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尾上菊之丞日記~よきことをきく~

2023.11.21

尾上菊之丞、新派「新編 糸桜」に出演!ストレートプレイに心踊った3日間








菊之丞、初めてのストレートプレイ
新派「新編 糸桜」出演しました

 

 

こんにちは。尾上菊之丞です。前回ちらっとお話しさせていただきましたが、10月12日、13日の2日間、演劇ユニット新派の子 錦秋公演「新編 糸桜」に出演しました。舞台経験は長い私ですが、なんとストレートプレイは初。とても刺激的な経験になりました。

 

「新編 糸桜」は、劇団新派の齋藤雅文先生が代表を務める「演劇ユニット 新派の子」の公演。河竹黙阿弥の娘・糸さんの生きざまを活写した、素晴らしい作品です。幕末から明治時代にかけて、歌舞伎の作者として一時代を築いた河竹黙阿弥。日本のシェークスピアとまで称された大作者である父・黙阿弥の没後、その作品、そして作者の家を守るために、生涯独身で通した娘・糸と、糸の養子となる息子・繁俊、その妻・ミツという血の繋がらない者たちが家族になっていくこと、そしてそれぞれの生きる道を探していくという物語です。






糸桜 糸桜

黙阿弥の娘・糸に波乃久里子さん、妻・ミツ役の大和悠河さん、そして新派の皆さまとご一緒の楽しい舞台でした。






齋藤先生の脚本が素晴らしいのです。女だから、尊敬する父のように戯作者になれなかった娘・糸と、歌舞伎役者の家に生まれながら、女性であることによって歌舞伎の舞台に立つことがなかった波乃久里子さん。そのふたりの女性の存在はまさに虚実皮膜 。齋藤先生は、それも踏まえてこの糸さんという女性を、久里子さんのためにあてがきされました。私の演じた繁俊は演劇改良運動に勤しみ、イプセン「人形の家」の翻訳などをしていた書生さんだった青年です。歌舞伎の作者の家に養子に入ることの戸惑い、期待される歌舞伎の作者ではなく早稲田大学で研究者への道を進んでいく決断をするなど、彼の心の成長を、亡き黙阿弥の家に起こる出来事の中に描いていくのです。

 

 

本当に楽しい、素晴らしい経験をさせていただきました。 初めてのことだったのでもちろんドキドキです。でも、お稽古をしていくうちに徐々に本気で芝居をするということに慣れていきました。劇場でお芝居を観ていると、役者のエネルギーが客席にまで伝わってくるのがわかると思いますが、その役者のエネルギーが、同じ舞台で芝居をしている私に直撃するその衝撃たるや。久里子さんのエネルギーが私に直接ぶつけられることの感覚は役者として向き合ったからこそ。普段、振付や演出をしている時に感じるものとは別のものでした。

 

 

お稽古中、齋藤先生からは「もっと開放して、感情を表現してほしい」と言われました。もっとぶっちゃけていいんだとおっしゃるんですが、セリフ、動きを交えてのお芝居は初めてのことだったので、できていたかはわからないですね。自分では感情を出しているつもりでも、開放できていたかはわかりません。 踊りのときのように、感情をお腹におさめて表現していたかもしれない。自分でも「あ、抑えちゃったな」と思うときがありましたから。






菊之丞と波乃久里子さん 菊之丞と波乃久里子さん

糸役の波乃久里子さんとは私が生まれる以前からのお付き合いですが、舞台をご一緒するのは初めて。久里子さんのエネルギーが直接私に向けられる一瞬一瞬が、新鮮で大切な時間でした。





日々の稽古からとても充実して新発見の連続でした。演じれば演じるほど、難しいけれど楽しく、役者というものがいかに魅力的なものかを実感しました。今回は3回公演という短い公演でしたが、もっともっと演じたかったな。本番を積み重ねていって、はじめて感じとれるもの、表現できることがありますから。またぜひ挑戦したいです。

 





楽屋にて 楽屋にて

日本橋公会堂の楽屋にて。とても幸せな2日間でした。





日本舞踊の魅力を届けたい
全国を巡る、日本舞踊キャラバンのこと

 

 

8月から2024年の1月まで、「日本舞踊キャラバン」公演が、全国を駆け巡っています。私も日本舞踊協会の理事として携わっている大切な仕事でもあります。多くの方に日本舞踊の魅力をお届けすべく、11月は高知で、そして12月には沖縄で、私も出演することになっています。

 

 

11月23日の高知公演では、花柳流家元の花柳壽輔さんと「長唄 連獅子」を踊ります。壽輔さんとは過去にも「連獅子」をご一緒したことがありますが、今回は前回とは違う趣向。みなさまもよくご存じの舞踊「連獅子」ですが、実は「勝三郎連獅子」と「正治郎連獅子」という二種類の連獅子があり、今回みなさまにご覧いただくのは「正治郎連獅子」になります。俗に私たちは「勝三郎連獅子」を「かつれん」、「正治郎連獅子」を「しょうれん」と略して呼んでいるんですよ。そもそも連獅子という曲は、河竹黙阿弥が初代花柳壽輔の為に書いた作品です。

 

 

花柳流は特に「勝三郎連獅子」を大切にされていて、過去に花柳壽輔さんと踊ったのは花柳流の「勝三郎連獅子」いわゆる「かつれん」でした。花柳流の連獅子は回転する動きが多く、初めてのお稽古の時にはずいぶん回るものだな!と、尾上流とのちがいを感じた記憶があります。今回は壽輔さんから「尾上流の振付でやってみたい」といううれしいお申し出があり、尾上流の「正治郎連獅子」を2人で上演することにいたしました。




連獅子 連獅子

左は花柳壽輔さん。この時の連獅子は「勝三郎連獅子」、かつれんです!今回も壽輔さんとご一緒できるのを楽しみにしています。



「連獅子」の面白さは、出演する2人の関係性が出るところ。連獅子は実際の親子、師弟で上演することが多い作品です。私も若い頃は、父・墨雪が親獅子、私が仔獅子で何度も務めました。親子で踊るときは、そういう関係性が前面に出てきますし、お客様もより感情移入できるのではないでしょうか。

 

 

今回のように親子ではない場合は、作品自体の主眼や踊り手の技というものが鮮明になるのではないかと思います。だからこそ、研究のしがいや、やりがいがあります。

 

 

私にとって「かつれん」を初めて踊ったときはその違いに最初は驚き、戸惑いました。今思えば、この驚きや戸惑い……違和感が大切だったなと。私の身体は、普段踊っている尾上流の振付に慣れ親しんでいるわけですから、花柳流の振付に戸惑うのは当然です。でも私の身体に普段「ない」ことをやるというこの違和感こそ、私のキャパシティを広げてくれるのだとわかります。尾上流との振りの違い、解釈の違い、どこがポイントなのかをより理解できるようになるからです。とても勉強できる、いい機会なんです。

 

 

舞踊家であれば誰しも「連獅子」という作品には様々な思い入れがあります。それをお互いの流儀の振付で務めることができるのは幸せなことです。ぜひお運びください!










尾上菊之丞 Kikunojo Onoe

 

1976年3月、日本舞踊尾上流三代家元・二代目尾上菊之丞(現墨雪)の長男として生まれる。2歳から父に師事し、1981年(5歳)国立劇場にて「松の緑」で初舞台。1990年(14歳)に尾上青楓の名を許される。2011年8月(34歳)、尾上流四代家元を継承すると同時に、三代目尾上菊之丞を襲名。流儀の舞踊会である「尾上会」「菊寿会」を主宰するとともに、「逸青会」(狂言師茂山逸平氏との二人会)や自身のリサイタルを主宰し、古典はもとより新作創りにも力を注ぎ、様々な作品を発表し続けている。また日本を代表する和太鼓奏者、林英哲氏をはじめとして様々なジャンルのアーティストとのコラボレーションにも積極的に挑戦している。

 

「菊之丞FAN CLUB」へのお問合せは、尾上流公式サイトをご覧ください。

 

◆尾上菊之丞インタビューもご覧ください

尾上流 尾上菊之丞の挑戦の序章~新作歌舞伎「刀剣乱舞」演出まで(前編)

尾上流 尾上菊之丞の挑戦の序章~新作歌舞伎「刀剣乱舞」演出まで(後編)




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