1. 新たなものづくりのプラットフォームを築くデザイナー 柳原照弘

Lounge

Premium Salon

柳原照弘が繋ぐ温かな人の輪

2019.11.7

1. 新たなものづくりのプラットフォームを築くデザイナー 柳原照弘

デザイナーにもいろいろなタイプがいる。しかし、自らデザインするだけでなく、デザイナーと作り手、作り手と使い手を繋ぎ、新たな価値を生み出すことにかけて、柳原照弘ほど長けている人はいないのではないか。これまでも彼は、日本の家具メーカーであるカリモクの職人が培ってきた技術と国内外のデザイナーの先進的なアイディアを融合させた「KARIMOKU NEW STANDARD」や、新たなデザインアプローチによって有田焼の未来を切り拓くべく立ち上げられた「1616/arita japan」「2016/ 」などを、息の長いブランドへと成長させてきた。彼が大切にするのは、人と人との繋がり。彼を中心に、クリエイティブで温かな人の輪が波紋のように広がっていく。

 

談・柳原照弘

2019年2月に東京・日本橋浜町にオープンしたHAMACHO HOTEL。その中の一室、TOKYO CRAFT ROOMの設計とクリエイティブディレクションを手がけています。ここは優れた日本の作り手と、国内外のデザイナーとのコラボレーションによる、新しいものづくりのプラットフォーム。両者の出会いから生まれたものは、恒久的にこの部屋に置かれ、人々の目に触れ、使われ続けるのです。

 

第一弾としてこの部屋に納入されたのが、オランダのデザインスタジオ・ディー・イントゥイティファブリックと、美濃加茂の木工家・川合優がディレクションを行うSOMAとのコラボレーションによるキャビネット。そして、スウェーデンのデザイナーで陶芸家でもあるインゲヤード・ローマンが、有田の窯元である香蘭社と組んで製作した磁器のカップでした。

ディー・イントゥイティファブリックと、美濃加茂の木工家・川合優がディレクションを行うSOMAとのコラボレーションによるキャビネット(写真中央 ディー・イントゥイティファブリックと、美濃加茂の木工家・川合優がディレクションを行うSOMAとのコラボレーションによるキャビネット(写真中央

ディー・イントゥイティファブリックと、美濃加茂の木工家・川合優がディレクションを行うSOMAとのコラボレーションによるキャビネット(写真中央)。Photography by momoko Japan

有田の香蘭社とインゲヤード・ローマンのコラボレーションによる磁器のカップ 有田の香蘭社とインゲヤード・ローマンのコラボレーションによる磁器のカップ

有田の香蘭社とインゲヤード・ローマンのコラボレーションによる磁器のカップ。


そしてこの秋、第二弾としてスウェーデンの建築デザインユニット、クラーソン・コイヴィスト・ルーネ(CKR)と、指物師の高橋雄二が広島で主宰する家具工房「さしものかぐたかはし」とが手がけたテーブルとベンチ、スツールが完成しました。

 

僕がものづくりの現場に紹介するデザイナーは、基本的には仲のいい人達。 人間性が良くて信頼できる、言葉が通じなくてもチームとしてプロジェクトに取り組むことができる人にしか声をかけません。例えば今回お願いしたCKRとは、2002年に僕が最初にストックホルムファニチャーフェアに出した時に、展示を見て声をかけてくれた時からの仲。エーロ(・コイヴィスト)は自分がデザインディレクターを務めていたスウェーデンの家具メーカー、OFFECCT(オフェクト)にも僕を紹介してくれました。

 

CKRのことは、彼らが手がけたインゲヤードのアトリエを写真集で見て、いいなあと思っていたんです。彼らのデザインは単にミニマムじゃなく、どこか日本的なディテールの感覚を持っているのが魅力。彼らはいつ会っても「テルはいいデザイナーだから」と言って、いろんな人に紹介してくれる。北欧でさまざまな繋がりができたのは、彼らのおかげです。

スウェーデンの家具メーカーOFFECCT(オフェクト)で柳原がデザインしたソファ。 スウェーデンの家具メーカーOFFECCT(オフェクト)で柳原がデザインしたソファ。

スウェーデンの家具メーカーOFFECCT(オフェクト)で柳原がデザインしたソファ。


その時に僕が展示した作品にはたくさんの反響をいただいて、多くのメーカーが声をかけてくださいました。ただ、オフェクトは「デザインはすごくいいけれど、これには自分たちのフィロソフィーが入っていないから商品化することはできない」と。でもそれから2年くらい僕のデザインを見続けてくれて、最終的に「チームとして一緒にプロジェクトを行いたい」と言ってくれました。

 

「これから私たちはアジアにも進出する。オフェクト初の日本人デザイナーとして、ぜひ一緒に成長していこう」と。だから僕も、自分がディレクターを務めるプロジェクトでは「この人となら仕事ができる」という関係性をベースにしていきたいな、と思うようになったんです。最初に仕事をした海外メーカーがオフェクトじゃなかったら、全然違う道を歩んでいたかもしれませんね。

ミラノデザインウィークで作品を発表した「KARIMOKU NEW STANDARD」の会場(2101年)。 ミラノデザインウィークで作品を発表した「KARIMOKU NEW STANDARD」の会場(2101年)。

ミラノデザインウィークで作品を発表した「KARIMOKU NEW STANDARD」の会場(2010年)。Photography by Shin Suzuki


依頼されたプロジェクトについて、デザインを全部自分でやれば、金銭的には大きなビジネスになる。でも、自分でやると、僕のサイズにとどまってしまいます。たとえば、有田焼創業400年の2016年に立ち上げられたグローバルブランド「2016/」では16の窯元と商社、世界8か国16組のデザイナーが手を組むことで、未来に繋がるプロジェクトになりました。

2016年に立ち上げた有田のグローバルブランド「2016/ 」のブランドデビューのエキシビションをミラノで開催した時の会場風景。 2016年に立ち上げた有田のグローバルブランド「2016/ 」のブランドデビューのエキシビションをミラノで開催した時の会場風景。

2016年に立ち上げた有田のグローバルブランド「2016/ 」のブランドデビューのエキシビションをミラノで開催した時の会場風景。Photography by Takumi Ota


僕は一度仕事をした相手とは、その時限りではなく、ずっと付き合っていきたい。前出のインゲヤードや、あとはアルヴァ・アアルトなどもそうですが、北欧にはそういう考え方で長く同じメーカーと仕事をし続ける人が多いですね。日本でも今後、どんどんそういう人が増えていったらいいな、と思っています。

 

また、伝統工芸の産地では新しいデザインをやることに批判的な意見を持つ人もいますが、たとえば有田焼で言えば、同じデザインのスタイルが続くのはだいたい10年、長くて50年くらい。世界中の人がオランダ東インド会社を通じて、最先端のインダストリアルシティである有田にどんどん新しいものを求めていったんです。それで「僕らがやっていることは、実は一番伝統を守っていることになるんだ」と腑に落ちた。これからも、人と人との関係の中で、新しいことに挑戦していきたいですね。

 

TOKYO CRAFT ROOM
www.tokyocraftroom.jp
*ゲストが宿泊していない時は、レセプションに声を掛ければ見学可能。

 

→次回はCKR(デザイナー)です。
(敬称略)

Profile

柳原照弘 Teruhiro Yanagihara
デザイナー
1976年生まれ。デザイナー。2002年自身のスタジオを設立。デザインする状況をデザインするという考えのもと、国やジャンルの境界を超えたプロジェクトを手がける。OFFECCT(スウェーデン)、PALLUCCO(イタリア)Kvadrat(デンマーク)、Skagerk(デンマーク)、SERGIO ROSSI(イタリア)等、海外ブランドにデザインを提供。クリエイティブディレクターとして KARIMOKU NEW STANDARD、1616/ arita japan、佐賀県とオランダとの共同プロジェクト2016/ 等の国際的なブランドの立ち上げに参加。THREE、FIVEISM by THREE、JINS、竹尾淀屋橋見本帖等、店舗設計も多数手がける。作品所蔵:フランス国立造形芸術センター(CNAP)、Stedelijk Museum Amsterdam(アムステルダム現代美術館)等。共著に「リアル・アノニマスデザイン」(学芸出版社)、「ゼロ年代11人のデザイン作法」(六耀社)等。

http://teruhiroyanagihara.jp/

 

 

 

Photography by Yoshiaki Tsutsui
Text by Shiyo Yamashita

Premium Salon

ページの先頭へ