旅行

掛川城の葛布:「美しき城」vol.3 萩原さちこ

2016.02.15

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掛川城下の精神を受け継ぐ、近代和風建築

掛川城の天守が建つ本丸背後に、竹の丸という区画があります。掛川城の出入口を臨む重要なエリアで、かつては家老や重臣の屋敷が置かれました。城として機能していた頃の建造物は残りませんが、江戸時代から葛布問屋・松屋を営んでいた松本家が1903年(明治36年)に建て、後に増築された本宅が残っています。

この建造物が、すばらしい。藩政時代の格式や重厚感はそのままに、近代建築のエッセンスが絶妙に融合されています。

たとえば、玄関にある式台もそのひとつです。式台とは、来客者が地面に降りずに籠に乗れるよう、玄関の土間と床の段差に設けられた板のこと。本来であれば城の御殿や武家屋敷にあるものですから、商人の屋敷に取り入れられているのは異例です。武家の出身だった当時の松本家当主は建築にも明るく、武家屋敷の様式と融合した見事な邸宅をつくり上げたのです。随所に、武家の精神を感じます。

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