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~日本の香りを味わう~

《第9回》進化するかき氷② 船橋屋のくず餅乳酸菌®入りかき氷

2018.07.26

くず餅乳酸菌®入りかき氷。夏みかん、宇治金時、青梅(左から右へ)。船橋屋亀戸天神前本店の中庭にて

 

1805年(江戸時代)創業の船橋屋亀戸天神前本店で、くず餅とくず餅乳酸菌®入りかき氷を味わった。元祖くず餅で知られる船橋屋は、多くの文豪たちにも愛されてきた和菓子屋である。

          僕等は、「天神様」の外へ出た後、「船橋屋」の葛餅を食う相談をした…。
                         
芥川龍之介著『本所両国』より。『大川の水・追憶・本所両国』(講談社文芸文庫)

 

前ご紹介した桜餅と同じように、くず餅にも関西風と関東風があり原料から大きく違う。くず餅というと関西風を思い浮かべる人が少なからずいると思うが、関西風の葛餅はマメ科つる性の植物“葛”が原料。芥川龍之介のエッセイ『本所両国』にも葛餅と綴られてはいるが、船橋屋のくず餅は関東風なので小麦粉でんぷんを発酵させて作る。


くず餅

 

木樽で小麦粉でんぷんを450日間乳酸発酵させ、さらに水洗いして酸味などを取り除いてからくず餅に仕上げられる。賞味期限は2日間だけ。モチっとした食感がありクセがなく食べやすい。きな粉と黒蜜の味わいも加わるためか発酵の酸味もあまり感じないが、発酵食品ならではの驚くべき力を秘めている。

 

橋屋の8代目当主の渡辺雅司さんは、くず餅の品質が天気や天候などに左右されることに常々疑問を抱いていて8年前から本格的に研究を始めた。その結果、船橋屋のくず餅には乳酸菌13種類、酢酸菌7種類がひしめき合っていた状態だったことを知る。2年前にはくず餅の菌の中でも免疫力を上げるとされる乳酸菌のラクトバチルス属パラカゼイ種(Lactobacillus Paracasei)だけを培養することに成功。乳酸菌本体だけでなく、近年の研究で本体より有益なものとされる乳酸菌の生成物も丸ごと詰め込んだものを、ラクトバチルス パラカゼイFくず餅株と名づけ、くず餅乳酸菌®として商標登録をしたのだそうだ。

船橋屋8代目当主、船橋屋代表取締役社長 渡辺雅司さん。54歳には見えない若々しさの秘密は、くず餅乳酸菌®を含む内面からの努力とのこと

 

ず餅乳酸菌®の何が凄いかというと、213年という長い年月のあいだ脈々と受け継がれてきた日本古来の長寿乳酸菌だということです。もちろん乳酸菌といっても植物性なので乳アレルギーの方にも問題ありません」と、渡辺さんの言葉に熱が入る。成果のほどを訊いてみると、粉をカプセルにしたものを8人に3ヶ月飲んでもらい、飲む前と飲んだ後の腸内フローラを調べたところ全員の悪玉菌が消えたという。効果を実証できたことで、“発酵”をキーワードにした商品の可能性はさらに広がり、美肌とストレスに効くジェルタイプのドリンクや基礎化粧品の開発研究への取り組みも始めたそうだ。

こうなると和菓子屋という範疇を超えている気もするが、すべては船橋屋8代目としての責務なのだと渡辺さんは言う。

「祖父の時代は戦争ですべてが焼けてしまい、そこからの立ち上げでした。父は高度成長期で百貨店展開による事業拡大を図った。私の時代は革新だと思っています。乳酸菌事業は今までの延長線上にはないものですが、くず餅が優れた食品であることを知っていただくための手段のひとつ。それは一貫して変わらないポリシーです。2020年にはくず餅乳酸菌®を使った和菓子の旗艦店を表参道にオープンする予定です」。

辺さん自身もくず餅乳酸菌®はもちろんのこと、有機アーモンドミルクと有機甘酒をベースにして約10種類ほどのものを加えたスペシャルドリンクを毎朝欠かさずに飲んでいるそうだ。さらに今年2月には瞑想修行のためにインド・チェンライへ一週間、先日はそのブラッシュアップのためにハワイへという生活。日常から健康でいることに強い興味があり、それがくず餅乳酸菌®の発見にも繋がったのだろうと自身で分析をする。

くず餅乳酸菌®入りかき氷「青梅」

 

くず餅やくず餅乳酸菌®入りかき氷を食べることで、味覚だけでなく身体も嬉しくなるとしたらかなり魅力的だ。

くず餅乳酸菌®入りかき氷は、個人的な好みで言えば「青梅」のかき氷がとりわけ印象的だった。「青梅」のかき氷は、店の裏手にある亀戸天神が江戸時代から梅の名所として知られることに因んだもので、船橋屋亀戸天神前本店の限定品とのこと。それを訊いて『本所両国』に亀戸の梅について回想している場面があったことを想い出した。刻んだ青梅の甘露煮の食感と共に青梅の甘酸っぱさがスッキリとした気分にしてくれる。爽やかさが食後も続くので、いまの季節にはありがたい。

化した江戸の味わい。一度体感してみてはいかがだろうか。

 

進化するかき氷《前編》はコチラから

 

text © Mika Ogura 2018

 

【プロフィール】
小椋三嘉(おぐら・みか)エッセイスト、食文化研究家

十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。

 

【商品情報】

 

 

  • 青梅(本店限定)

¥900 (税込)

 

 

  • 夏みかん

¥880(税込)

 

 

  • 宇治金時

¥950(税込)

 

 

  • くず餅

¥630(税込)

 

 

【店舗情報】

船橋屋亀戸天神前本店
東京都江東区亀戸3-2-14
TEL  03-3681-2784

http://www.funabashiya.co.jp/sph/accessmap/index.html

※商品の販売期間等の詳細については店舗にお問合せください