「皆川魔鬼子 テキスタイルの世界観」 高木由利子01

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皆川魔鬼子 テキスタイルの世界観

2019.9.2

3. 写真家・高木由利子が、皆川魔鬼子の服「HaaT」を撮る

「HaaT(ハート)」のビジュアル写真を撮影しているのは、世界的な写真家である高木由利子だ。長くファッション業界に身を置き、その後写真家へ転身した経験と、独自の感性を生かし、高木由利子だからこそ撮り下ろせる写真で、HaaTのこだわりあるテキスタイルを表現していく。高木が一目惚れをしたという軽井沢の風景に抱かれる自宅で話を聞いた。写真は霧に包まれる、軽井沢の高木の自宅。

 

 

談・高木由利子

「HaaT」がスタートしたときから何度かビジュアルを撮らせていただき、2017年秋冬コレクションから毎回撮影をさせていただいています。でも、皆川さんとのお付き合いはもっと古くて。1980年代に皆川さんが「ASHA BY MDS」というブランドをされていていたとき、やはりビジュアルを撮影させていただいていました。

ASHA BY MDS 1 ASHA BY MDS 1
ASHA BY MDS 当時のビジュアル写真。 ASHA BY MDS 当時のビジュアル写真。

ASHA BY MDS 当時のビジュアル写真。

ビジュアル撮影において私が目指すのは、“服のポートレート”。モデルが主役ではなく、いかに洋服そのものをフォトジェニックに表現するか。皆川さんが最も大切にしているテキスタイルの質感をいかに写し出すか。これを常に考えて撮影に挑んでいます。


テクスチャー、テクニック、立体感。
「服のポートレート」を撮るということ

2019年秋冬コレクションには、京都の職人さんが手掛けた”スリハガシ”という技法を取り入れた素敵なテキスタイルがあります。これは一枚ずつ手仕事で作り上げていくものだと聞きました。今どきこんなに採算が合わない仕事があるのかと驚いてしまうほど、手間と時間を掛けて仕上げていく。これがHaaTの魅力であり、皆川さんの創造する軸になっていると思います。

2017年秋冬コレクションより。画家であり鳥類学者であるジョン・ジェームス・オーデューボンの版画からインスピレーションを受けた。リバーシブル仕様。 2017年秋冬コレクションより。画家であり鳥類学者であるジョン・ジェームス・オーデューボンの版画からインスピレーションを受けた。リバーシブル仕様。

2017年秋冬コレクションより。画家であり鳥類学者であるジョン・ジェームス・オーデューボンの版画からインスピレーションを受けた。リバーシブル仕様。

HaaTには毎シーズン、このような手仕事の技が生み出すテキスタイルがあって、それを皆川さんの説明を聞きながら映像で観せていただいています。職人さんが黙々と作業をする姿や手仕事の妙を知ると、そのテキスタイルの見え方も変わっていきます。私の撮影イメージづくりはそこから始まっていきます。


2018年秋冬コレクションより。 チュール生地には、カラフルなプリズムを思わせるかんらん石と繊細な刺繍を施して立体的な質感を演出。 2018年秋冬コレクションより。 チュール生地には、カラフルなプリズムを思わせるかんらん石と繊細な刺繍を施して立体的な質感を演出。

2018年秋冬コレクションより。チュール生地には、カラフルなプリズムを思わせるかんらん石と繊細な刺繍を施して立体的な質感を演出。

これは「HaaT」に限らないことですが、心がけているのは「服のポートレイト」を撮るということ。モデルが服を着せられているという感じではなく、そして服が際立ちすぎることもなく、人と服の融合点を探します。それは分離ではない、程よい交流点を見つけてつくり出すことです。それを際立たせるためには、この服で何を表すのか、動いた方が魅力を引き出せるのか、透けた方がより美しいのか、ということを1着1着、考える。そして、その交流点を見つけ出すことで、その服の魅力的なポートレートが撮れると考えています。

2019年秋冬コレクション。緯糸に強撚糸を使うことで、立体的な畝をつくり出すジャガード織りを施した3Dパッチワーク。 2019年秋冬コレクション。緯糸に強撚糸を使うことで、立体的な畝をつくり出すジャガード織りを施した3Dパッチワーク。

2019年秋冬コレクション。緯糸に強撚糸を使うことで、立体的な畝をつくり出すジャガード織りを施した3Dパッチワーク。

「HaaT」で表現したいのは、皆川さんがこだわるテキスタイルの絶対的な魅力。そして日本とインドの伝統的な技術。これに皆川さんの感性がコラボレーションしていく。このスタンスをビジュアルブックでも感じて欲しい。HaaTの毎シーズンのチャレンジは、いつまでも新しいことを探し出し、好奇心を持ってトライをする彼女の精神性の現れのように思います。

 

先日、はじめて高知への旅行をご一緒させていただきました。今回の旅行の目的は、高知の「山茶」という山間部に自生しているお茶を訪ねていくことでした。皆川さんはとてもワイルドなんですよ。どこでも寝られるし、どこへでも行っちゃうし、食べ物でも買い物でも全てに好奇心があって、まるで少女のような方。ますます彼女に惹かれています。

 

→ 次回は、原由美子(スタイリスト) です。

(敬称略)

Profile

高木由利子 Yuriko Takagi
写真家

1951年東京生まれ。武蔵美術大学にてグラフィックデサインを学んだ後、渡英。Trent Polytechnicでファッションデザインを学び、フリーランスデザイナーとしてヨーロッパで活動後、写真家に転身。現在は日本を拠点に、アジア、アフリカ、南米、中近東に撮影旅行を続けながら、積極的に活動している。独自の視点からファッションや人体を通して「人の存在」を追い求める作品は、繊細でありながらも、その場の独特な空気感とともに深く潜む生命をも曝す圧倒的な強度がある。日本やヨーロッパで定期的に展覧会を開催。主な著作に『Nus Intime』(用美社)、『Confused Gravitation』(美術出版社)、『IN AND OUT OF MODE』(Gap Japan)、『Skin YURIKO TAKAGI × KOZUE HIBINO』(扶桑社)がある。『sei』(Xavier Barral)
https://www.yurikotakagi.com

 

 

HaaT/ISSEY MIYAKE INC.
https://www.isseymiyake.com/haat/ja

Photography by © ISSEY MIYAKE INC. Yuriko Takagi
Text by Yoshiko Takahashi

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