日本の季節は春・夏・秋・冬の四つだけではなく、初春の立春から始まり、晩冬の大寒に終わる二十四節気、さらに二十四節気をそれぞれ三つに分けて一年を72等分した、七十二候という細分化された繊細な季節がある。
「今=ここ」にある季節を、コンテンポラリーに切り取ったビジュアル、そして季寄せ―――
季節の気配・花鳥風月・草木などの折々の自然に眼差しを向ける感性豊かな暦・歳時記を意識した日常ほど、贅沢なものはない。


2019年8月8日〜8月22日
二十四節気 / 立秋
二十四節気の立秋(りっしゅう)とは、暦の上での秋の始まり。暑さのさなかではあるものの、吹いてくる風、空の色、雲の形など、そこかしこに秋の気配が感じられる季節だ。夏のイメージがある「盆踊り」は秋の季語。8月に行われることが多い季節行事の「お盆」の正式名称は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」で、迎え火でご先祖様をお迎えして、お盆の最終便は送り火をたいてお見送りする。京都の風物詩である「大文字」も送り火のひとつ。「暑中見舞い」も秋分以降は「残暑見舞い」になる。
七十二候では、立秋は第三十七候(初候)涼風至(すずかぜいたる)8/8〜8/12(2019)、第三十八候(次候)寒蝉鳴(ひぐらしなく)8/13〜8/17(2019)、第三十九候(末候)蒙霧弁降(のうむしょうりゅうす)8/14〜8/22(2019)の三つの季節に分けられる。
昼間の暑さは大暑を凌ぐ日もあるが、夕暮れ時にもなればどこからか、軽やかな涼を感じる風が吹く。「秋蝉」と書き、秋のイメージがある「ひぐらし」は、この季節には鳴きはじめていて、どこか切なく、去りゆく夏を惜しむような声を夕空に響かせる。早朝、森林や水辺などに白く霧が立ち込める様子が見られるのもこの時季。霧は秋の季語であり、同じ自然現象でも春に起きるものは霞と呼ばれる。高原の木立の中、霧が白く漂う景色は、盛夏の終わりと秋への季節の移り変わりを感じさせる。


第三十七候(初候)
涼風至(すずかぜいたる)
ふと見上げると、空と雲の織りなす景色が秋めいてきた。
日毎に赤みをさしてゆくほおづきの実。
背丈ほどに伸びた夏草も、いつの間にか穂をあげ始め、
目に映るそこかしこの風景は、秋の準備へと余念がない。
日が傾いてくれば、こだまするひぐらしの声。
木立のシルエットが影絵のように暗くなる頃、
遠くから響き始めたのは、盆踊りの太鼓の音。


立秋の歳時記・季寄せ
二十四節気 / 立秋
七十二候 /
第三十七候(初候)涼風至(すずかぜいたる)8/8〜8/12(2019)
第三十八候(次候)寒蝉鳴(ひぐらしなく)8/13〜8/17(2019)
第三十九候(末候)蒙霧弁降(のうむしょうりゅうす)8/14〜8/22(2019)
気配:秋虫の声 霧 花:なでしこ 桔梗
茶花:秋海棠 芙蓉
襲(かさね)の色目:萩(表-紫 裏-白) 萩経青(表-経青緯蘇芳 裏-青)
行事:盂蘭盆会 大文字(五山の送り火 / 京都) 阿波踊り(徳島市)
鳥:かささぎ 虫:ひぐらし 装い:麻 絽 紗 上布
料理:とうがんの含め煮 菓子:雲門 萩の露
魚貝:いなだ こち 野菜:とうがん 果物:ほおずき いちじく 白桃
星座:へびつかい座 季語:立秋 残暑 盆の月 新涼
俳句:ほほずきのぽつんと赤くなりにけり(今井杏太郎)


Video editing by Mei Tsukishiro(Park Sutherland)
Music by Yosuke Tsuchida
参考文献:『季語・歳時』『二十四節気と暦』国立天文台暦計算室貴重資料展示室、『合本俳句歳時記第五版』角川書店、『かさねの色目-平安の配彩美』青幻舎、『四季の暮らし美しい朝夕巻一四季の着物秋・冬』講談社、『きもの歳時記』平凡社、『美しい季語の花』誠文堂新光社
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