そこに行けばある、極上のネタの数々
中目黒の名店「鮨 尚充」とは
予約困難な店として知られる「鮨 尚充(すし たかみつ)」。中目黒の喧騒が嘘のような静かな路地裏に店を開いたのは、2011年5月のこと。大将の安田尚充は、弱冠15歳の若さで自由が丘の名店「鮨幸」に入り、30歳で独立するまで15年間、修業を重ねた。中目黒を選んだのは、長年可愛がってくれた常連に足を運んでもらえるようにとの思いからだ。
凛としたその佇まいは名店の風格十分。カウンターにはルイ・ヴィトンのアタッシュケースが4つ並べられ、客の目の前には有名ブランドのイメージカラーを模したカラフルな箸ケースが置かれている。高級店にしてはかなりユニークな試みではあるが、鮨を食べ始めるとまったく違和感がなくなる。圧倒的な鮨の旨さの前に、そういった遊びも許せてしまうのだ。


艶やかな銀色に光るコハダを、いい塩梅のシャリが引き立てる。
産地や旬を見極めた極上のネタだけを使い、丁寧な江戸前の仕事がほどこされた洗練された鮨。この日は、三宅島の本マグロや佐賀の小肌、5月からは近海ものの定置網漁のマグロ、ウニも美味しくなる。ネタは常時25、6種類を用意している。1日6回シャリを炊き、いつ来てもベストな加減のシャリを提供できるのもこだわりのひとつだ。できるだけ多くの種類のネタを楽しんでもらえるように、やや硬めのシャリを小さく握る。酢は3種類を使い分ける。例えば、マグロは1年を通して味わいが変わるので、脂の具合によってその日の赤酢の配合を変えている。
真骨頂と言えるのが「ウニ」。至高のウニを求めて足繁く通う者も多い。見事なバフンウニはクリーミーで濃厚、ムラサキウニはあっさりと上品な甘さだ。何軒ものウニ専門店から取り寄せた、日本で、いや世界で一番といえる極上のウニのケースがカウンターに並ぶさまは圧巻だ。ウニで有名な水産加工会社は、この店のためだけに選び抜いたウニを、特別なゴールドの箱に詰めてくれる。1日に何箱も作れるものではない。それこそが信頼関係の証なのだ。


見事なウニのケースがずらりと並ぶ。季節によって変わる、さまざまなウニの食べ比べが可能。
仕入れには必ず自分自身で行く。修業時代の取引先とは異なり、自身の店を持ってから開拓した仲買ばかりだ。自ら足を運ぶからこそ、上質のネタを手に入れられる。いいものを仕入れるには、密なコミュニケーションと信頼関係が必須だという。
いつ訪れても最高に満足させてくれる。常連客が誰かを誘い、魅了された連れがまた誰かを伴い、数珠繋ぎのようにファンが増えて行く。お客さまには存分に楽しんでほしいと、できるかぎりのパフォーマンスをする。一見奇をてらったように思えるしつらえも、安田のユーモアとセンスの証。固定観念にとらわれず、自由な発想で、とにかく良いものを追求する。ただ、何よりも抜きんでた鮨の旨さが最高のパフォーマンスなのだ。


街の喧騒が嘘のような静かで落ち着いた店内は、L字型のカウンターに10席のみ。
鮨 尚充(すし たかみつ)
東京都目黒区青葉台1-28-2 EXA 1F
03-3712-6999
営業時間/18:00~24:00
定休日/日曜日・祝日の月曜日
予算/28,000円(税別)
(敬称略)
Photography by Masatomo Moriyama
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