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〜日本の香りを味わう〜

《第16回》岡田美術館 ART&CHOCOLAT 日本美術とショコラの愉しみのすヽめ

2018.11.15

Okada Museum Chocolate『福井江太郎 風・刻』HSG ©︎ FUKUI

柚子胡椒のような風味がショコラと共に口いっぱいに広がり、少し青みを帯びた香りが心地良い。神奈川県箱根町にある岡田美術館のミュージアムチョコレート、Okada Museum Chocolateのマスターショコラティエ、三浦直樹さんが、青い柚子と山葵を合わせた新作ショコラなのだと教えてくれた。三浦さんのショコラは独創的なものが多いが、際立って面白い味わいだった。そのショコラには雷神さまのお腹のあたりが描かれていた。

田美術館には、日本美術や東洋の陶磁器を始めとする素晴らしいコレクションを常時約450点展示している。長らく所在が分からなくなっていたものが再発見されて、美術館の収蔵となった喜多川歌麿の『深川の雪』や伊藤若沖の『孔雀鳳凰図』などがあることでも注目を集めている。

毎年それらの収蔵作品をモチーフにしたショコラを発表していて、今年で5シリーズ目となる。すべての新作は次の年には定番となり、ショコラも収蔵品のようにコレクションとして増やしていくというスタイルを取っているため、お気に入りの日本美術と共にずっと味わい続けることができるという楽しさがある。

 
Okada Museum Chocolate『福井江太郎 風・刻』

その日、私は新作が完成したという三浦さんを訪ねて工房にうかがっていた。工房では、現在開催中の展覧会に登場している作品をモチーフにしたショコラが作られているところだった。ここで一粒ごとに完成までをすべて手作業で作っている。

テーブルの上には、断面が見やすいように三浦さんが目の前で手際良く半分に切ってくれた8粒の新作ショコラが並んでいた。美術館収蔵の大壁画『風・刻 (かぜ・とき)』をモチーフにしたもので、冒頭の柚子×山葵のショコラもこの中の1粒だった。他にもサワークリーム×梅など、他では味わえないフレーバーがある。

 『風・刻』は、江戸時代から俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一など琳派の画家たちに描き継がれてきた『風神・雷神図』を日本画家の福井江太郎さんが現代に蘇らせものだ。画面の両端に鬼の形相をした風神さまと雷神さまが描かれており、作品に刻まれた約400年に及ぶ時の流れまでもが描き込まれている。640枚のパネルに描いた12m×30mの巨大なもので、完成に約5年を費やしたという大作だ。岡田美術館の足湯カフェからも鑑賞できるようになっている。

 Okada Museum Chocolateの最初のコレクション『光琳・菊』は、収蔵作品の『菊図屏風』をモチーフにしたもので、初めて目にした時は作品と共にかなり強く心に残ったショコラだった。

 
Okada Museum Chocolate『光琳・菊』

尾形光琳の『菊図屏風』は左右で対になる六曲一双のスタイルの金地に緑青や白い胡粉が映えるあでやかな屏風だ。琳派の歴史を通じて、もっとも美しい菊花図の大作として、非常に評価の高い作品で、岡田美術館のコレクションの中でもとりわけ魅力的な作品の一つである。

岡田美術館の小林忠館長によれば、貝殻で作る胡粉(ごふん)を盛り上げて花を描いているそうで、近くで鑑賞するととてもよくわかる。「琳派」とは、尾形光琳の「琳」をとって、近代になってから名づけられたもので、「光琳派」とも呼ばれるそうだ。琳派の作品の数々は、古来、私たち日本人が美しい自然と共にはぐくんできた情感や美意識が見事に結晶したものなのだとか。

小林館長に解説していただきながら館内を巡らせていただいたおかげで、普段は気づかないような細部に渡りご教示いただけたのは幸運だった。

 
特別にお招きいただいた岡田美術館チョコレートの工房にて。
Okada Museum Chocolateのマスターショコラティエ、三浦直樹さん(右)と。

『光琳・菊』は、屏風の左隻(左側)の中心の帯状部分をモチーフにしたもので、焼酎と菊茶でアクセントをつけた松茸×南瓜、和三盆糖×胡桃、安納芋×サフラン、柚子×マスカルポーネチーズ、和菓子のような味わいの宇治抹茶×黒豆というように、和素材を軸にして組み立てられている。Okada Museum Chocolateの原点ともいえる味わいで新作と併せてお勧めしたい。

岡田美術館は今年10月に開館5周年を迎え、それを記念した展覧会 『開館5周年記念展 美のスターたち』が2019年3月30日まで開催されている。新作を含めOkada Museum Chocolateのショコラも5シリーズ揃うので、この機会に是非ショコラと日本美術を一緒に堪能してみてはいかがだろうか。

 

text © Mika Ogura 2018

 

【プロフィール】

小椋三嘉(おぐら・みか)エッセイスト、食文化研究家。

十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。

 

 【商品情報】

●Okada Museum Chocolate 『福井江太郎 風・刻』


                          HSG ©︎ FUKUI
4,800 円(税込)

 ●Okada Museum Chocolate『光琳・菊』


2,800 円(税込)

岡田美術館 OKADA MUSEUM OF ART


住所:神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
TEL: 0460-87-3931
http://www.okada-museum.com/

※販売期間等の詳細は、岡田美術館ミュージアムショップにご確認ください。
ミュージアムショップのみのご利用も可。