「黒地立涌百合」(ハツコ エンドウ)

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令和にまとう初春のきもの 逸品選

2020.1.15

7. 日本女性に例えられる気品高い花をまとう。香り高く華麗な花嫁振袖

「黒地立涌百合」(ハツコ エンドウ)

子供から大人への通過儀礼として着る振袖に対して、花嫁のまとう引き振袖は未婚から既婚への通過儀礼という人生行事を祝う晴着。その着姿から「お引きずり」とも呼ばれる。令和の寿ぎにふさわしい、格調や風格を持つ大人の女性の振袖を、その意匠表現とともに紹介する。

それぞれ異なる美しさを誇る、百合と藤を題材にした振袖

草花(そうか)文様は世界中に存在するが、四季の変化に富んだ日本では、それぞれの季節に咲く植物が身近にあり、多種多様に意匠化されて、その美しさを享受することができる。今回は緑濃くなる初夏から夏という、生命みなぎる季節の草花を主題にした華麗な花嫁振袖を取り上げ、女性の美しさを咲かせる二点を紹介する。

百合や藤の花は、気品高く美しい日本女性をその姿に重ねることが多い 百合や藤の花は、気品高く美しい日本女性をその姿に重ねることが多い

凛とした姿が美しい百合を描いたきもの(左)や枝垂れ咲く藤の花を主題としたきもの(右)は、気品高く美しい日本女性をその姿に重ねることが多い


美しい容姿や立ち居振るまいの女性を例えた「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」のことわざのように、百合の花は美人の代名詞として知られている。百合文様はきものや帯の模様として今でこそ多く使われ、また古くは『古事記』にもその名が見られるが、中世や近世の染織品に取り上げられることは、思いのほか多くなかったようだ。写真上の振袖「黒地立涌百合」では艷やかな黒地に、華やかな香りが周囲に漂ってくるかのような優雅な白百合が総身に咲き誇る。また花弁の内や外などに、金刺繍がふんだんに施され、豪華な趣を醸し出している。百合の花のもつ和洋を隔てない独特の印象が、会場や式を選ばず花嫁の美しさを引き立てるはずだ。

 

また、立涌(たてわく)文がまるで百合が身を委ねる垣根のように取り合わされている。立涌は貴族の衣装や能装束に使われた格調高い有職(ゆうそく)文様。品格がありながら、波状曲線の意匠にどことなくしゃれ感が漂うのが特徴だ。重厚さと洗練さを併せ持つこの振袖のデザインの魅力は、百合文と立涌文のそれぞれの持ち味と、取り合わせによるところが大きい。

「白地藤」(ハツコ エンドウ)  振袖に花房が揺れる藤の姿をみごとに表現 「白地藤」(ハツコ エンドウ)  振袖に花房が揺れる藤の姿をみごとに表現

「白地藤」(ハツコ エンドウ)
振袖に花房が揺れる藤の姿をみごとに表現

藤は古来より愛され、平安時代後期、藤原氏全盛時代に文様として確立した。有職文様にも多く見られ、また家紋のモチーフにも使われ、その数は50種類以上ある。枝垂(しだ)れて咲く花房の、美しく気品高い姿かたちは言うは及ばず、子孫繁栄などおめでたい象徴として縁起の良い文様である。写真下の「白地藤」振袖は清廉無垢な白地に、堂々とした花房を甘やかな配色と金彩で麗らかに表したきもの。大津絵に材を取った歌舞伎舞踊「藤娘」といった芸能衣装をほうふつとさせる華やぎと、若々しさを感じさせる一枚だ。

振袖:ハツコ エンドウ ウェディングス 銀座店

レンタル価格:写真上/800,000円 写真下/価格未定(税別/編集部調べ)

https://weddings.hatsuko-endo.co.jp/salon/64

text by Akira Tanaka

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