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未生流笹岡家元 笹岡隆甫「月々の花、月々の京」

2023.10.4

【未生流笹岡家元 笹岡隆甫が生ける十月の花】赤い実が可憐なうめもどきを生ける秋











1919(大正8)年に創流され、西洋の花を用いた新しい「笹岡式盛花」を考案したことで知られる「未生流笹岡」。当代家元、笹岡隆甫さんは、伝統的な華道の表現だけでなくミュージカルや狂言など他ジャンルとのコラボレーションを試みるなど、幅広い分野での活動で注目を集めています。京都で暮らす笹岡さんが、月々の花と、その月の京都の風物詩を語る連載「月々の花、月々の京」、十月は「うめもどき」と「花会」です。

 









葉と実が当時についた珍しい状態の枝を家元作品として使用

 

 

一昨年の十月に京都の青蓮院で開かれた、「未生流笹岡 京都支部展」で、家元作品としていけた花です。赤い実がなっている右側の枝物は、うめもどきです。漢字で書くと「梅擬」。鮮やかな赤に色の実をつけますが、名前の由来となったのはこの実ではなく、葉が梅に似ているからとされています。

 

 

 

自生している場所では、実と葉が同時についている場合がありますが、お花屋さんに入ってくる時は、葉が落ちて実だけになっていることが多く、このように赤と緑のコントラストが美しい状態で花材として使うことができたのは貴重な機会でした。枝ぶりも、なかなか風情があります。花器は9月の記事でも紹介した、亘章吾さんのオブジェです。







うめもどきの実 うめもどきの実

うめもどきの実は、野鳥の大好物。とりわけヒヨドリが好むといわれている。近年では公園などの植栽で見かけることも多くなった。©Akira Nakata









ピンクゴールドの花器は2021年夏のリベンジ

 

左側の、すっとした銀色の細長いシルエットの花器が何かお分かりですか? 実はこれ、東京オリンピックでの聖火リレーの際に、ランナーが持って走ったトーチです。1年の延期後、2021年に行われた聖火リレーで、私は京都市の最終ランナーを務めました。京都市の聖火リレーは二条城を出発して平安神宮をゴールとし、境内に設けられた聖火台に私が点火することになっていました。平安神宮に入る前の場所で、私が迎え花をいけるプランもオリンピック組織委員会の承認を得ていました。

 

 

ところがコロナ禍ですべてが中止。結局、家族だけがスタンドへの入場を許された亀岡の京都スタジアムで、祇園町の芸妓さんから受けた火を静かに聖火台へ運ぶという、短い最終ランナーとなってしまいました。2カ月後に開かれた「京都支部展」で、その時のトーチを花器に見立てたわけです。ピンクゴールドに輝くトーチは、桜の花をイメージしてデザインされています。ですので、秋の桜であるコスモスをいけ、曲線を生み出すためにアマランサスを垂らしました。このトーチ、青蓮院の床の間に予想以上にしっくりと馴染み、私が説明するまでは、現代アートの花器だと思い込んでいる方も少なからずいらしたそうです。

 

 

トーチは今でも自宅に保管してあります。少し残念な結果となってしまった聖火リレーでしたが、実際に火を受け取り、それを掲げながら走っていると、受け継ぎ伝えていくことの大切さを、改めて感じました。それは流派も同じです。前の世代から襷をいただき、次代にバトンタッチしていくこと。日本の伝統文化は、こうして脈々と繋がっていくのだなと、トーチを見る度に思います。

 

 

10月の第二日曜は、流派最大の催し





南禅寺・天授庵 南禅寺・天授庵

南禅寺・天授庵は応仁の乱で焼失した後、17世紀初頭に再建された。美しい枯山水や池泉回遊式庭園を持ち、紅葉の名所としても知られる。©Akira Nakata

10月の第二日曜に開催される「京都支部展」は未生流笹岡のなかでも、もっとも大きな行事です。私が家元を襲名してからは、ずっと青蓮院を会場としていますが、昨年、今年、そして来年の3年間は、屋根の吹き替えのために使わせていただくことができず、南禅寺の天授庵を会場とさせていただいております。

 

 

京都支部の門葉の作品が100点以上並ぶ様はとても見応えがありますし、家元の作品をお見せするという責任感もあります。前日に会場でいけこみをしますが、会場ではそれほど大きなことはできませんので、前々日までの準備が勝負です。また、自分の作品だけでなく、前日には会場の全作品を、確認して回ります。

 

 

ですので、この花会の前1~2週間くらいは、とても慌ただしい日々が連日続きます。そして、無事終わるとほっと一息。家族でご飯でも食べにいこうか、という話もようやく持ち上がります。

 

 

最後になりましたが、今年(令和5年)の「京都支部展」は10月8日(日)の開催です。会場は2カ所。通常は非公開の南禅寺天授庵の方丈と大書院、そして天授庵から徒歩10分のウェスティン都ホテル京都です。ぜひ足をお運びください。(詳しくは「未生流笹岡」のホームページの「催しのご案内」をご覧ください)




















笹岡隆甫(ささおかりゅうほ)  笹岡隆甫(ささおかりゅうほ) 

photography by Takeshi Akizuki

笹岡隆甫 Sasaoka Ryuho

 

未生流笹岡家元。1974年京都生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。2011年、未生流笹岡三代家元を継承。伊勢志摩で開催されたG7会場では装花を担当。舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、国内外の公式行事でいけばなパフォーマンスを披露。京都ノートルダム女子大学と大正大学で客員教授を務める。近著の『いけばな』(新潮新書)をはじめ、著書も多数。



Text by Masao Sakurai(Office Clover)

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