国内では3番目の「星のや」として2012年に開業した「星のや竹富島」が、開業に際し最も大切にしたのは、「一致協力」を意味する竹富島の島言葉「ウツグミ」の精神 でした。この「ウツグミ」の精神が育んできた島の伝統や文化、自然環境などに触れると同時に、島の人々とともに、これらを守り続けることの意義を肌で感じるリゾート、それが「星のや竹富島」です。2回にわたる宿泊記の第1回は、島の歴史や伝統を受け継ぎながら進化し、「ウツグミの島に楽土」をコンセプトとする「星のや竹富島」で味わう幸福感をお届けします。
「星のや竹富島」宿泊記 その2 降り注ぐ無数の星に見守られながら味わう極上フレンチ「群星(むりかぶし)ディナー」の詳細は、こちらをクリック
「南風(パイカジ)」吹き抜ける「風の間」で寛ぐ
煌めく南の島の光が、白砂を敷き詰めた庭に降り注いでいます。この白砂は珊瑚を砕いたもの。庭を囲む、「グック」と呼ばれる石垣も、やはり珊瑚が形成した琉球石灰岩を積みあげたものです。
グックの向こうには、隣の客室の赤瓦が見え、そこにも南国の太陽が降り注いでいます。生い茂る緑を背に、ブーゲンビリアの花が咲き乱れています。
南側の庭に面して大きく広がる窓と、反対側の窓を開け放つと風が通り抜けます。日差しが照り付けている庭からとは思えない、意外にも涼やかな南風を、島の人は「パイカジ」と呼んでいます。そして、「パイカジ」が吹き抜ける「星のや竹富島」の客室リビングは「風の間」と名付けられています。
静かです。青空に浮かぶ雲だけがゆっくりと動いています。
東京から石垣島を経て、数時間。「星のや竹富島」の客室で「パイカジ」に吹かれると、その数時間があっという間に消え去り、島に流れる時間と空気に身心が解き放たれ、同化していくのがわかります。
フローリングの洋室は2名と3名の2種類、畳敷の和室は2名の1種類と、客室は全部で3タイプ。いずれも53㎡から66㎡と申し分のない広さ。写真は、「ガジョーニ(ガジュマル)」とネーミングされている2名タイプの洋室。
洋室のバスタブはリビングとひと続きの床に置かれ、南国リゾートならではの開放的な空間となっている。
受け継がれてきた、竹富島の伝統的な集落景観を踏襲
「星のや竹富島」の敷地面積は約2万坪。広大な敷地内に48棟の客室棟とレストランやプールなどのパブリックスペースが配置されています。
それぞれ独立した客室棟の、庭を含む面積は260㎡から300㎡前後。赤瓦の木造平屋建ての客室は、すべて竹富島の伝統的な民家の造りに倣っています。
客室だけではありません。敷地を囲うグックも、グックとグックの間を縫うように巡る白砂の道も、咲き乱れる南国の花も、すべて竹富島の中心部に存在する昔ながらの集落の景観そのままです。
島の人々が守り続けてきた集落の景観を踏襲することで、「ウツグミ」の精神が育んだ島の文化と伝統は、「星のや竹富島」にも根付いています。
客室の屋根には、家を守るとされるシーサーが鎮座する。それぞれの客室ごとに表情が異なるので、見比べてみるのも楽しい。
プライベート感を保ちつつ周辺の人の気配も感じさせる、グックの絶妙の高さ
一息ついたら、施設内の散策です。散策といっても、敷地内が広大なため、慣れないうちは電動カートで迎えにきてもらうことがお薦めです。
電動カートがやってきました。リビングから庭を眺めていると、グック越しに、動いているカートの上部だけが見えます。グックは外側を歩く人や、時々通るカートの気配が感じられる、絶妙な高さで連なっています。
「それぞれの客室がプライベート感を確保しながらも、外側との繋がりも保つような高さにしてあります」とのスタッフの説明を聞き、納得。竹富島の古くからの集落にあるグックも、ほぼ同じくらいの高さだそうです。
緩やかなカーブを描く白砂の道と赤瓦の屋根。重要伝統的建造物群保存地区に選定されている竹富島の集落と同じ景観が、施設内でも広がる。
「ゆんたくラウンジ」で、三線の調べに耳を傾ける
「ゆんたくラウンジ」では、三線の演奏が始まっていました。三線の調べに乗って沖縄地方の古謡がゆったりと流れてきます。ソファーに寛ぎ、耳を傾けているゲスト誰もが、揺蕩(たゆた)うような時の流れに身を任せています。それはまさに、南の島ならではの、ゆったりとした至極のひととき。
滞在中、いつでも利用可能なこのラウンジでは、三線や古謡の演奏が毎日行われるだけでなく、伝統文化の機織り体験や、作りたてのおやつをいただくことができる「島のひととき」など、さまざまなプログラムが用意されています。シークヮーサージュースや竹富島の命草(ぬちぐさ)茶などが、フリードリンクとして置かれているのも嬉しい限りです。
「ゆんたく」とは、竹富島の言葉で「おしゃべり」を意味します。解放感に満ちたこのラウンジでは、そこかしこで「ゆんたく」の花が咲いていました。
「ゆんたくラウンジ」では、毎日16時45分から30分間、「夕凪の唄」として三線の演奏や古謡が披露される。
「ゆんたくラウンジ」には、島の歴史や文化を記した本や写真集を中心としたライブラリーコーナーも設けられている。
豊かな自然に溶け込む、オーバルプール
施設のほぼ中心には、オーバル状のプールが設けられています。
緩やかな楕円を描いてブルーに輝くプールは、まるで大きな青い水たまりのよう。衒(てら)いのないその形に、なぜか心が癒されます。プールサイドテラスが少し離れているため、水辺はシンプルそのもの。上空に広がる青空と、プールを取り囲む緑を、水と戯れながら心ゆくまで堪能することができます。
煌めくプールを見下ろす一画に設けられたプールサイドテラスで、心地よい風を全身で受けながら過ごすひとときも格別です。
プールは年間を通して24時間利用が可能。奥に見える建物が、「ゆんたくラウンジ」や「レストラン」が設けられている「集いの館」。
「島人(しまんちゅ)」の朝ごはんで、活力をいただく
客室で「命草(ぬちぐさ)薫る島鍋」を堪能した翌朝は、ダイニングで朝食。八重山諸島で採れる「命草」をたっぷりといただいたからでしょうか、目覚めは爽やかでお腹も空いています。
和食は2種類。「御三味(ウサンミ)」と呼ばれる沖縄の伝統的な重箱料理をアレンジした「島の九品(クヌシナ)朝食」を選びました。九分割された重箱が登場。ラフテー、紅芋ぜんざい、島豆腐の白和え、ミーバイの茶碗蒸し……。南の島ならではの品々が彩も鮮やかに整然と並んでいます。
朝早くから畑仕事に精を出す竹富の人々は、活力をつけるためにも朝ごはんを大切にするそうです。伝統的な炊きごみご飯の「ジューシー」と、大きな車麩が入ったお味噌汁が加わったたっぷりの献立は、島の人々の朝ごはんと同じく、一日の活力をもたらしてくれます。
隣のテーブルで見かけた、もう1種類の和食「ゆし豆腐粥朝食」も、ブイヤベースをメインとした洋食「海風(うみかじ)ブレックファスト」なども、とても美味しそうでした。
朝食後は、お待ちかね「朝の水牛車散歩」です。
前夜に客室で味わった「命草(ぬちぐさ)薫る島鍋」。国産の牛や豚を予め味のついたスープでしゃぶしゃぶに。長命草、ハンダマ、島人参など、たっぷりの島野菜がとても美味。
「御三味」は、沖縄の伝統行事の際に客人にふるまわれる重箱料理の総称。和洋2種類づつの朝食のほか、卵料理やフルーツ、パンなどをアラカルトでオーダーすることも可能(有料)。
島の集落の家並を巡る白砂の道を、水牛車でゆっくりと
手綱を引かれ、姿を現した水牛の大きさにまずびっくり。黒褐色の皮膚と見事なまでの角を生やした水牛の名前は「りゅうた」くん。12歳で、人間でいえば初老ぐらいにあたるそうですが、黒光りする胴体と反り返った角は迫力満点です。ゲストを乗せた台車を引っ張って、出発です。
ゲストは多い時で10人以上。ご老体の「りゅうた」くんにはちょっと気の毒と思いきや、「水牛にとっては難なく引くことができる重さです」との説明を聞いて、ちょっと安心。
集落の間の細い白砂の道をゆっくりと進みます。速度は人間が歩く速さより少し遅いくらい。グックの上に咲くブーゲンビリアが目の前を通り過ぎていきます。水牛は、ガイドさんが手綱を操作しなくても、狭い十字路を自ら器用に曲がっていきます。指図しなくても順路を覚えているそうです。
島の歴史や風土を面白おかしく語っていたガイドさんが、三線を爪弾きながら歌い始めました。水牛車の心地よい揺れと、朗々と響く歌声、グック越しに見える赤瓦の家々。集落のなかを30分ほどかけて巡る水牛車のひとときは、ゆったりと流れる島時間そのものです。
30分ほどかけて集落を巡った後、スタート地点へ。水牛は大人しいので、一緒に記念撮影も可能。「朝の水牛車散歩」は、「星のや竹富島」宿泊客専用のプログラム。
「星のや竹富島」の原点となった、「旧与那国家住宅」へ
「『星のや竹富島』の原点となった建物をご覧になりませんか」。
滞在中、そんな言葉とともにスタッフの方に案内していただいたのが、「旧与那国家住宅」でした。1913(大正2)年に建てられた赤瓦の木造平屋建ての住宅は、竹富島の民家とそこで営まれてきた暮らしを物語る典型的な建物として国指定重要文化財にも指定されています。
「一番座」と呼ばれる、家屋のなかで最も大切な座敷からの庭の眺めや、敷地の周囲を巡るグックの雰囲気などは、確かに「星のや竹富島」の客室を思わせる造りです。
じつは竹富島には、「竹富島憲章」と称される住民憲章が存在しています。「売らない」、「汚さない」、「乱さない」、「壊さない」、伝統文化や自然を「生かす」、と定めた5つの基本理念は、島の住人だけでなく、「星のや竹富島」も、ひとつの団体としてこの憲章を遵守しています。
客室の造りの原点を「旧与那国家住宅」とし、集落全体のたたずまいをそのまま踏襲するだけでなく、スタッフが積極的に神事をはじめとする島のさまざまな行事に参加し、島人との交流を深めているのも、この憲章の精神を分かちあっているからです。
施設に戻り、客室や周辺のたたずまいに改めて目を配ると、単に景観を踏襲するだけでなく、そこに込められた島の文化や歴史に施設として敬意を払っているからこそ、「ウツグミの島に楽土」が実現している、ということに思いが到ります。
「旧与那国家住宅」の一番座。祭壇を設け、大切な客を迎える入れる部屋として使われていた。
「旧与那国家住宅」見学の後、「HaaYa nagomi-cafe」でランチ。写真の「タコライス」や「季節の島野菜カレー」などが人気メニュー。「星のや竹富島」のスタッフもご愛用とのこと。
夕方からは星空の下でフレンチをいただく「群星(むりかぶし)ディナー」の予定です。今日は一日中青空が広がり雲もわずか。星空が期待できそうです。
「星のや竹富島」宿泊記 その2 降り注ぐ無数の星に見守られながら味わう極上フレンチ「群星(むりかぶし)ディナー」の詳細は、こちらをクリック
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