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~日本の香りを味わう~

《第12回》パレドオール

2018.09.13

新作「秋のなごみ」

 

レドオールから和素材を使った秋の新作を考えているとの知らせをもらった。和栗と日本茶をテーマにペアリングをしたもので、驚いたことに自家製のホワイトチョコレートを使っているという。完成するのを心待ちにしながら真夏の日々を過ごしていた。

「これまでホワイトチョコレートだけは買うしかないと思っていたのですが、ビーントゥバーをここまでやってきたのだから自分で作ってしまおうと。それでカカオバターを絞る機械を買って、いろいろ試行錯誤しながら、ようやくホワイトチョコレートが作れる量まで溜まってきたので作れるようになったのです。こんなバカなことやっている人いないですよ」と、パレドオールのオーナーショコラティエの三枝俊介さんは楽しそうに笑う。

そして「これは自家製カカオバターに砂糖と粉乳を加えたものです」と言いながら、密封された袋からおもむろに白い板チョコレートを取りだして勧めてくれた。初めて口にした自家製ホワイトチョコレートは、カカオの香りもしっかり感じられて味わい深い。

枝俊介さんが、本格的にビーントゥバーの道を歩み始めてから今年11月で5年目に入る。その間に、1991年に大阪府吹田市にオープンした洋菓子店は25周年を迎えたのを機に「アルチザン パレドオール」として再スタートするなど、持っていた店舗を整理してチョコレート専門店へとシフトした。洋菓子という大きな選択肢がある中で、敢えてチョコレートに特化する道を選んだ三枝さんの決断に私は興味を抱いていた。

「アルチザン パレドオール」のアトリエにて、作業中の三枝俊介さん。届いた豆の品質のチェック(右)。厳選したカカオ豆を焙煎(左)。この後さまざまな工程を経て板チョコレートができあがる。

いてみると、そもそも洋菓子の世界はすでに基本が出来上がっているので、その枠は超え難いものがある。またチョコレートの世界は、一般的にはクーベルチュールという製菓チョコレートを専門とする大手メーカーがカカオ農園からカカオ豆を買い付けて、それをクーベルチュールに仕上げるというシステムが確立している。そのためパティシエやショコラティエは、そこから自分の気に入るチョコレートを単品あるいは複数を混ぜ合わせて使うとか、自分のオリジナルのものを作ってもらうしかない。長年の経験からどちらも限界が見えてしまったのだという。

「色が混ざっていない状態のつまり単色の絵の具が欲しくなった。そのためカカオ豆からボンボン・ショコラやパティスリーにするまで、一貫して手がけることにしたのです。自分で作るわけですからカカオ豆の特性だけでなく、豆からチョコレートを作るまでの過程には無限大の可能性があるのです」。

三枝さんは、チョコレートのとてつもない深さに魅了されているようだった。今ではコーティング用のチョコレートを除き、多くの商品に自家製のチョコレートを使っているという。

「グランクヴァ カカオ72%ビター」とカカオ豆

 

いてカリブ海のトリニダード・トバコにあるグランクヴァ農園のカカオ豆を使用した「グランクヴァ カカオ72%ビター」、そしてそのカカオ豆を順々にテイスティングさせてもらった。三枝さんが「これまでに出会った中で最高のカカオ」なのだとか。勧められるままに、グリルしたグランクヴァのカカオ豆を食べ、砂糖を少しつまんで含んでみる。三枝さんが初めて扱うカカオ豆を焙煎しているときに、どんなチョコレートになるのかイメージする時に使う方法だそうだ。こうすることでインスタントのチョコレートの味になるという。確かに口の中でチョコレートの味が出来上がっていくのが感じられ面白い体験だった。

こうしたファインカカオと呼ばれる香りが良く高品質なカカオ豆を使おうとすると、農家が小さかったり、量を採れなかったり、安定供給ができないから大手メーカーが使えるだけの量がない。パレドオールではこうしたカカオ豆を使うことができるのも魅力だ。

 

ショコラティエ パレドオール丸の内店にて。オーナーショコラティエの三枝俊介さんと

 

「今は自分自身も勉強中で色々なものを試している段階なのです」と、三枝さんは熱く語る。その試みのひとつに素材を合わせることで相乗効果の味わいを生むペアリングがある。

の始まりにようやく完成した新作「秋なごみ」は、和栗と日本茶と自家製チョコレートを使った6種類のペアリングが楽しめる。三枝さんの研究成果は、「和栗ショコラ」「栗+ウイスキー」に「和紅茶」とどれも期待以上の味わいだ。とりわけ「ほうじ茶」は今まで経験したことないほどのチョコレートとの調和と香り高さが印象的だった。

今秋登場したパレドオール初の和パフェと共にお勧めしたい秋の味わいだ。

 

text © Mika Ogura 2018

 

【プロフィール】

小椋三嘉(おぐら・みか)エッセイスト、食文化研究家

十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。

 

【商品情報】

  • グランクヴァ カカオ72%ビター


グランクヴァ農園で栽培された高品質のカカオ豆を使った自家製チョコレート。ドライフルーツやプラムのような香りと黒糖のようなコクがある
¥1,296円(税込)
販売期間:通年

 

  • 秋なごみ

栗と日本茶をテーマに自家製チョコレートを使った「和栗ショコラ」「栗+ウイスキー」「栗+コーヒー」「ほうじ茶」「和紅茶」「抹茶」という6種類のペアリングが楽しめるセット
¥2,160円(税込)
販売期間:11月中旬まで

 

  • パフェ パレドオール 和―なごみー

抹茶、栗、和三盆、黒糖、あずき、ライスパフェに、自家製チョコレートのソルベなどでカカオのエッセンスを散りばめたパレドオール初の和のパフェ
¥2,160円(税込)
販売期間: 10月下旬頃まで

 

【店舗情報】
ショコラティエ パレドオール
住所:東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング1F
TEL: 03-5293-8877

http://www.palet-dor.com/

※他の店舗についてはホームページで、また商品の詳細については各店舗にお問合せください。