み。木彫りの下地を傷つけないように古い漆喰を丁寧にはがした上で、漆喰を均一に塗り直すという緻密な作業により完成しています。

瓦と瓦の隙間に漆喰を塗る「屋根目地漆喰」も、巧の技が生み出す独自の美です。かまぼこのように盛り上げて漆喰を塗るこの凝った仕上げが、遠くから見たときに角度によって屋根まで白く見える秘密です。美しいだけでなく、強度を高める効果もあります。

「白くしすぎたのでは?」とも感じますが、漆喰の厚みが違うところはあるものの、白さの彩度は限りなく築城時に忠実です。築城当時の天守とは、強く美しくあるべきもの。思わず立ち止まってしてしまうほどの美しさをもって、威厳と風格を表現したのかもしれません。

性質上、数年後には白さが落ち着いてきます。それもまた趣きがありますが、せっかくならば実際に前に立ち、純白のまばゆさに目を細めてみたいもの。白く輝く姫路城に出会いたい方は、今のうちにどうぞ。

 

■お問合せ
姫路城公式ホームページ(姫路城大図鑑)
http://www.city.himeji.lg.jp/guide/castle/

 

取材・文・写真/萩原さちこ

 

【萩原さちこの〈美しき城〉】一覧記事はこちら
http://www.premium-j.jp/sachiko-hagiwara/

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《プロフィール》

萩原さちこ

城郭ライター、編集者

小学2年生のとき城に魅了される。日本人の知恵、文化、伝統、美意識、歴史のすべてが詰まった日本の宝に虜になり、城めぐりがライフワークに。執筆業を中心に、テレビやラジオなどのメディア出演、イベント出演、講演、講座のほか「城フェス」実行委員長もこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研パブリッシング)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。2016年9月9日に新刊『旅好き女子の城萌えバイブル』(主婦の友社)、10月8日に『城めぐり手帖「現存天守編」〜自分だけのトラベルノート』(技術評論社)発売。共著、連載多数。公益財団法人日本城郭協会学術委員会学術委員。公式サイトhttp://46meg.com/

 

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