ミラノにも拠点を持つnendo。
DAIKINの体験型インスタレーションは
連日行列ができる人気を博した
ミラノと東京に拠点を持つ、佐藤オオキ率いるデザインオフィスnendo。ミラノでも人気の高いnendoと「breeze of light」と題したインスタレーションを展示したのは、ミラノデザインウィークに4回目の出展となる空調専門メーカーのダイキン。偏向フィルムを使って影の濃度を変化させ続けることで、「空気の存在」を「空気の動き」として視覚的に認知させ、新たな「空気の感じ方」を提案した。会場は、代官山にあるTENOHAのミラノ支店・TENOHA MILANO。日本製の小物や食品、雑誌書籍などを販売するショップも併設し、人気を博している。ここにも長蛇の列ができていた。
KAWASHIMA SELKON TEXTILES 川島織物セルコンは伝統技術と先端技術を合わせ持つ様々な手法で作られた織物を使ったインスタレーションで、クラシックなヨーロッパのパラッツォに優雅な空間を演出。日本の誇る織物芸術の精緻なクラフトマンシップをミラノで初披露した。
ミラノコレクションの会場にもなる瀟洒な館Palazzo Litta(パラッツォ・リッタ)を会場に、ミラノデザインウィーク初出展を果たしたのは川島織物セルコン。琳派の画家・工芸デザイナーの神坂雪佳デザインの「百花」を採用した織物でパラッツォの壁面をデコレーションした。西陣の織物の技術を用い、柄を織る過程に偏光紙の切片を織り込むことで、表面に軽い3次元の効果を作り出す。伝統技術と先端技術を合わせ持つ織物メーカーが見せた完璧な展示は、まさしく日本を訴えるものであった。
UNION 大阪に本社を置くドアハンドルを主力とした建築金物メーカー、ユニオンはミラノデザインウィーク初出展。最新の技術を駆使したものから、日本のクラフトの技を融合させたものまで、意匠用ドアハンドル分野における日本の市場占有率は80%以上を誇る同社は、工房空間で職人による「砂型鋳造」制作をデモンストレーションした。
フオリサローネの中心地のひとつ、トルトーナ地区の会場でインスタレーションを開催したのは、ハンドルメーカーのUNION。「One design-One Handle」をテーマに、建築家の田根剛が会場構成とインスタレーションを手がけた。工房空間では、「砂型鋳造」制作におけるハンドル作りの手仕事の工程を日本から招いた職人が再現。ハンドルを組成する膨大な素材や資料の展示との二部構成でハンドルメーカーのアイデンティティを表現した。
DNP(大日本印刷) 後継者不足により貴重な伝統紋様が失われつつある江戸小紋型紙。スキャニングおよびデジタルアーカイブを行い、光効果を加えることで再構築し、空間を演出した。Photography by Daici Ano
HARU stuck-on design 粘着テープ「コロコロ」で有名なニトムズが、小林弘和と山田春奈によるクリエイティブユニット「SPREAD」と共に「色を貼る」という発想のもとに開発。跡を残さず貼ってはがせる空間装飾テープを自在に使い、“光と影”、“都市と自然”などのコントラストを48色のカラーで表現。
前述のAGCと同じ、ミラノ中央駅のヴェントゥーラ・チェントラーレを会場とした、DNP(大日本印刷)。日本の伝統柄の色彩と文様を再構築し、新たにグラフィックとして応用することで、優れた印刷技術の粋を紹介した。また、中央駅からも程近く、ミラノデザインウィークの新スポットALCOVAを会場にしたのは、空間装飾テープブランド「HARU stuck-on design」。朽ちた雰囲気が特徴の広大なパネットーネ(ミラノの伝統菓子)工場跡地の壁面と空間を、1mにも及ぶ幅の広いテープや各色の幅の異なるテープで装飾。テープによって大きく変化しうる空間の可能性を訴えた。
吉岡徳仁、佐藤オオキ、皆川明・・・
日本のクリエイターたちのデザインの
表現言語に満ちる独自のポエジー
KARTELLの吉岡徳仁、FLOS、MINOTTIの佐藤オオキ(nendo)など、海外ブランドとの日本人デザイナー、アーティストのコラボレーションも増えている。アルテックはフィンランドと日本の外交関係樹立100周年を記念して、皆川明の書籍「ああるとのカケラ」など、日本のクリエイターとの協働による、FIN/JPNフレンドシップコレクションを発表した。「BUAISOU」は、アアルトのスツールの座部に日本の藍染を施したもの。二俣公一の木製家具「キウル ベンチ」は、サウナと銭湯という両国の自然との共生の観念の共通性を伝えていた。
ARTEK FIN/JPNフレンドシップコレクションのひとつである書籍「ああるとのカケラ」(写真上左)を製作したのはアルテックと長く親交を育んできた皆川明。アアルト夫妻がデザインに携わった建築やプロダクトなどから象徴的な要素を抽出し、皆川とアアルトの、ものづくりへの想いを表現した。写真上右は二俣公一による「キウル ベンチ」。フィンランドのサウナと日本の銭湯・温泉文化という両国に共通する公衆浴場の文化に着想を得てデザインされたもの。ベンチとしてだけではなく雑誌、おもちゃなどを収納する棚などとしても使うことができる。すべて表参道にオープンしたアルテックの旗艦店で購入が可能だ。
KARTELL 「The Kartell Windows」と題して22の窓からカルテルの世界を展示。その中で8番目の窓を飾ったのは吉岡徳仁の「Smatrik」。吉岡のオリジナリティ溢れる発想と、カルテルの持つ樹脂加工の技術のショーケースとなった。
FLOS テーブルトップと照明器具を組み合わせたモジュラー「HAERU」はサローネに新設されたSプロジェクトの会場で発表されたnendoデザインによる新作。3種類のテーブル、2種類の照明、3タイプの脚の8つのパーツで構成されている。テーブルからランプが「生えて」いることを意味して名づけられた。
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