新作振袖「慶華紅彩」(千總)

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令和にまとう初春のきもの 逸品選

2019.12.24

2. 名店「千總」のルーツを意匠に込めて。鮮やかに咲く紅(あか)振袖

新作振袖「慶華紅彩」(千總)

成人式や婚礼など人生行事に欠かすことのできない晴着。その形や模様、色彩には日本の伝統が凝縮され、女性を美しく輝かせる。日本人の美意識が込められ、令和にふさわしく現代的に昇華された逸品を毎回選りすぐり紹介する。

ブランドのルーツを紐解き、現代的な模様としたドラマティックな振袖

式典などで百花繚乱、鮮やかに咲く振袖姿でも、紅(あか)の振袖は「若やぎ」「華やぎ」「女性らしさ」と三拍子揃った特別な存在。振袖「慶華紅彩(けいかこうさい)」は袖を通すと身頃に黒の慶長取りや、可憐な四季草花が装いに表されたきもの。赤、白、黒のコンビネーションの染め分けが映える振袖として視線を集める。

濃地に豪放な唐花模様の袋帯がより豪華さを高めて 濃地に豪放な唐花模様の袋帯がより豪華さを高めて

濃地に豪放な唐花模様の袋帯がより豪華さを高めて

衣桁に広げられた振袖(写真一番上)には、八角形が重なり立体感のあるモチーフが見てとれる。このように大胆に表現された幾何学的な模様は、多くの古典柄のなかにあってモダンな趣を放っている。この八角形の意匠は、千總の暖簾にも表されている「千切台(ちきりだい)」に想を得たデザインだ。千切台とは春日大社「若宮おん祭」に奉納されるもの。これは、千總が呉服商を始める前の遠祖が宮大工であり、この千切台を製作、奉納していたとの歴史に由来する。いわば千總のルーツを意匠化し、写した振袖と言えよう。

 

ディテールにこだわった友禅染による細やかな筆致は言うに及ばず、いくつかの絞り技法をはじめ、繊細な刺繍や金彩、箔置きを加飾として取り入れ、奥行きを感じさせる凝った秀作である。さまざまな染色技法を駆使し、それぞれの職人の熟練の技が冴えわたる一枚。


糸目によって染め分けられた場には精緻な柄が表現されている 糸目によって染め分けられた場には精緻な柄が表現されている

糸目によって染め分けられた場には精緻な柄が表現されている

装いに目を向けると、帯は白地といった淡彩地を合わせると、華やかで流麗な印象に。濃地の袋帯を合わせると色柄の多いきものを引き締め、ひと息入れたような洗練された装いに。精緻で細やかなきもの柄に対して帯の柄は、ダイナミックできっぱりとした柄を合わせるとバランスの良い装いになるはずだ。写真では紫の地色に大ぶりの唐花を表した袋帯を合わせている。遠目に見ると場の取り方が抽象的にも見え、こうした異国調の趣の柄とも抜群に相性が良い。


(敬称略)

 

製作:千總
価格:2,500,000円(税別/編集部調べ)
http://www.chiso.co.jp/

http://www.chiso.co.jp/lp/furisode2020/

text by Akira Tanaka

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