「もう一つの日本」をテーマに「谷の集落」として誕生した「星のや軽井沢」は、開業19年目を迎えた現在も「日本の原風景」という、誕生当時の姿を守り続ける一方で、健康に留意したウェルネスプログラムをはじめ、さまざまな点で進化を続けています。そんな「星のや軽井沢」の滞在記を2回にわたってお届けします。1回目は新設された「棚田ラウンジ」でいただく「棚田アフタヌーンティー」とメインダイニング「日本料理 嘉助」で味わう、独創的な「山の懐石」を中心としてお伝えいたします。


©Natsuko Okada(Studio Mug)
豊かな森と清らかな水。集落を流れる川を中心に点在する、全77室の客室
豊かな森と清らかな水。「星のや軽井沢」を訪れたゲストは、「谷の集落」の主役であるこのふたつの自然に魅了されます。
夏、森は緑の木陰を作り、水は涼感をもたらします。全77室の客室は、集落の中心を流れる川に面した「水波の部屋」、一面の緑に囲まれた「山路地の部屋」、路地に佇む戸建て感覚の「庭路地の部屋」の3タイプ。
空気までもが緑に染まったかのような室内へは、涼やかな風が小鳥たちの囀りを運んでくれます。


川に面した「水波の部屋」のテラスはまさに水際。聞こえてくる瀬音も心地よい。


「水波の部屋」の室内。二方向の窓が池に面し、開放感もたっぷり。同じ「水波の部屋」でも、場所によって室内の様子は異なる。©Natsuko Okada(Studio Mug)
刻々と表情を変える「棚田ラウンジ」で。軽井沢の自然に触れる
開業以来変わらぬこの美しい景色を、今まで以上に身近に感じることができるスペースが2024年6月1日に誕生しました。
その名も「棚田ラウンジ」。浅間山を源とする清流を引き込み、敷地の高低差を活用して作られた棚田は、「星のや軽井沢」を象徴する景色として、開業時から多くの人の目を楽しませてきました。
施設のほぼ中央に位置するこの棚田に抱かれるかのように設けられたのが、「棚田ラウンジ」です。棚田の中央の緑に囲まれたプライベートデッキ、棚田全体を見渡すことができるテラスなど、ラウンジの規模は全28席。
季節、天候、時間などで刻々と表情を変える軽井沢の自然を、まさに肌で感じることができる特等席です。


棚田に面し、森に抱かれるかのような場所に設けられた「棚田ラウンジ」。思い思いの席で、広がる棚田の景色を楽しみたい。
1日1組限定。「棚田ラウンジ」で楽しむアフタヌーンティー
この「棚田ラウンジ」を舞台とし、樹々と水が織りなす景色を楽しみながら、信州の豊かな食文化を堪能する。
そんな至福のひとときを味わうことができるのが「棚田アフタヌーンティー」です。ネーミングは「アフタヌーンティー」ですが、スイーツ系もさることながら、旬の食材を用いた料理もたっぷりなので、ランチとしても最適な内容となっています。
小ぶりな三段重が運ばれてきました。山桜の樹皮を加工した「樺細工」のお重です。
山桜の樹皮の風合いをそのまま生かした豊かな表情のお重は、目の前に広がる自然の風景に溶け込んでいきます。
この三段重は、いわばスイーツの玉手箱。マカロン、クッキー、カステラ、ガトーショコラなどさまざまなスイーツが、野の花などともとに、美しく盛り込まれています。
3種類のマカロンは、それぞれが七味、山椒、味噌の風味でその名も「信州マカロン」。クッキーにはなんと熊笹パウダーが含まれているので ほのかに笹の香りがします。そば粉のガトーショコラは、甘みと同時にそば粉独特の懐かしい香りが。
ほかにも、黒文字カステラ、花豆の練り切りなど、信州を感じさせる食材を駆使したスイーツに、こんな食材の取り入れ方があったのかと、その自在な発想に驚きです。


樺細工の素材となる大山桜の樹皮を用いたブレンドティ「桜樺茶」は、スイーツとの相性もぴったり。


三段重にはスイーツ、二段重には色とりどりのセイボリーが美しく盛り込まれている。お重の他に、涼し気なガラスの器を用いた料理やちまきなど、さまざまな趣向が凝らされている。©Natsuko Okada(Studio Mug)
少し大振りな塗りの二段重はセイボリーです。
蓋を開けると、目に飛び込んでくるのはさまざまな料理。その美しいレイアウトに思わず息を飲みます。しかも、スイーツ同様、信州の食材が駆使されています。
長野県を代表する食材である鯉のフライを挟んだ「鯉カツサンド」は、白身魚のようなあっさりとした鯉の味わいに、いくつでもいただくことができそうです。
逆に、箸をつけるのがためらわれるほど愛らしい装いは、「花寿司」。色とりどりのエディブルフラワーを薄く白板昆布で包み、押し鮨の要領で酢飯の上に乗せたアイデアに溢れる一品です。
糀で漬け込んだ鹿肉を炭火で焼いたもの、マイクロハーブのサラダ、彩りのアクセントとなるフルーツ類など、独創性溢れるひとつひとつの料理に、シェフの並々ならぬ熱意が感じられます。
「棚田アフタヌーンティー」とのマッチングを考慮して、
新たに限定醸造されたロゼシードル
この「棚田アフタヌーンティー」とのマッチングを考慮して新たに限定醸造されたのが、生産量が限られた赤果肉りんごと英国生まれのメイポールを、瓶内二次発酵させたロゼシードル「プレミアムシードルPOMME ROSE(ポムロゼ)」。爽やかな酸味の後にほのかな甘みが広がる美しいオレンジ色の一杯は、どんな料理にもマッチします。
棚田の間を流れる清流の水音、時々滑稽な仕草を見せてくれるマガモやカルガモ、風に揺れる葉と柔らかな木洩れ日……。
棚田ラウンジで過ごす時間を、さらに充実させてくれるアフタヌーンティーは、1日1組2~4名限定で、一年を通して実施。進化する「星のや軽井沢」に、また新たな楽しみが誕生しました。


「谷の集落」の清流を訪れる愛らしいゲストはマガモとカルガモ。その見分け方はくちばしの色で、カルガモは先端が黄色。鳥たちが時折見せる愛嬌たっぷりの仕草は、いつまでも見飽きることがない。©Natsuko Okada(Studio Mug)
メインダイニング「日本料理 嘉助」で味わう、
独創的な「山の懐石」
メインダイニング「日本料理 嘉助」の料理も絶えず進化しています。
とりわけ2021年に総料理長に就任し、2023年からは「星のや」和食部門の統括料理長となった石井義博さんの、日本料理の基本をふまえながらも、そこに大胆な独創性を加味した料理は大きな話題を集めています。
「日本料理 嘉助」の夕食は「山の懐石」。その名が示すように、信州の山の幸をふんだんに用いた日本料理です。


緑と白、そこに散りばめられたフルーツトマトの赤と黄色が映える。まるで現代アートを見るかのような、斬新な鍋。©Natsuko Okada(Studio Mug)
目の前に現れたお鍋の中を見てびっくり。敷き詰められたマイクロハーブと白いふわふわの泡に立つクレソンと、顔を覗かせている、色鮮やかなフルーツトマト。緑、白、赤、黄色のコントラストに目が奪われます。そして見事なサシの入った牛肉。
ふわふわの泡はゼラチンを用いて、しゃぶしゃぶの“地”をこのような泡状にしたもの。火を入れると、次第に液体となっていきます。ある程度沸騰したら、そこへ牛肉を。
「強肴」として登場した料理は、牛肉の”だししゃぶ”でした。火を入れる前の状態は、クレソンやマイクロハーブが育つ信州の山奥の光景をどことなく彷彿とさせ、その光景がやがて野菜の滋味をたっぷりと含んだ、しゃぶしゃぶのつゆとなります。
視覚的なインパクトと、そこから広がる極上の味覚。料理長の石井さんの独創が、目にも舌にも感動をもたらしてくれる至福のひとときです。


付出しは、鱧の炙りにおかひじきを添え、梅パウダーと山葵オイルをアクセントとして振ったもの。酢橘をたっぷりと絞っていただく。©Natsuko Okada(Studio Mug)
黄昏時、やがて行燈に灯が入り、幻想的な風景となる「谷の集落」


「日本料理 嘉助」の食事スペースは、棚田をモチーフとした段差で構成されている。朝食と夕食時には、寛ぐ宿泊客の姿がそこここに。©Natsuko Okada(Studio Mug)
棚田に接するように設けられた「日本料理 嘉助」の食事スペースは、棚田をイメージし、幾つもの段差となっています。
壁面の大きなガラス窓からは、棚田を間近に見ることができます。次第に暮れてゆく夏の黄昏時、棚田のそこここに置かれた露地行灯に灯が入り、その周囲を流れる水は、オレンジ色のきらめきとなります。
昼の雰囲気とは趣を変えた棚田と「谷の集落」。「星のや軽井沢」の夏の夜は、ゆっくりと更けていきます。
2回目は今回の旅の目的、「軽井沢 夏の健幸滞在」体験をお届けします。


黄昏時、行燈に灯が入ると、「谷の集落」は幻想的な風景となる。
◆星のや軽井沢「棚田アフタヌーンティー」
・期間 通年(除外日あり)
・提供時間 12時~15時
・料金 1名 9,000円(税・サービス10%別)*宿泊料別
・含まれるもの アフタヌーンティーセット(お菓子・セイボリー・セレクトドリンク)
・予約方法 公式サイトにて5日前24時まで予約にて受付
・定員 1日1組(2~4名)
・対象 星のや軽井沢宿泊者限定
・備考 仕入れ状況や季節により、料理内容や食材の産地が一部変更になる場合があります
text by Sakurako Miyao
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