グランドセイコー エレガンスコレクション SBGH201 白ダイヤルとのコントラストが美しいブルースチール秒針や、「セイコースタイル」と呼ばれるグランドセイコーのデザイン理念を踏襲した流麗な外装が美しい。自動巻き キャリバ―9S85 ケース:SS、サファイアガラス ブレスレット:SS 径40.2㎜ 620,000円(税抜)

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SEIKO〜世界の頂点へ(後編)

2019.10.3

GRAND SEIKO(グランドセイコー)
〜雫石工房から。ゴールドマイスターの卓越した匠の技が実現する腕時計の最高峰

グランドセイコー エレガンスコレクション SBGH201 白ダイヤルとのコントラストが美しいブルースチール秒針や、「セイコースタイル」と呼ばれるグランドセイコーのデザイン理念を踏襲した流麗な外装が美しい。
自動巻き キャリバ―9S85 ケース:SS、サファイアガラス ブレスレット:SS 径40.2㎜ 620,000円(税抜)

日本の美意識と精緻なものづくりの技術から、世界的な評価が高まるグランドセイコーの腕時計。その真髄に迫りながら、セイコーウオッチを代表する2つのプレミアムブランドを紹介する。後編では、世界でも数少ないマニュファクチュールを誇るセイコーウオッチがその技術を駆使するとともに、日本の美意識や品格、時代を超越した価値を継ぐブランド、GRAND SEIKO(グランドセイコー)を紹介する。2020年のブランド誕生60周年に向け、技術に磨きをかけるグランドセイコーの聖地、雫石を訪れた。


世界でも数少ないマニュファクチュール。
手わざを極めた名工たちの繊細緻密な技術

1960年の誕生以来、グランドセイコー(以下GS)は時計の最高峰を目指し、日本の美意識や品格を具現化してきた。高い精度や圧倒的なクオリティは世界を驚嘆させ、日本の時計そのものへの評価までも高めている。そのGSの機械式時計を世に送り出すのが、盛岡セイコー工業にある雫石高級時計工房だ。そこで培われる匠の技を求めて現地を訪れた。

岩手県雫石町に位置する盛岡セイコー工業。この社屋の中に高級機械式時計を製造する雫石高級時計工房があり、ここがGSの聖地である、緑の木々に囲まれた敷地面積10万㎡の大半は原生林を生かした緑地で樹木や昆虫、動物の維持管理や保守を行って自然環境保護にも努めている。 岩手県雫石町に位置する盛岡セイコー工業。この社屋の中に高級機械式時計を製造する雫石高級時計工房があり、ここがGSの聖地である、緑の木々に囲まれた敷地面積10万㎡の大半は原生林を生かした緑地で樹木や昆虫、動物の維持管理や保守を行って自然環境保護にも努めている。

岩手県雫石町に位置する盛岡セイコー工業。この社屋の中に高級機械式時計を製造する雫石高級時計工房があり、ここがGSの聖地である、緑の木々に囲まれた敷地面積10万㎡の大半は原生林を生かした緑地で樹木や昆虫、動物の維持管理や保守を行って自然環境保護にも努めている。

名峰岩手山を臨む雫石町にある盛岡セイコー工業は1970年に設立した。歴史を紐解けば、1881年に創業した服部時計店の時計製造工場として1892年に精工舎が設立。そこからウオッチ部門として第二精工舎(現セイコーインスツル)が1937年に独立し、その生産を担い、スタートしたという系譜を辿る。こうした1世紀以上の歴史を背景に、現在ではクオーツムーブメントや各種パーツを製造する最新鋭のファクトリーと、高級機械式時計を製造する雫石高級時計工房を擁する。まさにハイテクとクラフトマンシップが両輪となったセイコーの主要生産拠点だ。

 

盛岡セイコー工業は東北新幹線、盛岡駅から車で約20分の山々に囲まれた風光明媚な地にある。約10万㎡の広大な敷地には手入れの行き届いた樹木が立ち並び、その中を小川が流れる豊かな自然に囲まれている。雫石高級時計工房からは季節によって姿を変える木々の様子がまるで映像のように窓に浮かび、匠たちの目を休めているようだ。もともと岩手県はモノづくりの街として知られており、南部鉄器で代表される鉄製品や岩谷堂箪笥のような漆製品など日本を代表する伝統的技法を育む文化が根付いている。そして現在、最高峰の時計をつくり出す匠たちが精緻な技術を駆使して、新たな歴史の時を刻みはじめている。

工房内には漆塗りの岩谷堂箪笥の作業机が並び、そこには精鋭中の精鋭たちが顕微鏡と対峙して組み立てを行っている。 工房内には漆塗りの岩谷堂箪笥の作業机が並び、そこには精鋭中の精鋭たちが顕微鏡と対峙して組み立てを行っている。

工房内には漆塗りの岩谷堂箪笥の作業机が並び、そこには精鋭中の精鋭たちが顕微鏡と対峙して組み立てを行っている。

雫石高級時計工房は、国内唯一のマニュファクチュール体制を整えた工房として2004年に設立された。高級機械式時計の極小ネジや歯車などの部品製造から組み立てまでを一貫して行なう。現在約80名が所属し、組み立て、調整、検査の工程には約30名の精鋭技能士が就く。完全に外部と遮断されたクリーンルームでは、各人が独立したデスクで精密な作業に向う。だが壁には大きく窓が設けられ、そこから広がる自然の風景に目を癒すこともできる。集中力を途切らすことなく、緻密な時計に人の温もりを通わせるための配慮だ。

 

一つひとつを手作業で作り出す雫石高級時計工房の技術や役割、そしてGSの魅力について、ムーブメント組み立てのリーダーである伊藤勉に話を聞いた。昨年、伊藤は工房が導入する独自の「マイスター制度」の最高位に当たるゴールドを取得した。この制度は、専門分野でのより高度な技術を習得するとともに、匠の技を伝承するため、認定の条件として後継者を指名し、育成に当たる。ゴールド、シルバー、ブロンズの3ランクがあり、2年に1度認定が行なわれるが、ゴールドは現在わずか6名。シルバー取得者の技術レベルでも国内業界トップを誇るとされ、ゴールドの認定は、伊藤にとっても20年かけた到達点であると同時に、まさに技能士の頂点といっていいだろう。

1991年に入社後、すぐ頭角を現した伊藤勉。2000年には雫石高級時計工房の前身である高級品製造職場へ移動して「グランドセイコー」を担当。ひげぜんまいの調整からはじまり、9Sムーブメント全体の組み立て・調整などを手掛ける。機械式時計の技能認定として最難関である「IWマイスター」に合格後は、グランドセイコー機械式時計の組み立て・調整師として、第一線で手腕を発揮している。 1991年に入社後、すぐ頭角を現した伊藤勉。2000年には雫石高級時計工房の前身である高級品製造職場へ移動して「グランドセイコー」を担当。ひげぜんまいの調整からはじまり、9Sムーブメント全体の組み立て・調整などを手掛ける。機械式時計の技能認定として最難関である「IWマイスター」に合格後は、グランドセイコー機械式時計の組み立て・調整師として、第一線で手腕を発揮している。

1991年に入社後、すぐ頭角を現した伊藤勉。2000年には雫石高級時計工房の前身である高級品製造職場へ異動して「グランドセイコー」を担当。ひげぜんまいの調整からはじまり、9Sムーブメント全体の組み立て・調整などを手掛ける。機械式時計の技能認定として最難関である「IWマイスター」に合格後は、グランドセイコー機械式時計の組み立て・調整師として、第一線で手腕を発揮している。


経験と感性で技を習得。
ネジの締め加減などの微調整は指先で覚える。

伊藤は1991年に入社し、クオーツムーブメントの自動ラインに配属後、所属部署の再編をタイミングに機械式の製造を志願した。折しも1998年にGSが復活し、現在に至る。2004年にはいよいよ工房が開設。もっとも著しい変化は、新たに設けられたGS検定だったという。これは、スイスクロノメーター規格を越える独自の精度基準であり、精度検査についても一般的な5姿勢差(時計の姿勢によって生じる精度差)に対し、6姿勢差のチェックを課した。「初期のGSがよく言えば工芸品的な手作り感を活かしたのに対し、精度と品質も徹底して上げました。それは細部にも完璧を求めるということです。そのため改善がすべてに渡って行なわれました。現在も海外のジャーナリストが見学にくると、部品の美しさに驚かれ、スイスでもここまで手間をかけない、といっていただくことがあります。誰も見ないレベルの作りまで気を使います。そこにはいいものを均一にという作り方が徹底され、検査もそれにならっていますね」

高級機械式時計が内蔵する部品は200点を超える。これらの部品の多くは工房内で製作されている。ピンセットでつかむことすら難しい小さなサイズのネジを匠たちはドライバーで微調整をしながら締めていく。 高級機械式時計が内蔵する部品は200点を超える。これらの部品の多くは工房内で製作されている。ピンセットでつかむことすら難しい小さなサイズのネジを匠たちはドライバーで微調整をしながら締めていく。

高級機械式時計が内蔵する部品は200点を超える。これらの部品の多くは工房内で製作されている。ピンセットでつかむことすら難しい小さなサイズのネジを匠たちはドライバーで微調整をしながら締めていく。

品質の差が出ないように、高い基準を守り、量産する。GS規格はそこまでやらないとクリアできないということだ。しかしいくら公差を決め、その範囲内で部品を作っても、いざ組み立ててみるとどうしても差が出てしまうこともある。「その差を埋めるのが組み立てる職人の腕」と伊藤。「ムーブメントの組み立てに同じものはまったくないし、つねに新しいチャレンジなんです。でもうちのいいところは、もし組み立てだけで解決できない場合は、設計部門にすぐ相談できるところです。そこでシミュレーションし直し、反映できるところはしてもらいます。だからつねに改良されているんです」。

 

そんな組み立ての作業でもっとも面白く感じる点はどこにあるのだろう。「面白いし一番大変なところは、精度調整ですね。指標になる数値があり、まずそれに近づける。これまで培ってきた経験による勘が当たることもあれば、いまだに外してしまうこともあります。新しい技術や新作にはそれも通用しないことが多々あり、その度に勉強しながらやっています」。昨年ゴールドマイスターを取得し、技能士としての意識も変わったという。「責任も大きくなりますし、これも先輩に鍛えられたおかげだと思います。それにも増して、会社を背負っているという自覚を持つようにと激励されました」と笑う。そこには工房での時計作りへの誇りが伝わってくる。グランドセイコーにおける雫石高級時計工房とはどのような存在なのか。「機械式時計の要というか、カッコ良く言えば聖地だと思います」と胸を張る。

工房内では、極小サイズの部品を顕微鏡をのぞきながら、息をつめて作業を進める。製作しているのはキャリバー9S85。 工房内では、極小サイズの部品を顕微鏡をのぞきながら、息をつめて作業を進める。製作しているのはキャリバー9S85。

工房内では、極小サイズの部品を顕微鏡をのぞきながら、息をつめて作業を進める。製作しているのはキャリバー9S85。


ではグランドセイコーの魅力とは?「かつての、第二精工舎時代のGSは現代の電波時計のような正確さを追求した機械式でした。しかし、現代における機械式時計の意義と同じく、現在のGSは満足感や所有欲を満たしてくれるものだと思います。高い精度や実用的な使い勝手があることで違和感なく日常で使え、しかも所有欲を満たしてくれる。しかも使い続けることで、それまで気づかなかった美しさが発見できる。そんな新鮮な魅力を持つ時計です。そのためにもすべての工程で見えない部分までこだわっているんです」。時計作りに関わるひとりとして、伊藤自身がこれから作ってみたい時計とはどんな時計なのだろう。「自分の時計を作ってみたいですよ。でもやっぱりGSがいいんですよね。ずっと憧れだったし、いまも自分にとって最高峰なんです」。

ミラノデザインウィーク2019「THE NATURE OF TIME」のイメージ映像。
――「THE NATURE OF TIME」東京店開催――
今年4月のミラノデザインウィークに2度目の出展を果たしたグランドセイコー。流れるように動く秒針を持つ独自の機構「スプリングドライブ」が映し出す「移ろい流れ続ける時間とその永続性」を空間として表現したミラノでの展示を再構成する。「THE NATURE OF TIME」東京展は10月16日(水曜)~20日(日曜)原宿のjingにおいて開催。

GRAND SEIKO グランドセイコー
1960年、初代「グランドセイコー」が発表される。世界最高峰の腕時計を目指し、正確さ、美しさ、見やすさといった腕時計の本質を高い次元で追求・実現し続けている。1988年のブランド初のクォーツモデルの発売から、93年の9Fクォーツムーブメント、98年に機械式ムーブメント9Sシリーズ、2004年には画期的な9Rスプリングドライブムーブメントが発表された。海外進出は2010年から、アジア・ヨーロッパ・中近東・オーストラリア・アメリカ・中南米まで全世界で展開している。
https://www.grand-seiko.com/
http://www.shizukuishi-watch.com/

 

(敬称略)

 

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Text by Mitsuru Shibata
Photography by Takashi Sekiguchi
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