ダイナミックなデザインと技巧が特徴だと言われる、欧米のハイジュエリー。翻って、日本のジュエリーには、「繊細」な感性を宿すデザインと、磨き上げられた「緻密さ」という技がある。アートとも、工芸とも評される日本のハイジュエリーが生み出す、心が透過されていくようなジュエリーの輝き。Premium Japanが厳選したブランドを紹介していく。
今日、世界中で知られる有名ブランドの中には、一人の金銀細工職人の生真面目な物作りが創業の発端になっている例も少なくない。人の心を捉える感動的な美の裏には、それをコツコツと作り上げる人々がいるのだ。「ジュエリークラフトシュドウ」は、10年ほど前から確かな目を持つ人々の間で注目されるようになった。それまでは裏方として他社のハイジュエリーを作っていたのだが、周りから薦められ、代表の首藤治は自分の名前でジュエリーを販売するようになる。首藤は名実共に日本最高峰の技術を持つクラフトマンだ。1993年一級技能士全国大会の「技能グランプリ」で金メダルと大臣賞、2007年貴金属細工部門で卓越技能表彰(現代の名工)、そして2015年黄綬褒章を受賞した。


縦約2.7㎝のフレームの中に春夏秋冬の四季の彩りをエナメルを用いて描写している。
「フレーム」ブローチ兼ペンダント。K18イエローゴールド・ダイヤモンド・エナメル。
左から「sakura」「asagao」「momiji」「yuki」。各¥2,340,000 すべて税別


写真左 祭りのための衣装をつけた「ゾウ」リング。K18イエローゴールド・ダイヤモンド・ルビー・エナメル・オニキス。¥1,560,000
写真右 真珠のタンクトップを着た「ブタ」リング。K18ピンクゴールド・プラチナ・ダイヤモンド・アコヤ真珠・オニキス。¥1,950,000 ともに税別
ジュエリーの技術は、素人目にはわかりにくい。大粒の強い輝きの宝石に目を奪われて、作りの細部に目が届かない。しかし数多くのジュエリーを間近で眺めているうちに、自然にわかってくる。筆者が初めて首藤の作品を眼の前にして感動を覚えたのは、手のひらにのる小さな鳥のブローチだった。首藤はこれまでいくつもの鳥のブローチを手がけているが、すべて愛くるしい表情を持ち、羽を休める小枝、周りの葉も緻密に豊かに表され絵画のようだ。そして正面から見えない些細な部分も丁寧に仕上げており、驚かざるを得ない。こういう優れた技を知ってしまうと、それまで見えなかったジュエリーの作りの良し悪しが見えてくる。


「クラシック」ネックレス。ダイヤモンドがバランスよく垂れ下がり、宙に浮くように演出している。プラチナ・ダイヤモンド。
左 ¥1,820,000 中¥1,820,000 右¥1,170,000 すべて税別
しかし、ここで補足したい。技術にこだわり過ぎて、全体像が見えなくなってしまっている作り手も多いのだ。首藤の技術は少しユーモアのあるモチーフを完成させるための必然だろう。主役はあくまでも身につけ時に素敵に見えるデザインだと思う。首藤には2人の娘がいる。父の背中を見ながらクラフトウーマンとして腕を磨き、「ジュエリークラフトシュドウ」の名の元に新しい世界を作り上げている。
(敬称略)
ジュエリークラフトシュドウ
http://www.jewelry-shudo.com/
Photography by ©Shudo
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アートか工芸か。日本のハイジュエ…
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