Go To Travelキャンペーン事業が功を奏し、旅心が刺激され、国内旅行が活況を見せている。ここに、アート、グルメ、ホスピタリティ、アクティビティなど、ユニークな特徴のあるホテルを紹介していく連載をお届けする。次の旅の目的は、ホテル体験を楽しむ旅にしてみては。
アートが寄り添う、京都の最新ラグジュアリーホテル
景観の美しさで世界的に知られる京都・嵐山にラグジュアリーなホテルMUNI KYOTOが誕生した。唯一無二の存在を目指すこのホテルはロケーション、デザイン、料理、ホスピタリティと、さまざまな魅力にあふれている。今回はそんな注目のホテルとアートの関係を紹介する。
空間と自然に寄り添うMUNI KYOTOのアート作品
京都・嵐山に、2020年8月、注目すべきラグジュアリーホテルMUNI KYOTOが誕生した。 このホテルの特徴のひとつにアートとのかかわりがあげられる。エントランスをはじめ、レストラン、スパなどの動線上の要所に現代アートを配置。さらに客室内にも、部屋ごとに異なる作品が飾られ、特別な雰囲気を醸し出す。
MUNI KYOTOは、昨年オープンした福田美術館に隣接していることと、「素」な空間のなかの最小限の表現としてアートが意識されている。 古来、茶室を含む、日本の装飾文化には季節の移ろいや亭主のもてなしの気持ちなどが表現されてきた。館内のアートにはそうした意図が隠されているという。なお、建築は安田アトリエ、内装とアート計画は内田デザイン研究所が、それぞれ手掛けた。


エントランスを入ると正面には陶作家・安藤雅信による水琴窟が設置されている。水琴窟とは水滴の音を鑑賞するもので、本来は音を発する仕掛けが地上に姿を見せないものである。この作品ではあえて露出することで、「水と音のかたち」を表現してみせた。©Satoshi Asakawa


館内のMUNI SPA。スパのロビーと施術室ではガラス作家・イイノナホの作品が鑑賞できる。写真は「時の花」と題されたシャンデリア。スパのメニューでは、京都産の素材を用いたオリジナルトリートメントに加え、スイスのクリニックから届けられた最上級のエイジングケアにも注目したい。MUNI SPAは宿泊者以外も利用可能。©Satoshi Asakawa
あえて装飾を排し、シンプルに徹した心地よい空間
MUNI KYOTOの部屋数は全21室。室内はシンプルに白とウッドを基調とした心休まるデザインに仕上げられ、そのなかに西洋と東洋、伝統と現代の融和を暗示させている。
多くのラグジュアリーホテルが、日本的、京都的な要素を強調するのに対し、MUNI KYOTOは非常にシンプルで上質なスタイルにまとめあげているのが印象的だ。周囲の見事な景観があれば、ホテルそのものに過剰なデザインは無用というわけだ。


2階の客室は天井が高く、より開放的な雰囲気を味わえる。室内の壁は面により、洋のスタッコ・アンティコと和の漆喰を使い分けているのが興味深い。©Satoshi Asakawa


客室内にある国松希根太の作品「HORIZON」。嵐山からイメージを広げた自然の偶然と切り取られた木目に浮かぶ抽象的な風景を想起させる作品だ。(作品は各部屋異なる)©Satoshi Asakawa
アラン・デュカスによるレストランが話題に
MUNI KYOTOでは、フランス料理界の巨匠であるアラン・デュカスが、館内に2つのレストランを展開しているのも話題だ。「MUNI ALAIN DUCASSE」では京都の食材を使ったコンテンポラリーフレンチを提供し、もう一つの「MUNI LA TERASSE」では朝食、ランチ、ティータイムが楽しめる。アラン・デュカスが設立したデュカス・パリによる焼き菓子のブティック「MUNI LA BOUTIQUE」も、館内に2020年7月に先行オープンした。
そして「MUNI ALAIN DUCASSE」「MUNI LA TERASSE」が2つ同時に「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2022」にて一つ星を獲得。注目をさらに集めている。


MUNI ALAIN DUCASSEではパリ、モナコ、ロンドンのアラン・デュカスの3つ星レストランで経験を積んだユーグ・ジェラールがシェフに就任。レストラン内には、空間デザインのアイデアとなった名画も飾られている。また、窓から見える五十嵐威暢の作品「光の庭」にも注目したい。©Satoshi Asakawa


MUNI LATERASSE。目の前の大堰川と嵐山の絶景を臨むカウンター席は、忘れられない体験を提供してくれるだろう。©Satoshi Asakawa
福田美術館にも足を運んでアートを満喫
先述の通り、MUNI KYOTOは福田美術館に隣接している。同美術館のコレクションは、江戸時代から近代にかけての主要な画家の作品で構成されており、コレクション総数は約1500点。なかでも京都画壇の作品の収集には特に力が入れられている。


周囲に溶け込む洗練された和モダンの外観。写真は大きな水鏡となり、周囲の風景を映し出す美術館前庭(水盤)。


福田美術館エントランスロビー。建物外壁は網代文様をプリントしたガラスを多用しており、館内に心地よい光が差し込む。福田美術館の建築、内装は安田アトリエが担当した。
誰にでもアートを楽しんでほしいとの思いから、展示作品にはできるだけわかりやすい解説を付けているほか、その多くは来場者が撮影しても構わない。作品との距離感が近いのも特徴で、一部の作品はガラス越し30cmほどの距離で鑑賞ができる。
現在、福田美術館では、「悲運の画家たち」を開催中。事故や、最愛の人を失うなど、さまざまな悲劇の人生を歩んだ画家たちの作品や、非運を描いた作品を展示。第1章では近代画家として速水御舟、木島櫻谷、竹久夢二ら、第2章では深江芦舟、長沢芦雪、渡辺崋山らの近世画家の作品が鑑賞できる。
これまで京都を何度も訪れた方なら、京都の街を東奔西走するのではなく、美しい自然に囲まれて、心身ともにリラックスした時間を過ごしてみてはいかがだろう。現代アートと、江戸時代から近代にかけての名画たち。他では出会えないアートが大人の旅を、より魅力的なものにしてくれるはずだ。
MUNI KYOTO
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3番
TEL 075-863-1110
福田美術館
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3−16
TEL 075‐863‐0606
展覧会 「悲運の画家たち」
会期:2020年10月24日(土)~ 2021年1月11日(月・祝)
前期:2020年10月24日(土)~ 11月30日(月)
後期:2020年12月2日(水)~ 2021年1月11日(月・祝)
開館時間 10:00〜17:00(最終入館 16:30) 火曜休館
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