旅行

【静岡県 伊豆】湯ヶ島温泉 アルカナイズ:「プレミアム温泉」vol.42 石井宏子

2016.07.09

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生きている伊豆の大地とミネラル豊かな深海の恵み

伊豆半島は日本列島の中では特殊な地形です。かつては南洋にあった火山島や海底火山が活動をしながらフィリピンプレートに乗って本州に衝突して半島になりました。日本一深い駿河湾は2,500m、相模湾も1,000m以上の水深を持ち、海底火山の活動でミネラルも豊富、海の中の深い谷に住む多彩な海の幸が獲れるのです。半島には1,000mを超える山が連なり、野生動物が生息する森や自然の川も残っています。この宿がある湯ヶ島温泉はそんな伊豆半島の真ん中、つまり、全方向から伊豆地産の美味しいもの、特別なものが集まってくる場所にあるのです。

開業当初より美食の宿と評判の高いオーベルジュですが、特にわたしが感激したのは生産者たちとのつながりの深さ。近年は「食材物語」という生産者イベントも行われていて、少量多品種のワクワクする野菜をオーガニックで育てる農家や、伊豆わさび、天城のイノシシ、特別な品種である桃苺の作り手や国産チョウザメを育てる生産者などが、ひとりひとりのお客様のテーブルをまわって熱く語ってくれます。料理人たちの作る美食のルーツがどこにあるのか、作り手の思いを感じながら味わえる感動の晩餐でした。

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ミネラルという名の一皿

春を感じる前菜は、金目鯛に芽吹いたばかりの若菜をのせていただく一皿。宝石のように美しい透明なジュレは“海水”。「海のミネラルを一緒に味わっていただきたくて」と、山本シェフ。「あ……」思い出しました。シェフと前回おしゃべりした時に「海水には100種類以上もミネラルが含まれているんですって」といったわたしの話をちゃんと覚えていてくれたのです。こうしてシェフや料理人、バトラーやソムリエと語りながらゆっくり食事をいただけるアルカナの晩餐は“心の栄養”でもあります。

口へ運ぶ直前にスポイトから落とす一滴は「柑橘とオリーブのしずく」。海水の塩加減と金目鯛の旨み、若菜のほろ苦さを柑橘がつないで、わたしの忘れられない一皿です。添えられたキャビアは、なんとシェフの自家製。塩を抑えた出来立てのキャビアは超濃厚な卵の黄身のようなコクとプチプチはじける食感に驚きます。

60種類もの野菜が盛られた「大自然・伊豆の輝き」は何度でもいただきたくなる定番の名物料理。ピュレ、マリネ、ボイル、フリット、ドライ、パウダーなどなど、生の野菜だけでなく、果てしない仕事を経た野菜たち。「うわー、すっごく人参」とか「この泡はカリフラワーだ」とか「ほうれん草の甘味が広がる」とか、一口一口に個性があってウキウキの連続です。

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