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第6回:日本の美とは? Vol. 2 「漆」~森の宝石「漆」の魅力は、縄文時代から続く奥深い輝きと神秘的な艶にあり

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 2010年に、金沢で伝統工芸に出会って以来、ファッションの人生から、ファッション×伝統工芸の人生にすっかりシフトしてしまった私ですが、その私に、漆の魅力を教えてくださっているのが、会津塗りの漆ブランド「坂本乙造商店」「坂本これくしょん」を運営されている坂本朝夫さん・理恵さんご夫妻です。

 2011年の秋、イタリアのブランド「FENDI」から、伝統工芸とのコラボレーションを通して東北支援をしたいという依頼が舞い込んできた時に、坂本さんご夫婦に出会いました。バックルに漆を施すというプロジェクトをこなせるのは、坂本さんご夫婦しかいない、という強い推薦があり、会津若松のショップと工房を訪ねてみると、アクセサリーを始め、家電製品や家具など、美しい漆の輝きを宿したモダンなアイテムがずらりと並び、圧倒されたことを忘れません。「漆って、こんなに素敵に、私たちの生活を彩ってくれるんだ」という発見の喜びと同時に、漆を様々なものに応用する特別な技術と工夫とを感じました。こんな技術をお持ちなら、きっとお引き受けいただけるだろうと、依頼すると、「やってみましょう」という嬉しい一言をいただき、プロジェクトが始まりました。このような経緯でFENDIの伝説的なバッグ“バゲット”のバックルに、漆や蒔絵を施すというプロジェクトを坂本さんに依頼したのですが、結果として、素晴らしい出来の漆・蒔絵のバックルが誕生。FENDI本国のデザインチームも満足し、素敵なコラボレーションのバッグは完売いたしました。

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 もそも漆といえば、歴史は古く、約5500年前の縄文時代の遺跡から発掘された漆の破片があるほど。すなわち5000年以上にもわたって日本人に愛され続けてきている素材ですが、私たちにとって漆といえば、今までは概ね、お椀が思い浮かびます。

その漆という素材を使って、アクセサリーを開発することに挑んだのが、坂本理恵さんです。今でこそ「漆を纏う」という発想は、少しづつあちらこちらで見られるようになりましたが、1980年代、本格的なブランディングにいち早く挑んだのは、坂本理恵さんだったのです。創業1900年の漆屋に生まれた理恵さんにとっては、「生まれたときから当たり前の日常の中に漆があった」のであり、アクセサリーを作ろうと考えたときには自然と「木と漆を使えば作れるはず」と発想したそうです。一方、夫の朝夫さんは、カメラからお厨子まで、木や金属など、様々な素材に漆を施す技術開発では第一人者であり、お二人の知恵と工夫から、漆のアクセサリーは進化していったそうです。

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坂本これくしょん バングル「サムライブレス」 ¥32,400(税込)http://www.eyes-japan.co.jp/s-collection/new/2011/05/post.html

 には「かぶれる」「赤と黒以外の色展開は難しい?」と言った問題があるのですが、それらの課題を一つ一つきちんと乗り越え、いまでは、カラフルな漆、蒔絵のアクセサリーが、多くのファンの心を掴んでいます。実際「坂本これくしょん」には、カラフルな漆・蒔絵の輝きを宿したネックレス、指輪、バングルがあります。初めてみた見たとき、とりわけ、印象的だったのは、真っ赤な漆玉のネックレスと、真っ赤な「サムライ」バングル。赤という色を超えて、別次元へと意識を誘う圧倒的な深みのある光沢感。その昔、特別な輝きで欧米の人々を感動させた漆は、「ジャパン」と呼ばれ、日本を象徴する存在となっていましたが、その輝きは、ダイヤモンドやゴールドなど主張する「足し算」の強い輝きではなく、奥深く内側から滲み出るような「引き算」の輝き。太陽というよりは、月のような輝き、と言えばいいでしょうか。欧米で漆が「JAPAN」と呼ばれるように、漆の光沢感は、まさに日本の美意識を象徴しているのです。この漆の輝きに影響を受けて生まれたのが、ピアノの「ジャパニング」という塗装です。漆の輝きが、西洋の人々を魅了し、それまで木目調だったピアノを、漆黒の光沢感ある塗装へとシフトさせてしまったのですから、漆の影響力の大きさは計り知れません。

 耐久性が強く、耐火性もあり、抗菌性、 UVカット効果もある。漆の木の樹液である漆には、美しさだけでなく自然が生み出す機能的なパワーも宿っていることが昨今は明らかにされています。海が育む宝石である真珠に対して、漆は、森が育むパワフルな宝石と言えるのではないでしょうか?身にまとうと、神秘的な漆の輝きのパワーを得られ、おしゃれに豊かなオーラをもたらしてくれるのです。

 

坂本これくしょん
http://www.eyes-japan.co.jp/s-collection/

WAO/三越伊勢丹オンライン
http://isetan.mistore.jp/onlinestore/women/wao/index.html

 

<プロフィール>

生駒芳子(いこま よしこ) 

VOGUE、ELLEを経て、マリ・クレール日本版の編集長を務める。2008年に独立し、ファッションからアート、デザイン、伝統工芸、エシカル、クール・ジャパン、社会貢献、女性のエンパワメントまで、幅広く執筆・編集・企画・プロデュースを手がける。2010年より、日本の伝統工芸を世界発進するプロジェクト「工芸ルネッサンスWAO」の総合プロデューサーを務め、パリ、ニューヨーク、東京で、ファッションやデザイン、アートを切り口としたキュレーションで伝統工芸世界を紹介。2017年、伝統工芸をベースに置いたラグジュアリーでクリエイティブなオリジナルブランド「HIRUME」を立ち上げ、2018年より本格発信をスタート。

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