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尾上菊之丞日記~よきことをきく~

2025.5.14

尾上菊之丞日記~「東をどり」は、今年100周年の記念公演を迎えます

宴席で披露する踊りの振りをなぞる、新橋芸者衆。右から小優さん、喜美勇さん、小福さん。

こんにちは。尾上菊之丞です。今回は5月21日から始まる「東をどり」のことをお話したいと思います。「東をどり」は今年で節目となる100回目を迎えます。記念となる百回公演は、新橋の芸者衆が華やかに歌い踊り、さらに 日本各地の花街の芸妓をお招きするという、今までにない華やかな趣向の内容を予定しています。その内容をお伝えしつつ、実際の舞台に立つ3人の新橋芸者衆に、意気込みを語ってもらいます。

 


1925(大正14)年、新橋演舞場の杮(こけら)落としとして始まった「東をどり」



「東をどり」は、新橋演舞場が建てられた1925(大正14)年に、その杮落としとして始まりました。明治維新以降、新橋花柳界は大きな発展を遂げ、芸者衆も自分達の芸を高める努力を重ね、「芸の新橋」と呼ばれるようにまでなりました。料亭のお座敷以外にその芸を発表する場として建てられたのが、新橋演舞場です。1945(昭和20)年の東京大空襲で焼失しましたが、3年後には再建。「東をどり」も復活しました。

 



100回の歴史で受け継がれてきた、新橋東をどりの特別なフィナーレ


新橋の東をどりといえばなんといっても黒紋付で勢揃いするフィナーレです。

東をどりに出演すること、さらにフィナーレの勢揃いに並ぶことは新橋の芸者にとっては特別なことでした。番組の構成もフィナーレの「さわぎ」にむかってどう構成するか、というのが東をどり全体を演出する核となっています。序幕は古典演目、清元「青海波」と長唄「百年三番叟」を日替わりで上演します。二幕目にはこの東をどり百回公演を祝うために、日本全国各地の花街から一流の芸妓の皆さんが駆けつけてくれます。

 


三幕目は新橋恒例、東をどりの「お好み」です。「お好み」とは、その年その年趣向を凝らして小唄、端唄、古典曲から時には民謡に至るまで、さまざまな曲を彩り豊かに楽しんでいただける小曲集です。その「お好み」の最後を飾るのが新橋の「さわぎ」、フィナーレです。近年の東をどりは4日間の開催でしたが今回の記念公演は7日間。昼の会、夜の会と計14回の公演となります。全国からご出演くださる花街は全部で19花街。この19花街の皆さまが日替わりで二幕目の舞台を飾ってくれます。





新橋の芸者もその日によって役代わりで出演しますので、毎日少しづつ違う舞台をお楽しみいただけます。


東をどり 東をどり

新橋芸者衆が黒紋付の引き着で勢ぞろいし、俗曲「さわぎ」で踊る「東をどり」の名物フィナーレ。(昨年の舞台より)

 



札幌から博多まで、日本各地の19の花柳界から100人の踊り手が新橋演舞場に参集




来てくださる花街は、新橋以外の東京の花街も含めると19花街。19花街から約100名の 踊り手、地方も含めると総勢180名を超える大イベントとなります。東をどりの百回公演に花を添えるために各地から皆様がお越しくださり、我々はそれを迎える側として「ようこそ」と感謝しつつも、同時に「新橋としても恥ずかしいものはお見せできない」と身が引き締まる思いです。舞台を観てくださるお客様が、それぞれの花街の特徴を感じていただきながら、「やっぱり新橋はすっきりしてるなぁ」と思っていただけるよう、良い意味で張りをもって舞台を務めたいと思います。



尾上菊之丞さん 尾上菊之丞さん

「お迎えする側として感謝しつつ、舞台の上では負けていられないとの思いです」と菊之丞さん。


新橋芸者が登場する三幕目は、新橋界隈の「橋」にちなんだ演目を披露



銀座にあった「新橋」という橋からこの街は始まりました。今回の三幕目のお好みの趣向はこうした「橋」にまつわる物語です。今回100回と言うことで、101回目への橋わたし、次世代への橋わたし、と言う意味を込めて、橋を巡る物語にいたしました。この100回までの東をどりを、つくり続けてくれた先人たちへの感謝と、 これからも東をどりが続いていく願いをテーマにした作品を予定しています。



「東をどり」100回記念公演ということは新橋演舞場100周年ということでもありますので、新橋界隈を舞台とした内容は、100周年に相応しい演目なのではと考えています。本番を1カ月後に控え、芸者衆に振りを渡しながら、物語の背景となる新橋花柳界の香りや雰囲気を実感しています。


「子どもの頃の一番の遊び相手は、人力車の車夫さんたちでした」




たとえば、この界隈を平成の最初くらいまで実際に走っていた人力車も、新橋花柳界の歴史のひとつです。尾上流の稽古場があるビルの隣は、以前は新橋の第二見番でした。一階には日吉組という人力車の詰め所が入っていて、いつも車夫さんたちがいました。私の小さい頃の一番の遊び相手は、この車夫さんたちです。遊んでもらっていても、仕事の呼び出しがかかるといなくなってしまい、私は待ちぼうけ、ということもよくありました。



乗るのは主に芸者衆です。新橋界隈は意外に広いですから、置屋さんから髪結いさんへ、あるいは料亭さんや劇場に行く場合も、移動は人力車が便利です。芸者の拵えをして、長い距離を歩くのはちょっと大変です。時には、歌舞伎座から新橋演舞場へと、舞台衣装を着けたままの役者さんを乗せることもありました。私が子どもの頃は車夫さんは10人以上いましたね。



東をどり 東をどり

2025年版の「新橋東をどり」のリーフレットを手に、「橋づくし」の背景を話す菊之丞さん。



私が初めて「東をどり」の「お好み」の振付をした第88回の「東をどり」では、舞台に人力車を登場させたりもしました。芸者衆を乗せて走る人力車の姿は、私にとっては、それほどまでに新橋花柳界を象徴する風景のひとつだったのです。一方通行に立つ道路標識には、「人力車を除く」という一文があったぐらいですよ。



新橋の花柳界が重ねてきた歴史には、こうした人力車のような物語がたくさんあります。そのひとつひとつは小さなことかもしれません。でもその積み重ねと、芸を極めるという心意気が新橋花柳界ならではの独特の雰囲気を造り上げてきたのだと思います。100回目の今年も、そして来年から始まる101回目の新たな「東をどり」でも、こうした独特の雰囲気を大切にしていきたいと考えています。

 


日本各地の花柳界の踊りを拝見できるのが、私自身も楽しみです


日本各地で花街が減りつつある今、100回を機にこうした催しが開かれるのは、私たちにとってもとてもありがたいことです。開催にいたるまで尽力していただいた方々に、深く感謝申し上げます。いろいろな花柳界の踊りを拝見することができるとてもよい機会ですので、私自身もとても楽しみにしていますし、お客様の皆様も、それぞれの花柳界の踊りの違いなどに直接触れていただければ、と思います。



新橋芸者喜美勇さん 新橋芸者喜美勇さん

さきほど菊之丞先生がおっしゃっていた人力車ですが、お願いすると呉服屋さんから着物を届けてくださったり、細かな買い物のお使いに行っていただいたりと、とてもあり難い存在でした。銀座の老舗のお寿司屋さんなどは、人力車でそのままの乗りつけることができるような造りになっていたりしましたよ。髪を結っていますから、天井の低いタクシーより、人力車の方が実際に乗りやすく便利だった、という一面もありました。懐かしいですね。(喜美勇さん)

 



「大勢の人が大切にしてきた舞台なんだと、毎回実感しています」



「東をどり」に出させていただくと、毎回「ああ、多くの方々が大切にしてきた舞台なんだな」と心から思います。そんな舞台だからこそ、なおさら大切に努めなければならないと、身が引き締まる思いです。お客様が間近にいらっしゃるお座敷と、大勢の方の前で踊る演舞場のような舞台とでは、緊張感の種類が違うような気がします。


新橋芸者 新橋芸者

演舞場の舞台の場合、空間の広さや大きさ、奥行きを感じ取って、踊りを大きく見せるようにしていますが、なかなか難しく、お稽古をしていても気が付くと小さくなっています。本番までお稽古を積み重ね、100回記念公演に恥じぬ舞台をお見せできるよう頑張ります。

私は今年で12年目ですが、じつはお披露目の際には人力車に乗せていただき、ご挨拶に回りました。ちょうどその頃が人力車の最後の時代でした。今ではよい思い出です。(小優さん)



私は大学生のころから歌舞伎が好きで、歌舞伎座に通ううちに「東をどり」や新橋芸者、そして尾上流という踊りの流派があることを知り、この世界に入りました。とりわけ「東をどり」には、ぜひ出てみたいと願っていましたので、10年前の第90回に初めて出させていただいた時はとても感激しました。またその時に、この世界で10年頑張って100回目に出ることができれば、と思っていましたので、その念願がかない嬉しいのと同時に、ありがたいと言いますか、とても栄誉なことだと感謝しています。



記念すべき100回目を迎えた「東をどり」

東をどりポスター 東をどりポスター

百回記念公演 第100回東をどり 概要

日程:令和7年5月21日(水)~27日(火)7日間 全14公演

昼の回 12:30開演―14:10終演
夕の回 16:00開演―17:40終演

序幕

21日 23日 25日 27日 : 清元「青海波」

22日 24日 26日 : 長唄「百年三番叟」

二幕:各地花街の出演日

5月21日(水)祇園甲部・赤坂

5月22日(木)浅草・上七軒・神楽坂

5月23日(金)名古屋・祇園東・岐阜

5月24日(土)金沢三茶屋街(ひがし・にし・主計町)・長崎

5月25日(日)博多・宮川町・新潟

5月26日(月)向島・札幌・先斗町

5月27日(火)東京五花街(赤坂・浅草・神楽坂・向島・芳町)

東をどりの公式サイトはこちらをクリック

5月21日から27日までの7日間、「東をどり」が今年も開幕でされます。記念すべき100回目は、日本各地の花柳界から踊り手参集。これまでに例のない華やかな会となります。尾上流家元・尾上菊之丞は、新橋芸者が登場する3幕目の演出と振付けを担当します。芝居前や幕間も新橋の料亭のお弁当(要予約)、日本酒やシャンパンのブースなど美食の愉しみも。ひときわ華やいだ新橋演舞場へ、お越しください。




取材/写真協力:東京新橋組合

Text  by Masao Sakurai(Office Clover)

Photography by Natsuko Okada (Studio Mug)





尾上菊之丞 Kikunojo Onoe

■尾上流四代家元 三代目尾上菊之丞 (おのえ きくのじょう)

1976年生まれ。2歳から父に師事し5歳で初舞台、2011年尾上流四代家元を継承し、三代目尾上菊之丞を襲名。自身のリサイタル「尾上菊之丞の会」、狂言師茂山逸平氏との「逸青会」を主催。新作の創作にも力を注ぎ、様々な作品を発表。新作歌舞伎や花街舞踊、宝塚歌劇団、OSK日本歌劇団やアイススケート「氷艶」「Luxe」など様々なジャンルの演出・振付を手掛ける。京都芸術大学非常勤講師/公益社団法人日本舞踊協会理事

 

「菊之丞FAN CLUB」へのお問合せは、尾上流公式サイトをご覧ください。










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