成人式や婚礼など人生行事に欠かすことのできない晴着。その形や模様、色彩には日本の伝統が凝縮され、女性を美しく輝かせる。日本人の美意識が込められ、令和にふさわしく現代的に昇華された逸品を毎回選りすぐり紹介する。
古典模様を主題に、緩急をつけた色彩によって現代性が映し出された振袖
現代のきもののもととなる小袖が、表着(おもてぎ)として定着したのが桃山時代。桃山時代の意匠は、豪華絢爛でおおらかさが大きな特徴といえる。そうした桃山のデザインからインスピレーションを得て、製作されたのが振袖「桃山清麗」。この振袖は、まず肩と裾にクリーム地の霞取りの場を設けている。形のない霞を意匠化した模様はきものの模様を代表するひとつ。
鏡裏文に雪輪を重ねた金の袋帯で格調高く
その霞の中には桃山らしい優麗でふっくらとした表現の四季の草花模様が配されている。このおおらかな意匠に、加えられているのがデザイン化された芒(すすき)模様。芒は古典模様でもお馴染みのモチーフだが、秋草のひとつとして穂が開き「枯れ尾花」などと表現されることも多い。こちらは成長期の芒だろうか。生命力に満ち、凛とした立ち姿で若々しく表されている。古典的なおおらかさとダイナミックな構図、それによって生まれる洒脱なデザイン感覚が、この振袖の魅力であることは明白である。
また、現代性に目を向けると色使いもそのひとつ。地紋浮き立つ紺地という寒色に対し、霞取りに詰められた草花の色は明るく優しい印象に。こうした強いコントラストの配色にモダンな印象を垣間見ることができる。桃山時代は刺繍と金銀箔などで模様を表現した縫箔(ぬいはく)であったが友禅染で再現されることで、表現の自由度が増すと同時に、熟練した職人の技やセンスが映し出されることになる。
霞取りの中に桃山調の草花が優美に表現されている
振袖にとっては、帯合わせの配慮も大切である。このきものでは草花がきものの重要な構成要素となっているため、植物などの具象的な模様を避け、写真のように、華文を詰めた鏡裏文と雪輪を取り合わせたものなどモチーフが大ぶりの文様化された柄や、正倉院文様など格調が高い袋帯で重厚な印象を加えると調い、美しさが感じられる着こなしになるのでおすすめである。
(敬称略)
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