竹鶴孝太郎×八木隆裕×辻徹 竹鶴孝太郎×八木隆裕×辻徹

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By Executives プレミアムジャパンに集うエグゼクティブたちのブログ

2021.10.25

竹鶴孝太郎/ 伝統を背負う意味と可能性。「開化堂」八木隆裕×「金網つじ」辻 徹



「開化堂」の八木隆裕、「金網つじ」の辻徹は、かつてPremium Japanでも紹介した西陣織「細尾」の細尾真孝をはじめ、竹工芸「公長斎小菅」小菅達之、木工芸「中川木工芸」中川周士、茶陶「朝日焼」松林豊斎の京都伝統工芸の若手後継者6名で「GO ON」を結成している。京都の伝統技術を結集させて、家電や住宅メーカーとのコラボレーションやイベントプロデュースなどを幅広く手掛け、伝統工芸に新風を吹かせている。

 

「開化堂」八木隆裕、京金網「金網つじ」辻徹にとって、ニッカウヰスキー創始者、竹鶴政孝(マッサン)の孫である竹鶴孝太郎は憧れの存在であり、世代を越えた友人でもあると言う。東京・銀座で開催されたイベントのため東京を訪れた2人と竹鶴は、日本の工芸ついて語り合った。

 

 

伝統を受け継ぎ、新たな可能性を吹き込む

 

竹鶴:日本の日用品である”工芸”の魅力を世界へ発信する2人の活躍は注目しています。可能性みなぎるGO ONの活動も興味深いですね。

 

八木:今まで京都の伝統技術はそれぞれが独立した存在でした。GO ONは、それらの技術を結集して、新たな発想やプロダクトを提案するプロジェクトユニットです。そういうとカッコいいですが、結成当時はよく意見がぶつかっていました。それはたぶん、お互いがライバルになってしまっていたのだと思います。いまは同世代で同じ目標を持つ仲間として、彼らには絶対的な信頼を持っていますし、家族のような存在でもあります。



左:創業当時から変わらぬ技術でつくり続けている開化堂の茶筒。 左:創業当時から変わらぬ技術でつくり続けている開化堂の茶筒。

創業当時から変わらぬ技術でつくり続けている開化堂の茶筒。



開化堂六代目、八木隆裕。 開化堂六代目、八木隆裕。

開化堂六代目、八木隆裕。


開化堂の「響筒」。手のひらで音を感じ、表情を楽しむコンパクトスピーカー。 開化堂の「響筒」。手のひらで音を感じ、表情を楽しむコンパクトスピーカー。

開化堂の「響筒」。手のひらで音を感じ、表情を楽しむコンパクトスピーカー。



竹鶴:いい仲間に恵まれましたね。継承者という意味では私も3代目でしたが、2人とは違ってニッカウヰスキーを辞めてしまいました。しかし最近、ウイスキーに関する仕事が増え、ウイスキーへの思いが年々増していくんです。自分のルーツに引き戻されていくような不思議な感覚があります。

 

八木:父には継がなくてもよいと言われていたので、大学を卒業後は会社員をしていたことがありました。しかし、そこで開化堂の商品も海外で販売ができるかもとしれないという可能性を感じて開化堂へ戻りました。継がない選択もありましたが、いまは戻ってよかった
と思っています。



一つひとつ手仕事で作られる金網つじの商品。右下がG20のプレゼントになった「CIRCLE TEA INFUSER」。 一つひとつ手仕事で作られる金網つじの商品。右下がG20のプレゼントになった「CIRCLE TEA INFUSER」。

一つひとつ手仕事で作られる金網つじの商品。右下がG20のプレゼントになった「CIRCLE TEA INFUSER」。



金網つじ二代目、辻徹。 金網つじ二代目、辻徹。

金網つじ二代目、辻徹。



辻:自分は2代目なので、八木さんとは少し違うのかな。かつて会社が傾き、とにかく1つでも商品を売らないと会社の将来がないと切羽詰まっていた時、八木さんに『なぜ、お父さんの技術をいま学ばないんだ』とすごく怒られたことがあったんです。あのときは技術より会社を守ることが先決だと思い込んでいましたが、いまはその言葉に感謝しています。我々にとって技術は財産です。

 

八木:そう思います。生産量を上げて会社を大きくするという選択肢もありますが、私にはそういう気持ちは全くないんです。今100年前の茶筒を修理していますが、今作った商品が100年後に修理ができる、そういう開化堂で在り続けたいと思っています。

 

竹鶴:技術を守りつなげていく…、2人の努力には感服です。2人は海外にもよく出かけていますよね。


ニッカウヰスキー創始者、竹鶴政孝(マッサン)の孫にあたる、竹鶴孝太郎。 ニッカウヰスキー創始者、竹鶴政孝(マッサン)の孫にあたる、竹鶴孝太郎。

ニッカウヰスキー創始者、竹鶴政孝(マッサン)の孫にあたる、竹鶴孝太郎。



マッサン愛用の品々。 マッサン愛用の品々。

マッサン愛用の品々。


祖父 竹鶴政孝が1920年に書いたウイスキー製造報告ノートが100年を経て英国で出版された。 祖父 竹鶴政孝が1920年に書いたウイスキー製造報告ノートが100年を経て英国で出版された。

祖父 竹鶴政孝が1920年に書いたウイスキー製造報告ノートが100年を経て英国で出版された。



世界を知り学びながら、日本の伝統美を伝えていく

 

八木:もともと海外旅行が好きというのはありましたが、2005年「POSTCARD TEAS」というロンドンの紅茶屋さんとの出会いがありました。彼らが開化堂の茶筒を取り扱ってくれて、海外展開の機会をくれ、そこから世界中へ進出していきました。茶筒には優れた機能性がありますが、それよりも商品から感じるものや開化堂のモノづくりの哲学のようなものが海外の方々にも伝わったのかなと思っています。もちろん150年近く続いている我々の伝統への信頼や敬意のようなものもあると思います。

 

辻:僕は八木さんから、海外の取引先を全部紹介してやるから本気でやれ!と背中を押してもらいました。料理は各国の文化ですから、その国に合わせてオーダーメイドが多いかな。最近はアクセサリーや照明器具なども人気があるんです。

 

竹鶴:日本の工芸の機能性や美しさが世界に知ってもらえるのは、日本人としても嬉しいことですね。

 

辻:2019年に大阪で開催されたG20では、カップとそれに合わせた茶こしがファーストレディへのプレゼントに選ばれました。日本では日本茶は急須で入れますが、もっと手軽にお茶を楽しんでもらえるように、カップとそれに合わせた茶こしを考えました。日本茶を気軽に楽しんでもらえるだけではなく、コーヒーや紅茶にも使ってもらえます。



始終笑いが絶えない対談は、あっという間に時間が過ぎていく。 始終笑いが絶えない対談は、あっという間に時間が過ぎていく。

始終笑いが絶えない対談は、あっという間に時間が過ぎていく。


八木:工芸品は飾るものではなく、使ってもらうものですから。

 

竹鶴:しかし2万円の茶筒はリッチでないと買えないと思う人もいると思うけれど、一生使える茶筒を選ぶ人はお金持ちということではなく、心がリッチなんだと私は思います。

 

辻:はい。僕もリッチとは心の豊かさだと思っています。

 

竹鶴:私くらいの歳になると、多くのものを持つより、好きなものだけを身の回りに置きたいと思うものです。それこそが芳醇な生活ですよ。

 

八木:豊かな生活とは何か?これは私たちのモノづくりの原点でもあります。

 

竹鶴:今日はありがとうございました。今度はゆっくり旅先で語り合いましょう。これからのご活躍も応援しています。

 

(敬称略)


photography by Natsuko Okada

撮影協力:The Royal Park Canvas - Ginza 8

 

 

八木 隆裕
Takahiro Yagi

株式会社開化堂 代表取締役社長

1974年生まれ。手作りの茶筒を作り続ける創業約150年の開化堂六代目。 大学卒業後、3年間の会社員生活を経て、2000年に父・八木聖二の下で修業をはじめる。2012年「GO ON」を結成。2014年ロンドンVictoria&Albert museumのパーマネントコレクション選出。2015年パリ装飾美術館。コペンハーゲン デザインミュージアム等のパーマネントコレクション選出。

 

 

辻 徹
Toru Tsuji

金網つじ 代表取締役社長

1981年生まれ。平安時代から続くといわれる京金網の製作をする金網つじの二代目。21歳で家業を継ぐ。2012年「GO ON」を結成。2017年ミラノ・サローネでGO ON×Panasonic DesignのElectronics Meets Crafts が『Milano Design Award』を受賞。2018年ルイ ヴィトン×GO ONでスペシャルお茶セット「TIME CAPSULE」展にて発表。2019年大阪で開催されたG20のファーストレディのお土産に使われる。


竹鶴孝太郎
Kotaro Taketsuru

1953年北海道余市生まれ。竹鶴威・歌子の長男として生まれ、幼少期を祖父母である竹鶴政孝・リタと共に余市で過ごす。大学卒業後、ニッカウヰスキーに入社し約20年勤務した後、退社。1998年ブランドコンサルティング会社「ブランド・アイデンティティ・ネットワーク(bin)」を創設。2005年、顧問先のビジュアル制作大手アマナと合流。ヤマサ醤油「鮮度の一滴」、日本電波塔「東京タワー」CI、新技術のブランド化のプロデユースなどで活躍。現在は竹鶴商品研究所代表、アマナ顧問、ニッカウヰスキー顧問など数社の顧問を務めている。

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