神社仏閣の参道を思わせる石段。この最上部には石組みの円形広場がある。神社仏閣の参道を思わせる石段。この最上部には石組みの円形広場がある。

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2021.3.1

中村孝則/アマン京都 美食と古代遺跡のような京都の密やかな安息の場所

神社仏閣の参道を思わせる石段。この最上部には石組みの円形広場がある。

忘れ去られていた古代遺跡のような庭園

文・中村孝則

 

この遺跡のような庭園に立った時、“忘れ去られていた”という表現は、誇張でもなんでもないと、私はあらためて思うのだった。

 

アマン京都は、京都の北の左大文字山から続く鷲峯三山の麓にある。金閣寺が徒歩圏内のこの鷲峯地区は、江戸初期の琳派の創始者である本阿弥光悦が居を構え、京都でも歴史的に重要なエリアであるが、なんといっても特筆すべきはその広大な遺跡のような庭園である。アマン京都の敷地総面積は約2万4000平方メートルというが、そのまわりの自然林を含めると約32万平方メートルにも及ぶという。しかし、この庭園に分入ればすぐにわかることだが、ただあるがままの自然ではない。ここはかつて、西陣織で巨万の富を築いた織物問屋の前所有者がおおよそ40年もの歳月をかけて作った石畳や石積みで構成された壮大な庭園で、かつては「紙屋川庭園」と呼ばれていた。


苔むした石組みや生い茂る木々は、まるでアンコールワットを彷彿とさせる。 苔むした石組みや生い茂る木々は、まるでアンコールワットを彷彿とさせる。

苔むした石組みや生い茂る木々は、まるでアンコールワットを彷彿とさせる。


その前所有者は、ここの織物美術館を作る夢を持っていたそうだが、いつしか歴史のなかに忘れさられかけていた。アマン京都は、その遺跡のような庭園の環境をそのまま受け継ぎ、その自然環境に溶け込むように24室のスイートと、2室のパビリオンを構成している。世界に数ある珠玉のアマンのリゾートのなかでも、歴史的価値という意味では突出した魅力をもっているのではないかと、私は思うのである。

 

いわゆるアマンジャンキーといったコアなファンはもちろんだが、遺跡や石の研究者やマニア、庭園好きであれば、必ずや魅了されるに違いない。私が感服したのは、その前オーナーの、石にかけた並々ならぬ情熱と独特の美意識である。しかも、こんな巨石群をどうやって築いたのか。英国のストーンヘンジやアンコールワット、あるいはイースター島のモアイ像も顔負けのスケール感と謎かけを、訪れる者に与えるはずである。

 

本来であれば、ここだけで観光スポットになるだけの価値を持つだろうこの庭園が、プライベートの庭というのは、驚きである。知られざる京都の自然環境の豊かさ、そこに棲む人たちの美意識の片鱗を知る上でも、死ぬ前に訪れる価値があると、私は思うのである。


ガストロノミーの新たな試み

 

個人的に、このアマン京都の魅力を加えるのなら、食のポテンシャルの高さだろう。施設内にある「ザ・リビング パビリオン by アマン」の総料理長の鳥居健太郎の軽やかな料理は、イノベーティブな表現を持ち込みながらも、京都の食材や季節感で五臓を楽しませてくれるはずだ。鳥居は、イタリアをはじめフランスやシンガポールなど、海外を活動の拠点としていただけあり、その引き出しの多さで各国のゲストたちを満足させているようである。長期滞在でも、飽きさせることはないだろう。

 

 

鳥居健太郎シェフの得意の一皿。鮮魚をカダイブで巻いて揚げた京都版「フィッシュ&チップス」。イタリア料理をベースに独自の創作料理を作る。 鳥居健太郎シェフの得意の一皿。鮮魚をカダイブで巻いて揚げた京都版「フィッシュ&チップス」。イタリア料理をベースに独自の創作料理を作る。

鳥居健太郎シェフの得意の一皿。鮮魚をカダイブで巻いて揚げたアマン京都版「フィッシュ&チップス」。西洋料理をベースに独自の創作料理を作る。

オールデー・ダイニングの「ザ・リビング パビリオン by アマン」からは、美しい庭園が臨める。 オールデー・ダイニングの「ザ・リビング パビリオン by アマン」からは、美しい庭園が臨める。

オールデー・ダイニングの「ザ・リビング パビリオン by アマン」からは、美しい庭園が臨める。

そして美食体験といえば、併設されている日本料理の「鷹庵」である。2020年4月に、金沢の老舗料亭「銭屋」の主人、高木慎一朗が総料理長に就任して、日本料理のあらたな挑戦を始めている。高木は、「京都吉兆」での修行経験を持ち、のちに米国留学を経て実家の「銭屋」の2代目主人に就任し、伝統的な料亭に独創的な料理やサービスのあり方を提案し続けているが、この「鷹庵」では、“カウンター越しのライブ感”や“コミュニケーション”を重視したもてなしで、懐石料理の本来の楽しみ方を演出してくれる。いい意味で、国内外のゲストが京都の懐石料理店に抱く敷居のハードルを、とっぱらってくれるのである。

料理だけでなく、器の選び方やプレゼンテーションも創意を盛り込む。 料理だけでなく、器の選び方やプレゼンテーションも創意を盛り込む。

料理だけでなく、器の選び方やプレゼンテーションも創意を盛り込む。

「鷹庵」は、座り心地のいいカウンターとテーブル席で構成される。カウンターを挟んで調理が見えるのも魅力だ。 「鷹庵」は、座り心地のいいカウンターとテーブル席で構成される。カウンターを挟んで調理が見えるのも魅力だ。

「鷹庵」は、座り心地のいいカウンターとテーブル席で構成される。カウンターを挟んで調理が見えるのも魅力だ。

しかも、「鷹庵」はホテルのゲストだけでなく、外来のゲストも入店可能なのである。ゲストが限定的ではないということで言えば、将来的にミシュランに代表されるガイドブックや、「アジアベストレストラン50」の対象店としても期待できるということである。

 

もっとも、個人的にはぜひともアマン京都にステイして、この庭園の環境とともに、美食も体験して欲しいと思うのである。

客室は、伝統的な日本旅館のテイストを踏襲しながらも、モダンに設え、自然と一体になるような工夫を盛り込んでいる。 客室は、伝統的な日本旅館のテイストを踏襲しながらも、モダンに設え、自然と一体になるような工夫を盛り込んでいる。

客室は、伝統的な日本旅館のテイストを踏襲しながらも、モダンに設え、自然と一体になるような工夫を盛り込んでいる。

アマン京都

京都府京都市北区大北山鷲峯町1番

中村孝則 Takanori Nakamura 中村孝則 Takanori Nakamura

Profile

中村孝則 Takanori Nakamura

コラムニスト。神奈川県葉山町生まれ。ファッションやグルメやワイン、旅やライフスタイルをテーマに、新聞や雑誌やTVで活躍中。現在、「世界ベストレストラン50」日本評議委員長も務める。剣道教士7段。大日本茶道学会茶道教授。著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)、共著に『ザ・シガーライフ』(オータバブリケーションズ)などがある。


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