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石井宏子の<ここにしかない日本>「オーベルジュ土佐山」 

2016.07.01

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地域の人々が集まって始まった土佐山プロジェクト

何もないから、恐れることはない。思い付いたらすぐに行動に移そう。土佐山の中川地区の人々は、過疎が進む集落をなんとかしたいとプロジェクトを始動しました。「日本全国から人が来てくれる場所を作ろう」それがオーベルジュ土佐山の始まりです。誕生までには10年の歳月を費やしました。スイスやインドやドイツへも研修にでかけ、何十回もワークショップを重ねたという地域の情熱に驚きます。

建築は高知県の事業として集まった思いのある建築家集団「土佐派」に依頼。中川地区の集落をくまなく歩き、地域の人々と何度も話し合いをしてオーベルジュ土佐山の設計を進めたそうです。土佐派の建築の特徴は、土佐の土着の伝統工法である木の家をベースに土佐の杉や檜、土佐漆喰、土佐和紙を使って作ること。できるかぎり自然な手順で森から伐採した木材を使うことで材料への薬剤の使用を不要にして人の健康を守ることにもこだわっています。

高知市内から宿へと向かっていく道は、途中からどんどん山深くなっていきます。とにかく幽玄な山の中。高知は海のイメージがありましたが、山の秘境もすごいのだと実感します。平らな土地はなく、段々畑や棚田が渓谷の周りに広がります。

大切にしたのは、地域に棲む生き物たちの生態系に沿った共存共栄の建築。部屋へ行く回廊も屋根はありますが、水場を望む外廊下で野鳥も飛んできます。温泉の湯屋へ行くとわかる、圧巻の伝統的軸組構造は、まさに世界に誇れる日本の建築美。木で籠を編んだような構造により柔軟性と耐久性を合わせもつ日本古来の技です。

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