復元裂「犀連珠文錦(さいれんじゅもんにしき)」(龍村美術織物)復元裂「犀連珠文錦(さいれんじゅもんにしき)」(龍村美術織物)

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令和にまとう初春のきもの 逸品選

2020.1.24

11. 古代裂、名物裂の美意識を現代の帯へと誘う。龍村の真骨頂は「織物の復元」

復元裂「犀連珠文錦(さいれんじゅもんにしき)」(龍村美術織物)

成人式や婚礼などをはじめ、晴れの場に欠かすことのできないきものや帯。美術織物の至高に名を連ね、多くの女流作家や女優に愛されながら、令和の現代においてもなお新鮮で格調高い龍村美術織物の粋美を、その礎を築いた初代龍村平藏の精神とともに紹介する。

 

 

龍村の復元裂と異国情趣のデザイン

初代平藏の時代より龍村の足跡や偉業をたどるにあたり、「織物の復元」を欠かすことはできない。最先端の染織技術や美しいデザインで日本の上流階級を虜にした中国や西アジア伝来の法隆寺や正倉院に納められている古代裂(ぎれ)、中世の数寄者に愛された舶載染織である名物裂(めいぶつぎれ)など、さまざまな染織品を往時の姿に蘇らせてきた。

 

復元名品のひとつ、写真上の「犀連珠文錦(さいれんじゅもんにしき)は、正倉院に所蔵されている大小数十片の裂から推定復元された緯錦(よこにしき。緯糸で色柄を表した絹織物)。その意匠は、花樹を中心に有翼・二角の霊獣としての犀と小ぶりな獅子をそれぞれ対にしたいわゆる樹下双獣文に、周りを連珠文で巡らせた主文、スイカヅラに似た植物を文様化した忍冬唐草(にんどうからくさ)を菱形にした副文で構成されている。本歌はペルシャ(現在のイラン)系のデザインだが、ペルシア様式の緯錦を本格的に製織し始めた唐(618〜907)初期の作例といわれてきた。研究の結果、現在では隋(518〜618)初期まで遡る可能性が有力視されている(写真の裂は四代の復元)。

袋帯「モザイク禽華(もざいくきんか)」(龍村美術織物) モザイクのような表現で鳥を表現した袋帯 袋帯「モザイク禽華(もざいくきんか)」(龍村美術織物) モザイクのような表現で鳥を表現した袋帯

袋帯「モザイク禽華(もざいくきんか)」(龍村美術織物)
モザイクのような表現で鳥を表現した袋帯

龍村ではオリジナリティ豊かな色彩感覚、高度な製織技術など、復元することで育まれた異国調の美意識を現代の帯に映してきた。例えば写真の袋帯「モザイク禽華(もざいくきんか)」も、異国情趣あふれるデザインの袋帯のひとつ。意匠は富貴の象徴である牡丹や豊穣を表す葡萄を配した唐草文様を背景に、飛び交う鳥を表現。尾長鳥は古くより鳳凰に代わり、鳥の理想化・抽象化した姿とされる。もうひとつは、神の使いや平和の象徴として洋の東西を問わず親しまれる鳩。いずれも縁起のよい東洋的なモチーフを、西洋的なモザイク風の表現と鮮やかな配色で表し、華やかでモダンな作品となっている。


text by Akira Tanaka

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