「アートビオトープ那須」がある横沢の地は、那須の郷土誌によれば「水の豊かな場所」と記されている。

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北山ひとみが描く新時代プレミアムリゾート

2020.1.27

5. 「アートビオトープ那須」体験が精神を浄化し、新たな自分を導く

「アートビオトープ那須」がある横沢の地は、那須の郷土誌によれば「水の豊かな場所」と記されている。

「アートビオトープ那須」は、創業当時から進化を遂げて、新たなリゾートの在り方を提案し続けている。特に若手作家支援活動であるアーティスト・イン・レジデンス活動を積極的に行い、現在は一部上場会社タカラレーベン社と新たなプロジェクトに共同で取り組む。2018年に誕生した水庭に加え、今年、2020年夏には15棟のスイートヴィラとレストランが新設されるなど、新たな取り組みが注目を集める。「二期倶楽部」を創設した北山ひとみを母親に持つ北山実優は「アートビオトープ那須」の新たな姿を模索中だ。

 

文・北山実優

アートビオトープ那須が目指すのは、リゾートを超えた新たな空間

那須連山の山麓、横沢に位置する「アートビオトープ那須」は、1986年に同地で創業した「二期倶楽部」の開業20周年を記念した文化事業として、2007年に誕生しました。「アートビオトープ」とは、「アート」と「生命の場所」を意味する「ビオトープ」という言葉を組み合わせた造語で、動植物が一つの生態系を形作っていくように、アートをテーマに人々が集い、交感し合い、コロニーを形成していく苗床となることを願ってつけられたものです。名付け親は文化顧問として長く様々な活動をサポートいただきました武蔵野美術大学教授である新見隆先生で、この名前をとても気に入っています。

 

もともと農用林だった横沢周辺の環境は、30年間、多くのクリエイターとゲスト、そして二期チームと共に丁寧に創られ、人の息と手と共に少しずつ変化してきました。このような場所で引き続き「アートビオトープ」を進化、深化させていくことは、私にとって大変意味深いことです。

大自然に囲まれたアートビオトープ那須には本格的な創作体験ができる陶芸スタジオ、ガラススタジオが併設されている。創作に没頭する体験は貴重な時間となる。 大自然に囲まれたアートビオトープ那須には本格的な創作体験ができる陶芸スタジオ、ガラススタジオが併設されている。創作に没頭する体験は貴重な時間となる。

大自然に囲まれたアートビオトープ那須には本格的な創作体験ができる陶芸スタジオ、ガラススタジオが併設されている。創作に没頭する体験は貴重な時間となる。


学生の頃、従来の詰め込み型教育への反省から議論された「生きる力を育む教育」、そこから「生きる力」や「学び」について深く考えることがありました。そんな経験を元に、横沢アートコロニーを象徴するイベントとして2008年より毎年実施してきたのが、オープンカレッジ「山のシューレ」です。この「山の学校」では、夏の数日間、老若男女国籍を問わず多様な人々が寝食を共にし、「自然の叡智と人の叡智」というテーマの下に集います。10年間にわたり、総合監修に東京藝術大学教授の伊藤俊治先生を迎え、森の中で自然の声に耳を傾けつつ様々な領域で活躍されている講師とゲストと共に交差、語り合い、学びました。この活動は、私にとって今後の「アートビオトープ」という場を考えていく上での大きな機会ともなりました。

山のシューレのコンセプトでもある、伊藤俊治「いかにして ともに生き、ともに学ぶか」。東京写真美術館運営委員、NTTインター コミュニケーションセンターのコミッティ、東京藝術大学で先端芸術表現科の新設に尽力した伊藤俊治。2014年に大阪のCalo Bookshop & Café、 Calo Gallery10周年シンポジウムで芸術教育について語った講演録。 山のシューレのコンセプトでもある、伊藤俊治「いかにして ともに生き、ともに学ぶか」。東京写真美術館運営委員、NTTインター コミュニケーションセンターのコミッティ、東京藝術大学で先端芸術表現科の新設に尽力した伊藤俊治。2014年に大阪のCalo Bookshop & Café、 Calo Gallery10周年シンポジウムで芸術教育について語った講演録。

山のシューレのコンセプトでもある、伊藤俊治の「いかにして ともに生き、ともに学ぶか」。東京写真美術館運営委員、NTTインター コミュニケーションセンターのコミッティ、東京藝術大学で先端芸術表現科の新設に尽力した伊藤俊治。2014年に大阪のCalo Bookshop & Café、Calo Gallery10周年シンポジウムで芸術教育について語った講演録。

毎年の山のシューレ初日のオープニングイベントである開き舞台は、能楽師の安田登さんが演出。安田さんの舞台づくりは、大変示唆に富んだ実践そのもので、世界の神話にみられる冥界下りをテーマにしたシリーズは、自然と共にあった古代人の死生観から「生きる」ことについて改めて考える機会になりました。そして岡山にて45年ライブハウスを営んでいる能勢伊勢雄さんの10年に及ぶレクチャー、詩人高橋睦郎さんの「遊び」の文化論、岩手の種取り百姓 田村和大さんによる種のワークショップ、聖なる場所の力をめぐるシンポジウムなど、様々な視点から自然を母として成長してきた私たちの文明を問い、土地とそこから生まれた文化、またその深化の経緯に学び、生命の共生のかたちを考えてきました。

山のシューレ2014 谷川俊太郎・谷川賢作「横沢の森と詩と音楽の会」 山のシューレ2014 谷川俊太郎・谷川賢作「横沢の森と詩と音楽の会」

山のシューレ2014 谷川俊太郎・谷川賢作「横沢の森と詩と音楽の会」

この山のシューレの結果を次へのかたち、として創り出したのが「水庭」です。かつて森林だった場所が切り開かれ、水田となり、その後牧草地となっていた土地に、隣接する土地から樹木を移植し、川の水を引き入れることによって誕生しました。樹木やコケ、石や水といったこの土地に元々存在していた素材を使い、それを自然界には存在しないような密度と関係性で精緻に重ね合わせ、再構築することで生まれたものです。

 

設計を手掛けた石上純也さんが以前「このタイミング、この横沢という環境で、アートビオトープに、この場所に、本当に必要なものは何か」そして「残っていくべきものは何か」と、創造への思考の経緯を語ってくださったことがあります。石上さんの同世代としても、非常に共感するものがありました。


2018年に誕生した水庭。設計をしたのは世界的に活躍する建築家・石上純也。318本の樹木と160個の池が織り成すその風景は、自然の美の縮図のような空間。 2018年に誕生した水庭。設計をしたのは世界的に活躍する建築家・石上純也。318本の樹木と160個の池が織り成すその風景は、自然の美の縮図のような空間。

2018年に誕生した水庭。設計をしたのは世界的に活躍する建築家・石上純也。318本の樹木と160個の池が織り成すその風景は、自然の美の縮図のような空間。

「古代の庭園観を密かに内包する水庭とは、近代化の過程で見失ってしまった「或るおおもと」を私たちに思い出させる装置であると考えることも出来るでしょう。それは近代やそこに生きている私たちの姿を相対化することにより、人間の「主体性」や「自己意識」といった近代の根底にある思想が、実は幻想に過ぎないのではないか、ということに気付かせてくれます」。能勢伊勢雄さんも山のシューレのレクチャーでこのように結んでくださいました。自然資源を自省なく消費してきた近代にも問いかけ、またすべてのものが相互扶助しながらゆっくりと循環している事実を感じさせてくれる、そんな体験と瞑想の場が誕生したと思います。

 

パリから約三百数十キロ離れた、ポワチエという街にあるアートレジデンスを訪問したことがあります。アーティストや建築家が招聘され、毎夏ワークショップが開催されています。またインドでは、瞑想リトリートのために世界各地から多くの人々が集まり、ベジタリアンフードを食し、朝から瞑想のレクチャーとワークショップを行うような場所も訪れました。情報も簡単に入手でき、移動も容易になった現代では、旅における「深い体験」がより重要なファクターになっているように感じます。

 

これまで、アートビオトープでも国内外の様々なアーティストや実践家を招聘し、ワークショップを開催してきましたが、多様なホスピタリティを通じて、生きることこそをアートと考え、教育、共育へとリンクしていくことが出来ればと考えています。宮城教育大学の林竹二先生は、「学問とはカタルシスである。吟味がその方法だ」と述べられています。横沢という場所の深化と共に、これからはこのアートビオトープという場そのものが、生命の学問としてのフィールドになり得ると信じています。

 

2020年夏には、隣接する敷地に15棟のスイートヴィラとレストランが誕生します。新しいプロジェクトとして、現在、不動産総合デベロッパーであるタカラレーベン代表取締役の島田和一社長と、そのチームの皆さまと共に取り組んでいるところです。これらの新施設と共に、新しいアートビオトープを「多様な連鎖」「生命の躍動」という生命の原点へとリアルにつながり、内省と実践を繰り返すことで人間の精神を真に「浄化」してくれる場所にしていきたい。これまでこの地で重ねてきた文脈、思想を大切に引き継ぎながら、この新しいメタノイア(視座の転換)をうながす体験空間を、訪れてくださる皆さまと共に育てていければ幸いです。

北山実優 Miyu Kitayama株式会社ニキシモ 代表取締役 株式会社二期リゾート 取締役副社長東京学芸大学教育学部卒業。2006年に「二期リゾート」へ入社。その後、ブランドコミュニケ―ション部部長を経て、現職へ。現在は「アートビオトープ那須」の新たなプロジェクトのディレクションを行っている。 北山実優 Miyu Kitayama株式会社ニキシモ 代表取締役 株式会社二期リゾート 取締役副社長東京学芸大学教育学部卒業。2006年に「二期リゾート」へ入社。その後、ブランドコミュニケ―ション部部長を経て、現職へ。現在は「アートビオトープ那須」の新たなプロジェクトのディレクションを行っている。

Profile

北山実優 Miyu Kitayama

株式会社ニキシモ 代表取締役

株式会社二期リゾート 取締役副社長

株式会社ランゲージ・ティーチング・レボリューションズ 取締役

 

東京学芸大学教育学部卒業。2006年に「二期リゾート」へ入社。その後、ブランドコミュニケ―ション部部長を経て、現職へ。現在は「アートビオトープ那須」の新たなプロジェクトのディレクションを行っている。

 

アートビオトープ那須
https://www.artbiotop.jp/

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