帯「纐纈織胡蝶花錦(こうけちおりこちょうはなにしき)」(龍村美術織物) 

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令和にまとう初春のきもの 逸品選

2020.1.27

12.豊かなイマジネーションから生まれた、創意工夫と芸術性に富む「新しい織物」

帯「纐纈織胡蝶花錦(こうけちおりこちょうはなにしき)」(龍村美術織物)

成人式や婚礼などをはじめ、晴れの場に欠かすことのできないきものや帯。美術織物の至高に名を連ね、多くの女流作家や女優に愛されながら、令和の現代においてもなお新鮮で格調高い龍村美術織物の粋美を、その礎を築いた初代龍村平藏の精神とともに紹介する。

初代平藏の溢れ出す想像力によって生まれた新しい表現

初代龍村平藏(写真下)は、ふたつの世界を織物に託した。ひとつは前回でも紹介した古い織物の復元、そしてもうひとつが創意工夫を凝らし、新しい織物を作ることだった。この新しい織物の創作でまず平藏が着目したのは従来の織物にはなかった「立体感」だ。

 

もう少し詳しく解説すると初代平藏が、織物を革新するにあたって最優先に考えたことは、平面的に構成される織物の表面に、従来の常識を超えた立体性を実現することであった。

あふれ出すイマジネーションによって新しい織物を次々と作り出したことは、平藏がプロデューサーとして高く評価されているひとつのゆえんである。そうして高い技術をもって、多くの特許と実用新案を取得した。なかでも、平藏の理想としたとされる織物が絞り染を織りで表現した「纐纈(こうけち)織」だ。

 

纐纈織は脹れ織(ふくれおり)の一種として大正二年に実用新案権を取得したもので、初代の理想がもっとも明瞭に具現化された技法といえる。写真上の袋帯「纐纈織胡蝶花錦(こうけちおりこちょうはなにしき)もそのひとつ。織りの仕組みを端的にいえば地と文様の経(たて)・緯(よこ)ともに強く撚(よ)りを掛けた糸を用い、織り上がった後に蒸熱処理を施して強撚糸を収縮させる。すると強撚糸が収縮して表面に凹凸が生じ、まるで絞り染のようなニュアンスが布に表れるのだ。こちらの帯は、纐纈織の織り味の明るい地に吉祥の意味を持つ、蝶と百花の王といわれる牡丹とを麗らかに取り合わせた華やいだ作品だ。


初代龍村平藏(1876〜1962)。1956年日本芸術院恩賜賞受賞。1958年紫綬褒章受章。 初代龍村平藏(1876〜1962)。1956年日本芸術院恩賜賞受賞。1958年紫綬褒章受章。

初代龍村平藏(1876〜1962)。1956年日本芸術院恩賜賞受賞。1958年紫綬褒章受章。

Text by Akira Tanaka

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