日本語 | English | 简体中文 | 繁體中文

~日本の香りを味わう~

《第5回》茶の愉しみ HIGASHIYA GINZA

2018.05.24

5種類のひと口果子にそれぞれオリジナルのブレンド茶や煎茶を合わせ、コース仕立てにした茶果〈小満〉

 

外に暮らす友人の誘いで、東京・目黒にある一軒家で紹介制の和食料理店「八雲茶寮」に食事に行った時のこと。コースの料理ごとに飲み物も合わせてくれるというので、友人はお酒、私はお茶のコースをそれぞれ頼んだ。

豊富な品数が登場する会席スタイルに合わせてくれるのは、いったいどんな飲み物なのかと興味津々で、うきうきとした気分で食事を始めた。どのマッチングもグラスや器も趣向を凝らしたもので、期待以上の楽しさだった。友人が頼んだお酒のコースも途中で味見をしたいとお店の方にお願いしたほど魅力的だったが、お茶のコースは、さらに途中で果汁を加えることで、煎茶の鮮やかなグリーンがピンクに変化するなど、見た目の華やかさも加わって、日本茶でこれほど幅広くかつ深く表現できることに驚きの連続だった。最後は茶室に移り、季節のお菓子を抹茶と共にいただきながら、都内とは思えないほどゆったりとしたひと時を過ごした。

の店は「現代における日本文化の創造」をコンセプトにデザイナーの緒方慎一郎さんが始めたものだ。1年半ほど前に一般社団法人「茶方會」を立ち上げたことで、日本茶文化を世界に広めるための普及や教育や生産者への貢献などの活動も加わった。「茶方會(さぼえ)」の原点は2003年に中目黒に開店した和菓子店「HIGASHIYA」にあるという。それが「八雲茶寮」や「HIGASHIYA GINZA」などに受け継がれ日々進化の道を歩んでいる。「八雲茶寮」での驚きの演出も、こうした流れを踏まえてのことだった。

 

茶房中央に設えたティーテーブルでは、日本全国の茶葉をはじめ、季節のハーブやフルーツなどを揃え、
道具立てから、淹れ方、ふるまいに至るまで、新しい日本茶の在り方を提案している

 

現代における“日本のティーサロン”をコンセプトに展開する「HIGASHIYA GINZA」には、ひと口果子と飲み物のマッチングを楽しめる茶果(さか)や酒果(しゅか)というメニューがある。和の伝統色の名前がついたひと口果子は、古代の菓子は干した果実や木の実だったと考えられていることから想いを馳せつくられたという。茶果は5種類のひと口果子にそれぞれオリジナルのブレンド茶や煎茶を合わせたコース仕立てになっており、二十四節気(各節気ごとの期間は約15日)ごとに内容が変わる。一方、酒果は5種類のひと口菓子にそれぞれ日本酒やオリジナルカクテルを合わせてくれる。

5月の節気は4週目から小満(しょうまん)に変わる。小満の茶果には、新茶を使ったものが登場するというので味わってみた。始まりは、生姜と蜂蜜のひと口果子「鳥の子」と新茶を合わせたものだった。鳥の子色とは、鶏の卵の殻のような色のことをいう。新茶特有の青々しい香りを活かした火入れ製法“生仕上げ”でつくられた「ゆたかみどり」と「鳥の子」が爽やかな香りと共に優しい味わいを醸し出す。

2つ目の季節のハーブブレンド「実山椒」と合わせるのは、ひと口果子「濃紫」。紫芋餡でカシューナッツを包んだもので、その名の通り濃紫色をしている。玉露の旨味と茎茶のすっきりした味わいをあわせもった「玉露雁ヶ音」をベースに、木の芽と山椒の香りをプラスした「実山椒」からは新緑のイメージが浮かぶ。紫芋餡とカシューナッツの風味と共に口に広がり、とても心地良い後味である。

人気の一口果子「棗バター」

3つ目のひと口果子「不言(いわぬ)」は新じゃがいも餡と岩塩バターでつくったもので、しっとりしている。不言色とは、くちなし色(やや赤みがかった黄色)のことで、“口無し”だから“言わぬ”になったという説がある。合わせたヒガシヤブレンド「No.4」は、香ばしくすっきりした釜炒り茶をベースに、鹿児島県産の紅茶の奥深い香りと深蒸煎茶の味わいをプラスした、発酵茶と不発酵茶のブレンドティー。洋の香りが印象に残る。

4つ目のひと口果子「萌葱(もえぎ)」は抹茶餡とレーズンでつくられている。合わせるのは深蒸煎茶で希少品種「茂2号」。萌葱とはやや黄色みがかった緑色のことをいう。黒糖焼酎につけたレーズンはラムレーズンのような香りを放ち、濃厚な抹茶餡と煎茶が、和洋折衷の味わいを生み出す。

5つ目は棗色。つまり赤茶色のマッチングが小満のフィナーレを飾る。棗椰子と発酵バターと胡桃ローストでつくった「棗バター」は人気の定番ひと口果子だそうだ。かなりコクのある濃厚なひと口果子で、煎りたての甘みのある香ばしい自家製焙じ茶と合わせることで、さっぱりとした後味だ。

日本茶の初心者でも5種類の味わいの違いを鮮明に感じることができ愉しめるので、是非お勧めしたい。

 

季節によっては日本茶にふきのとうなどの山菜を合わせたお茶も登場する。これが飲みたくて何度か通ってしまった

 

果を通じて、ひと口果子と茶を楽しみながら、鳥の子、不言、萌葱……など、千以上あるとされる和の伝統色にも少しだけ触れることができた。気がついてみれば「茶方會」流の茶の愉しみを通して日本文化についても学んでいる。

こうした「茶方會」の流儀は国内だけにとどまることなく、海外においても多くの人たちを魅了し続けることだろう。

 

text © Mika Ogura 2018

 

【プロフィール】
小椋三嘉(おぐら・みか)エッセイスト、食文化研究家

十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。

 

【商品情報】

 

茶果(さか)

茶果 〈小満〉(左から右へ)
1 鳥の子(生姜入り白餡+蜂蜜) × 生仕上げ新茶(ゆたかみどり)
2 濃紫(紫芋餡+カシューナッツ) × 季節のハーブブレンド 実山椒
3 不言(新じゃがいも餡+岩塩バター) × ヒガシヤブレンド No.4
4 萌葱(もえぎ)(抹茶餡+レーズン) × 深蒸し煎茶(茂2号)
5 棗(なつめ)バター(棗椰子+発酵バター+胡桃ロースト) × 自家製焙じ茶

提供期間
5月21日(月) ~ 6月5日(火) 午後2時より6時ラストオーダー
価格 4,000円(税込)

※「茶果」、「酒果」共に約2週間ごとに内容が変わります。詳細については店舗にお問合せください。

 

【店舗情報】

HIGASHIYA GINZA
東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル2F
TEL 03-3538-3240
http://www.higashiya.com
http://www.saboe.jp