RIN&CO.のカラフルな越前硬漆 刷毛目の器。福井県、福井大学との産学官の連携によって堅い塗膜を実現した食器洗い機にも耐えうる漆器。手塗りによる刷毛目を活かしたデザイン。

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千石あやが挑む「工芸を元気にする」こと

2020.3.10

5. 新発想で時代を生き抜く。新しい漆器で北陸を元気にする漆琳堂

RIN&CO.のカラフルな越前硬漆 刷毛目の器。福井県、福井大学との産学官の連携によって堅い塗膜を実現した食器洗い機にも耐えうる漆器。手塗りによる刷毛目を活かしたデザイン。

山に囲まれた街・福井県鯖江市は、日本最古の漆器の産地として知られている。曇天が多いこの地は、 全国でも有数の湿潤な地域。雪が降り積もる冬の厳しい寒さは、 漆が硬化するには理想的な環境だと言われている。この地で1793年に創業した漆琳堂の8代目・内田徹は、伝統技術を継承しながらも、よりカジュアルに越前漆器の魅力を伝えようとしている。「日常的に漆を使って欲しい」という想いから、これまで「食洗機で洗える漆椀」や色合い豊かな漆椀を市場に投入してきた。さらに2020年1月には、北陸の独自の風土によって生み出されたものづくりを総合的に扱う新ブランド「RIN&CO.」を立ち上げた。越前漆器だけでなく、和紙、木工、焼き物、刃物、繊維など、北陸のさまざまな工芸品を扱うブランドを設立したその背景には、「北陸の産地を元気にする」という内田の強い覚悟があった。

 

談:内田徹

 

漆というと、全国的には輪島塗が有名ですが、生産量や職人の数では、越前漆器が全国トップクラスだということはあまり知られていません。これまで私たちは、伝統的な越前漆器を作ってきました。例えば、料亭さんで使われているような、業務用の高級漆器です。それは今も私たちの事業のメインなのですが、10年ほど前より、一般のご家庭に向けて何か提案できないかと模索するようになりました。その結果、色漆を使ったポップな漆器を作るなどの新しい取り組みをスタートさせました。すると、そのような取り組みに興味を持った若い人が、私たちの仲間になり、少しずつ塗師として活躍をしはじめています。

職人の数が減少している背景には、採用募集がないという現実がある。漆琳堂では、大学卒業後の若手の採用を行っている。 職人の数が減少している背景には、採用募集がないという現実がある。漆琳堂では、大学卒業後の若手の採用を行っている。

職人の数が減少している背景には、採用募集がないという現実がある。漆琳堂では、大学卒業後の若手の採用を行っている。

以前は、徒弟制度のように「見て覚える」のが当たり前の世界でしたが、今の若者たちは、スマホ世代。仕事中でも肌身離さずスマホを持っています。そんな若者たちが塗りを習得するため、スマホで動画撮影をさせています。若い塗師たちは、その動画を何度も見て、その技術を覚えていくわけですから、時代は大きく変わりました。でも、それが一番早いし分かりやすいのです。昔のように一人前になるまで、十年も待てませんからね。

福井県鯖江市にある漆琳堂の直営店。ここはショップ、ショールーム、ワークショップがあり、工房見学も行っている。 福井県鯖江市にある漆琳堂の直営店。ここはショップ、ショールーム、ワークショップがあり、工房見学も行っている。

福井県鯖江市にある漆琳堂の直営店。ここはショップ、ショールーム、ワークショップがあり、工房見学も行っている。

漆琳堂は、これまで227年、北陸の地でものづくりを続けてきた漆器屋ですので、周りの方からは、よく歴史や伝統の重みについて質問されます。でも、実は私自身は、あまり重みを感じていません。それよりも、時代とともに、変化していかなければならないと感じています。これまでの漆琳堂の歴史を振り返ってみても、それぞれの代で微妙にやっていることが異なっていることに気づかされます。時代が変わり、流通が変わり、売る相手が変わり、求められるものが変わっているのです。特に最近では、お客さん目線でものを作ることが重要になってきています。

漆琳堂の直営店にあるショップ。自社ブランド「aisomo cosomo」や「お椀や うちだ」など、漆琳堂の全アイテムを実際に手に触れることができる。 漆琳堂の直営店にあるショップ。自社ブランド「aisomo cosomo」や「お椀や うちだ」など、漆琳堂の全アイテムを実際に手に触れることができる。

漆琳堂の直営店にあるショップ。自社ブランド「aisomo cosomo」や「お椀や うちだ」など、漆琳堂の全アイテムを実際に手に触れることができる。


私たちも世の中のニーズに合うよう、大学や自治体と連携し、食洗機で洗える漆器をつくりました。120度の熱にも耐えられて、3年間毎日使えるという基準をクリアする商品は、瞬く間にヒットしました。このように、技術を継承しながらも、時代にあったものづくりは常に心がけています。

 

一方で技術の伝承は変わらない、変えてはいけない点も多々あります。私たちの仕事は、朝の段取り次第で、1日が決まると言っても過言ではありません。毎朝、2時間ほどかけて塗る準備をします。漆を整えて、漉して、ハケを手入れします。特にハケは、放っておくとカチカチに固まってしまうので、それを柔らかくするんですね。そのあと身の回りを掃除すると、どんなに早くても塗り始めるのは9時ごろになります。時が経っても変わらぬことと、時の経過とともに変わっていくこと。これらが程よく混ざり合いながら、ものづくりをしています。

RIN&CO.は北陸の伝統技術や職人によってモノづくりをしている新ブランド。現在は越前硬漆(えちぜんかたうるし)の器、白九谷の器、越前木工の盆、越前和紙のポチ袋などの商品が揃う。 RIN&CO.は北陸の伝統技術や職人によってモノづくりをしている新ブランド。現在は越前硬漆(えちぜんかたうるし)の器、白九谷の器、越前木工の盆、越前和紙のポチ袋などの商品が揃う。

RIN&CO.は北陸の伝統技術や職人によってモノづくりをしている新ブランド。現在は越前硬漆(えちぜんかたうるし)の器、白九谷の器、越前木工の盆、越前和紙のポチ袋などの商品が揃う。

さらに、私たちは2020年1月に「RIN & CO.」というブランドを新たに立ち上げました。「RIN」は「Reason In Northland(北陸の地である理由)」の頭文字、「CO.」は「産地や地域の仲間たち」という意味が込められています。「RIN & CO.」を構成する商品のメインは越前硬漆(えちぜんかたうるし)の器ですが、他にも木目が美しい越前木工の盆や、昔から漆の保存に使われてきた無地の白い九谷焼、1500年もの歴史を持つ越前和紙でつくったポチ袋など、様々な商品をご紹介しています。

 

漆琳堂はこれまで長い間、北陸でものづくりを続けてきた企業です。だからこそ、産地全体を盛り上げ、バックアップしていきたいと思っています。北陸にはまだまだ素晴らしいつくり手さんたちがたくさんいます。今後は、「RIN&CO.」をきっかけに、多くの人に北陸のものづくりを知ってもらう機会を増やしていきたいと思っています。

 

(敬称略)

内田徹 Toru Uchida 漆琳堂 代表取締役社長 1976年生まれ。1793年創業の越前漆器メーカー漆琳堂の8代目。主に丸物(お椀、皿類)の下地と上塗りを得意とする。15年に渡り、祖父と父の元、漆器制作の下地と上塗りの修業をし、木地から上塗りまで一定の厚さに仕上げて塗膜を均一にする技術を習得。2015年より福井大学にて産学官連携本部に入部。漆の研究を県と大学とともに行い、耐熱性の高い漆を開発し、「食洗機で洗える漆椀」の開発につなげる。経済産業省「中小企業がんばる企業300社」に選出。技術継承のために若手職人を雇用し、地域産業観光のリーダーとして活躍。2013年、産地史上最年少で「経済産業大臣指定伝統的工芸品越前漆器塗り部門伝統工芸士」認定を受ける。 内田徹 Toru Uchida 漆琳堂 代表取締役社長 1976年生まれ。1793年創業の越前漆器メーカー漆琳堂の8代目。主に丸物(お椀、皿類)の下地と上塗りを得意とする。15年に渡り、祖父と父の元、漆器制作の下地と上塗りの修業をし、木地から上塗りまで一定の厚さに仕上げて塗膜を均一にする技術を習得。2015年より福井大学にて産学官連携本部に入部。漆の研究を県と大学とともに行い、耐熱性の高い漆を開発し、「食洗機で洗える漆椀」の開発につなげる。経済産業省「中小企業がんばる企業300社」に選出。技術継承のために若手職人を雇用し、地域産業観光のリーダーとして活躍。2013年、産地史上最年少で「経済産業大臣指定伝統的工芸品越前漆器塗り部門伝統工芸士」認定を受ける。

内田徹 Toru Uchida

漆琳堂 代表取締役社長

1976年生まれ。1793年創業の越前漆器メーカー漆琳堂の8代目。主に丸物(お椀、皿類)の下地と上塗りを得意とする。15年に渡り、祖父と父の元、漆器制作の下地と上塗りの修業をし、木地から上塗りまで一定の厚さに仕上げて塗膜を均一にする技術を習得。2015年より福井大学にて産学官連携本部に入部。漆の研究を県と大学とともに行い、耐熱性の高い漆を開発し、「食洗機で洗える漆椀」の開発につなげる。経済産業省「中小企業がんばる企業300社」に選出。技術継承のために若手職人を雇用し、地域産業観光のリーダーとして活躍。2013年、産地史上最年少で「経済産業大臣指定伝統的工芸品越前漆器塗り部門伝統工芸士」認定を受ける。

Text by Taisuke Segawa

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