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~日本の香りを味わう~

《第6回》和を活かす《後編》 パティスリー・サダハル・アオキ・パリ

2018.06.14

 


新作「パート ド フリュイ ユズ」

 

子の香りとともに果実のみずみずしさが口に広がった。パティスリー・サダハル・アオキ・パリの青木定治さんの新作「パート ド フリュイ ユズ」を味わったときのことだった。フランス語で「フルーツをすりつぶして練ったもの」という意味が示す通り、「パート・ド・フリュイ」は果汁を砂糖と煮詰めて固めたもの。グラニュー糖に包まれていることもあり、キラキラしていて透明感のある涼しげなお菓子である。

私たちはパリ郊外にあるパティスリー・サダハル・アオキ・パリのアトリエ内にある日本庭園をイメージしたテラスにいた。このテラスは青木さんの広々としたオフィスから続いている。週末を過ごすための別荘のような雰囲気があって居心地が良い。

ここでランチと抹茶を使ったパティスリーをいただいた後(このパティスリーについては《前編》参照)で、青木さんが「食べてみて」と言いながら持ってきてくれたのが、前出の「パート ド フリュイ ユズ」だった。 新鮮な柚子を味わっているような風味と果汁があふれるような食感があり、私は舌の上で消えゆく余韻をしばし楽しんだ。

パリ郊外にあるパティスリー・サダハル・アオキ・パリのアトリエにて

トリエではチョコレートやマカロンやパティスリーを作っているところだった。 抹茶を使った人気のチョコレートや「タルト キャラメル サレ マッチャ」の作業も見せてもらった。パティスリー・サダハル・アオキ・パリのカラフルで細長いアイコニックなチョコレートたちがコフレに入って、大きく長い作業台の上に一堂に並ぶ光景は圧巻だ。

「実は…...僕はアズキが大好きなんですよ」と、青木さんは意外なお菓子を差し出してくれた。羊羹である。目の前に置かれた白い皿には、スライスした羊羹が並べられていて、まわりに抹茶がうっすらと散らしてあった。青木さんと行動を共にすることが多いディレクターや奥さまでさえ、この羊羹が出てきたことに驚いた様子だ。青木さんがアトリエ内のどこかに隠し持っていたものらしい。

羹は東京・小石川の和菓子屋一幸庵の「大納言」だった。青木さんは一幸庵の餡に惚れ込んで店主である水上力さんの元で修業をしたのだそうだ。店主のことを「おやじさん」と愛情を込めて呼ぶ。それだけに一幸庵の餡にはとりわけ思い入れが強い。

スライスした「大納言」の断面はフォルムを保った大粒の小豆がひしめき合っていてすこぶる美しい。食感も凛々しく素材の旨味が凝縮されていた。パリで賞味することになった「大納言」は、青木さんの熱い思いも重なり一層味わい深いものだった。

抹茶を使ったパティスリー。「バンブー(左)」「フォレ ヴェルト キョウト(右)」

を手作りしていることを知り、抹茶と餡を使った「マッチャ アズキ」を味わいたくなって、パティスリー・サダハル・アオキ・パリのセギュール店に出かけた。近くにはユネスコやミシュランの本部やパストゥール研究所もある。パリで暮らし始めた頃に近くに住んでいたことがあり、私にとっては懐かしさを感じるエリアだった。

セギュール店はサロン・ドゥ・テを併設していて、オリジナルブレンドティーや日本茶をはじめとするドリンクと共にパティスリーが味わえる。清楚でエレガントなフラワーアレンジメントが目を引く店内は、落ち着いた明るい空間でゆったりとした気分でパティスリーが楽しめる。何組かの地元のマダムたちがおしゃべりに興じていた。

「マッチャ アズキ」。パティスリー・サダハル・アオキ・パリ セギュール店にて

 

「マッチャ アズキ」は、パティスリーなのに味わってもみると、かなり“和”を感じさせる仕上がりとなっている。餡の層も薄く控え目な印象なのだが、口の中では存在感を増して抹茶と重なり合う。和菓子のような風味が楽しめるパティスリーなのである。

「パート ド フリュイ ユズ」にも通じることだが、フランス人にとって青木さんのパティスリーは馴染みのある形をした “和” の味わいであり、“和”素材に対する青木さんの愛を感じるのだろう。 こうしてパリで改めて味わってみて、パティスリー・サダハル・アオキ・パリがここで愛されている理由がわかったような気がした。青木さんはこれからもパティスリーに“和”素材への自身の愛と魅力を込めて、フランスのみならず世界中に伝えていってくれることだろう。

青木定治さん。パティスリー・サダハル・アオキ・パリのアトリエのテラスにて

 

前編》に続き、オススメしたいパリの定番商品である。ただし新作は青木さんが自ら手がけていることもあって売り切れてしまうこともあるという。「パート ド フリュイ ユズ」が早く日本のお店にも出てくることを心待ちにしたい。

 

text © Mika Ogura 2018

 

【プロフィール】
小椋三嘉(おぐら・みか)エッセイスト、食文化研究家

十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。

 

【商品情報】

  • Pâtes de fruit yuzu  「パート ド フリュイ ユズ」

150g  15.00€(税込)

 

  • Mâcha azuki  「マッチャ アズキ」

5.80€(税込)

 

【店舗情報】

パティスリー・サダハル・アオキ・パリ
http://www.sadaharuaoki.com/boutique/paris-fr.html
http://www.sadaharuaoki.jp/boutique/

※商品の販売期間等の詳細については、各店舗にお問合せください。

パティスリー・サダハル・アオキ・パリ セギュール店