ダイナミックなデザインと技巧が特徴だと言われる、欧米のハイジュエリー。翻って、日本のジュエリーには、「繊細」な感性を宿すデザインと、磨き上げられた「緻密さ」という技がある。アートとも、工芸とも評される日本のハイジュエリーが生み出す、心が透過されていくようなジュエリーの輝き。Premium Japanが厳選したブランドを紹介していく。
宝石を買うときは知識がないよりもあったほうがよい。家や車といった高価なものは入念に下調べしてから買うが、宝石はその魅惑的な色や輝き、大きさに圧倒されて衝動買いに走る人も少なくない。天然の宝石は唯一無二であるし、いざ探してみると出会えないので、出会いは大事だが、日頃から多くの高品質な宝石を実際に見て目を養っておくと、「こんなもの、買ってしまった」といった失敗を防げる。
「宝石の品質、見分け方、価値の判断」を、経験と研究を基にプロから一般の人にまで広めることに長年取り組んでいるのが、SUWA(諏訪貿易株式会社)会長 諏訪恭一である。1990年代に『宝石』の3部作を出版後、『価値がわかる 宝石図鑑』『品質がわかる ジュエリーの見方』など宝石についての著書を次々にまとめ、諏訪は宝石の初心者でもわかるように論理的に宝石、ジュエリーデザインのよしあしを解説している。
SUWAの歴史を繙くと創業は1908年。初代諏訪喜之松と2代目喜久男は1944年、ダイヤモンドの鑑定委員として、戦時下にあった日本で政府が任意で買うダイヤモンドの品質評価を行う作業に奉仕していたという記録がある。現会長は1965年にアメリカに渡り、米国宝石学協会(GIA)の宝石学士称号Graduate Gemologist(G.G)を日本人として初めて取得した。帰国後は宝石輸入卸業務に従事し、1981年に3代目として会社を引き継いだ。
15世紀のデザインを再現した「アンカット・ダイヤモンド」リング。フープには『一緒にいない時は私のことを想ってください』とノルマンフランス語で彫ってある。「ルネッサンス」リング。K22ゴールド・ダイヤモンド。550,000円 税込
ふだん見ることのないラフダイヤモンドの数々。カットも研磨もせずとも、原石のままのダイヤモンドの輝きも美しい。
SUWAのように宝石を学術的に捉えるジュエリー企業は希有だ。創業以来、蓄積された経験と知識が商品と販売に生かされ、消費者の信頼につながっている。商品開発にはどうして作ったのか、必ず理由がある。意外に聞こえるかもしれないが、ジュエリー企業の中には、思いつきで商品を作っているところが多いのだ。SUWAにバンドリングのラインナップが豊富なのは、爪が低いセッティングのほうが普段につけやすく、重ね付けもしやすいという配慮からだ。ダイヤモンドが宙に浮くかのように留めた「エアセッティング」はダイヤモンドの輝きの連鎖を引き出すため。
ダイヤモンドとカラーストーンを組み合わせたバンドリング。バイヤーが選りすぐったダイヤモンド、ルビー、サファイア、無処理エメラルドを採用している。
「アニバーサリー バンドリング」すべてプラチナ/K18イエローゴールド・ダイヤモンド。右から/サファイア 363,000円、エメラルド495,000円、ルビー363,000円 すべて税込
そして最近存在感を高めているのが「アンカット・ダイヤモンド」だ。ダイヤモンドは研磨してから商品にするのが常識であるが、SUWAでは研磨するには惜しいほど見事な原石が入手できたとき、それを「アンカット(切断・研磨してない)」状態でデザインに組み込んで商品にする。ダイヤモンドのカット方法がわかってきたのは14世紀といわれ、以降人間は光を引き出すことだけに注力してきた。それとは逆行する考え方はむしろ革新的で、ダイヤモンドを知り尽くした者でなければ思い付かないことである。
(敬称略)
Photography by ©SUWA
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アートか工芸か。日本のハイジュエ…
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