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ウミヘビってどんな味? 琉球料理の最高峰「イラブー料理」を食す

2016.12.24

ギリギリまでうま味を出し尽くすのが「カナ」流

(3)rd1700_MIM_0041写真(上)/ 沖縄・北中城「イラブー料理 カナ」の我謝藤子さん。藤子さんが手に持っているのものが、お店で使っている石垣島産のイラブー。

「イラブー料理 カナ」は、35年前に那覇市久米で我謝孟諄(がしゃ・もうじゅん)さん、藤子さん夫妻が創業。大変な人気店でしたが、体調のことなどあり、10数年前、規模縮小のため北中城へ移転。その後一時期の中断を経て、今は藤子さんと娘さんである泉さん・アレックスさん夫妻とが、週に数日だけ店を開けています。

藤子さんが手にしているのが、料理前のイラブー。約1メートルほどの石垣島産です。「90代のおじいが作るこの乾イラブーじゃなければ、ウチの味は出せない」と藤子さんと泉さんはおっしゃいますが、実は何とそのおじいが高齢のため引退。今は在庫をやりくりしつつ、他エリアのイラブーで試作を繰り返しているけれど、なかなかコレというものにまだ出合えていないそうです。

「カナ」では圧力鍋を使って効率化を図る一方、食べやすくするために骨を取る手間は省きません。取りだした骨や卵も煎じ汁に加えて、ギリギリまでうま味を出し切ります。できあがりに数日を要するため、数日前からの予約は必須です。

また豚足も脂をしっかり抜いてから、だしで長時間煮込むそう。真っ白なのに煮崩れもせず、なのにまさにぷるぷると溶け出すギリギリのコラーゲンの塊となったこの店の豚足ほど、美しい味を食べたことがありません。多少の時間を短縮したように見えて、結局は大変な作業を日々繰り返しているのです。

「レシピを映像で残すために店に撮影が入ったことがあるのですが、その時、『私が店を継がなかったら、もう母のこの味はなくなってしまうんだ』と思って、ぽろぽろと涙が止まらなくなってしまったんです」。
泉さんは、そう言います。
大変な仕事だと知っていたから家業を継ぎたくなかった。でもだからこそ、決断した。当時はアメリカに暮らしていらしたそうですが、ご夫婦で沖縄に戻られ、今に至るのだそうです。

イラブー汁を含めた琉球料理の定番が一度にいただける

(5)rd1700_MIM_0001写真(上)/ 「イラブー汁付き定食」で最初に供されるお膳。左下から時計回りにイラブーシンジ、ウカライリチー、もずく、ジーマミー豆腐、豆腐よう。イラブーシンジはいわば一番出汁で、最もうま味と栄養が凝縮されたもの。

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写真(上)/ よく知られたラフテーも、「イラブー汁付き定食」に登場。この他、ドゥル天やクーブイリチーなども付き、かなりのボリューム!(日により、料理内容は変更の場合あり)。

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写真(上)/ 「イラブー汁付き定食」の〆は、お米がつやつや光ったフーチバージューシーと甘い白味噌仕立てのイナムルチ(沖縄流豚汁)。フーチバーとは、沖縄のヨモギのこと。

「カナ」のメニューは定食が三種類。3,500円からありますが、一番のおすすめは「イラブー汁付きカナ定食」(6,000円)。イラブーシンジ(イラブーの煎じ汁)やイラブー汁はもちろん、ウカライリチー(沖縄流卯の花)やクーブイリチー(昆布の炒め煮)、ラフテー(沖縄流豚の角煮)など、琉球料理の定番が一度にいただけるコースです。どの料理も非常に丁寧に作られ、味に透明感を感じます。

コースに含まれるフーチバージューシー(沖縄流炊き込みごはん)とジーマミー豆腐(落花生豆腐)は、現在、藤子さんの娘婿であるアレックスさんが担当。一家で「カナ」の味を守り育てていこうとする姿勢が、本当によく伝わってきます

「琉球料理に興味を持ってくれるのは他県の方が多くて、沖縄には今、琉球料理の味を継ごうという若手が少ない」と前述の松本嘉代子先生は嘆きます。でもこの店に娘さん夫婦が戻ったことは、小さくとも確かに点った灯りなのではないでしょうか。

ちらりとお店で耳にしたイラブーの原価から考えると、こちらの料理の値段は破格の安さ。おいしくて、さらに身体にもいい。こんなお店がもしなくなってしまったら、困ります。ぜひご一緒に、「食べ支えて」いただきたいお店のひとつです。

(6)rd1700_MIM_9996■お問い合わせ
イラブー料理 カナ
住所:沖縄県中頭郡北中城村屋宜原515-5
電話:098-930-3792
営業時間:18:00〜22:00
営業日:金曜、土曜(5名以上の予約に限り、火曜・水曜の営業も応相談)
備考:要予約。クレジットカード不可。

 

取材・文・写真/木原美芽

《プロフィール》
雑誌『LEON』『料理王国』『WINE-WHAT!?』副編集長などを経て、飲食専業のライター・編集者。ライフスタイル誌での取材執筆やワインプロモーションなどに携わる。家族の介護経験から薬食同源の重要性を痛感し国際中医薬膳師資格を取得。またライフワークのひとつとして琉球料理を学ぶため、毎月沖縄へ通う。