ダイナミックなデザインと技巧が特徴だと言われる、欧米のハイジュエリー。翻って、日本のジュエリーには、「繊細」な感性を宿すデザインと、磨き上げられた「緻密さ」という技がある。アートとも、工芸とも評される日本のハイジュエリーが生み出す、心が透過されていくようなジュエリーの輝き。Premium Japanが厳選したブランドを紹介していく。
国内外問わず、ネット上のジュエリーコラムやオークションサイトに頻繁に「MIKIMOTO(ミキモト)」の名が登場する。そして多くの人がその名から真珠を連想する。「ミキモト」の創業者 御木本幸吉は、1893年に真珠養殖に成功させ、その名を広めたばかりでなく、日本国内における真珠産業の発展に寄与し、真珠は戦後、外貨を稼ぐ重要品目の一つとなった。
養殖真珠と聞いて、ピンとこない方もいると思うので簡単に説明する。かつて世の中には天然真珠しか存在しなかった。天然真珠とは何かのきっかけで貝の体内に外套膜(貝ヒモ)の一部が入ることで真珠質が分泌し、真珠層が育まれて「真珠」となったもののことを指す。一方、養殖真珠とは、そのきっかけを人の手で行うものだが、天然も養殖も性質には違いはない。


レースのように編んだデコルテに広がるパールネックレス、センターに大粒のモルガナイトを配して。
ネックレス。K18ホワイトゴールド・アコヤ真珠・モルガナイト・スピネル・サファイア・タンザナイト・ダイヤモンド。60,000,000円 税別


フェザーパールと呼ばれる天然淡水真珠のフォルムを生かした白鳥モチーフ。ダイヤモンドが日差しを受けて輝く湖の水面を想わせる。
ブローチ。K18ホワイトゴールド・K18イエローゴールド・天然淡水真珠・オニキス・ダイヤモンド。4,100,000円 税別
1924年パリで「真珠裁判」が行われた。「ミキモト」の真珠がヨーロッパに出回るようになると、天然真珠を扱っていた宝石店が恐れをなし、養殖真珠は偽モノだとして敗訴運動を起こしたのだ。しかし学術書などにより天然と変わりがないことが証明されたという。時代はアール・デコが一世を風靡し、直線的なファッションに合わせてパールネックレスが大流行していたことも重なって「ミキモト」の真珠は注目を集め、1928年にはパリに初出店を果たした。日本は東京でモガが登場していたものの和装が主流で、パールもダイヤモンドも知られていない時代だった。


ブルー、ラベンダーの花いっぱいのロマンティックなフラワーアーチを描写して。
ブローチ。K18ホワイトゴールド・天然淡水真珠・サファイア・トルマリン・ガーネット・アレキサンドライト・ダイヤモンド。35,000,000円 税別
御木本幸吉の先進的で独創的な考え方は、現代のジュエリーや事業に継承されている。2019年7月にパリでのお披露目ののち、9月にグランドオープンしたばかりのホテルオークラ東京で「Mikimoto High Jewellery Collection 2019 Jardin Mystérieux(ジャルダン ミステリユー)」を発表した。会場にはデジタル空間演出によってミステリアスでドラマティックな庭園や湖水が映し出され、来場者をコレクションの世界へと誘う。咲き誇る花々や動物、繊細なアイアンワークなど、どれもが最高の宝飾技術によって生み出された、高い完成度の美的世界。それを目の当たりにして、思う。日本のハイジュエリーの世界は、アートの域に到達しようとしているのかもしれないと。
(敬称略)
Photography by © MIKIMOTO
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アートか工芸か。日本のハイジュエ…
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