「プレミアム温泉」vol.47
【長野県】白骨温泉「小梨の湯 笹屋」:温泉ビューティ研究家 石井宏子
溢れ出る源泉が創り出す“淵模様”の芸術
うわーすごい。太い梁の木造建築の湯殿、たっぷりとかけ流されている温泉の青白い色の美しさ、その向こうに広がる雪景色。全てがこんなに美しいのですが、それにも増して、真っ先に魅せられてしまったのは、見たことのない「湯船の淵」!!そもそもは木の湯船だったそうです。
そこに毎日毎日滔々とかけ流される温泉が重なり重なりこんな奇跡のオブジェを創り出してしまったのです。硫黄とカルシウムをたっぷりと含む温泉の成分が織りなす“淵模様”。
「来るたびに、新しい芸術をご覧いただけますよ」女将さんがおっしゃっていたのは、まさにこれだったんですね。生きている地球がつくった芸術に見とれて、温泉に入る前から、うっとりしてしまいました。これは温泉の石灰華とも呼ばれ、湯船が白い船になるから白船温泉それが後に白い骨、白骨温泉という名前になった所以でもあります。
自家源泉100%かけ流しだからこそ
白骨温泉はそれぞれ源泉を所有している宿が多く、小梨の湯 笹屋もそのひとつ。その宿の源泉を自家源泉と呼びますが、つまり、その宿に行かないと入れない温泉であり、わざわざ旅に行かないと出会えない“ここだけ”のものでもあるのです。
小梨の湯の泉質は、含硫黄-カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉。カルシウムが多い炭酸水素塩泉で、石灰華が積み重なる素になっています。また、硫黄成分が合計19.8mgもあり、硫黄の香りにつつまれて、血行促進し、体の巡りが良くなります。
pH6.7の中性で肌に優しい柔らかな感触。32.5℃の源泉を加温して、加水・循環はせず、そのままたっぷりかけ流しています。雪の中にうかぶ白樺のシルエットが印象的。いつまでも入っていたい気持ちよさですが、鮮度のいい温泉は想像以上にパワフルですので、長湯は禁物です。
森をダイレクトに感じられる露天風呂「小梨の湯」は貸切風呂。チェックインから夜の時間まで、空いていればいつでも無料で入れます。湯船にぽつんと浸かっていると、その程よい小ささがむしろ、森に抱かれているような気分で癒されます。
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