子供から大人への通過儀礼として着る振袖に対して、花嫁のまとう引き振袖は未婚から既婚への通過儀礼という人生行事を祝う晴着。その着姿から「お引きずり」とも呼ばれる。令和の寿ぎにふさわしい、格調や風格を持つ大人の女性の振袖を、その意匠表現とともに紹介する。
瑞祥の鳥をきものに写しこれからの幸せを願う
花嫁にとって、これから夫婦で過ごすことになる長い人生、良い時も苦しい時もふたりで仲良く歩んでいきたいと思うのは当然であろう。そうした願いを祝儀性の高い鳥文様に託し、若やぎ、華やぎのある赤の地色に表した花嫁振袖二点をご紹介する。
日本の瑞鳥の代表である鶴を主題にしたきもの(左)や雌雄仲睦まじい鴛鴦をモチーフにしたきもの(右)は、慶事の晴着として愛されてきた
中国の瑞鳥(ずいちょう。めでたいことが起こる前兆とされる鳥)の代表が鳳凰だとするならば、日本の瑞鳥の代表と聞いて思い浮かぶのは鶴だろう。写真上の「赤紋付波翔鶴」はその鶴を主題にした一枚だ。古くから神鳥と考えられてきた鶴は「鶴は千年、亀は万年」と言われるように長生きを象徴する鳥として称えられてきた。気品高いその姿、凛とした立ち姿は吉祥の文様として意匠化され、慶事の晴着の模様として昔より愛されている。この振袖は、鶴がはばたき、飛ぶ姿を文様化している飛鶴文様である。鮮やかな紅地に、金を中心に控えめな色数で大洋の波の上を鶴が飛翔する様子が、古典調かつ格調高い表現で写されている。
明るい赤地に水鳥と桜を取り合わせ艶やかに
さて、仲の良い夫婦を「おしどり夫婦」と言うが、写真下の振袖「赤地桜鴛鴦流水」に登場する鳥こそが「鴛鴦(おしどり。または、えんおうとも呼ぶ)」だ。鴛鴦は姿かたちや羽根が美しく、雌雄が常に一緒で仲睦まじく見えることから、おめでたい留袖や訪問着の題材としてはもちろん、古典絵画や詩歌にもしばしば登場する。この花嫁振袖は明るい赤地に、水を意匠化した流水文様にゆったりと遊ぶたくさんの鴛鴦そして、満開に咲く桜を取り合わせた麗らかな印象が醸し出された一枚である。
振袖:ハツコ エンドウ ウェディングス 銀座店
レンタル価格:写真上/参考商品 写真下/400,000円(税別/編集部調べ)
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