ダイナミックなデザインと技巧が特徴だと言われる、欧米のハイジュエリー。翻って、日本のジュエリーには、「繊細」な感性を宿すデザインと、磨き上げられた「緻密さ」という技がある。アートとも、工芸とも評される日本のハイジュエリーが生み出す、心が透過されていくようなジュエリーの輝き。Premium Japanが厳選したブランドを紹介していく。
「100年計画」に基づいて、永遠の命をジュエリーに吹き込む
「Gimel」(ギメル)は設立1974年と決して古くはないが、日本を代表するジュエリーブランドの一つだ。代表の穐原かおるは、ブランドを立ち上げる際に「100年計画」という目標を立てた。それはブランドとして自分たちが認められるようになるには、100年かかるだろうと考えたからだ。しかし穐原の予想は良い方向に外れた。2000年サザビーズ・ジュネーヴで行われた“Au Courant(時代の流れ、潮流、の意)“と題したオークションでは、世界の11人のデザイナーの1人として注目される。ジェエリーは、元々西洋から来たものであるから、欧州の歴史ある宝飾の世界で、東洋のジュエラーがその存在を認めさせることは容易ではない。しかし西洋のブランドにはない「ギメル」の感性と、どこまでも繊細なものづくりが、ヨーロッパのジュエリーの権威を納得させたのだ。


「トラピチェエメラルド」が持つ特殊な結晶を生かしてデザインした「カメ」のブローチ。ここまできれいに結晶の模様が現れたものは極めて珍しい。ブローチ。Pt950・トラピチェエメラルド・エメラルド・ダイヤモンド・アレキサンドライト。非売品
「ギメル」のジュエリーのベースとなっているのは、「パヴェ・セッティング」という技術である。パヴェ=フランス語で石畳という名前が付いているように、これは石畳みのように宝石をびっしりと貴金属の枠に留める方法で、その昔アール・デコのジュエリーによく使われていた。ギメルの代表作「ロータス」を見るとわかるが、これほど整然と石が留められ、また無色透明なダイヤモンドからピンクダイヤモンドへ、またはグリーンのデマイドガーネットへと、自然なグラデーションを表現するのは並大抵の努力では達成できない。宝石のカラー、シェイプ、技術の三拍子揃って初めて実現するものだ。


「聖火ランナー」ブローチ。Pt950・K18イエローゴールド・スピネル・ダイヤモンド。2,200,000円 税別


「ラガーマン」ブローチ。Pt950・K18イエローゴールド・ダイヤモンド・ルビー・イエローダイヤモンド。4,000,000円 税別
デザインに合わせてダイヤモンドをカットし、必要な大きさと数のバゲットカットを揃えて製作したところに、このブローチの素晴らしさがある。ユニフォームを表すためにルビー、聖火はスピネルで表現するなど、細かな演出も魅力。
「ギメル」のダイヤモンドの採用基準は極めて厳しく、宝飾業界でも有名だ。東京オリンピックに向けて製作されたスポーツする人のピンブローチには「カリブレ・カット」を用いている。これはデザインに合わせて宝石をカットしセッティングしていく手法で、大きな宝石を削り落として形作っていくため無駄が多く、普通は敬遠される。崇高な輝きは、計り知れない緻密な仕事の結果と言えるだろう。
(敬称略)
Photography by © Gimel Trading co.,ltd.
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アートか工芸か。日本のハイジュエ…
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