北陸を代表する日本酒、天狗舞(てんぐまい)を擁する石川県白山市の車多酒造。創業は文政6(1823)年という歴史を持つ蔵元である。現社長である八代目車多一成社長は、銀行員から転身したというユニークな経歴の持ち主。私が酒サムライ活動を始めた2006年からのお付き合いとなる。天狗舞という日本酒の持つキャラクターをいかに発信するか、日本酒を世界へ向けてどうプロモートしていくか、懸命に取り組んできた。
天狗舞は、白山から湧き出る伏流水と加賀平野が育んだ良質な酒米を用い、多くの日本酒を山廃仕込(山卸し廃止酒母)で醸している。山廃仕込は、日本酒の製法の中でも難しい工法だ。1960年代、七代目 車多壽郎と能登杜氏の中三郎の果敢な挑戦により、天狗舞流の山廃仕込を成し遂げた。その後も研究を重ね、ついに2005年、中三郎は現代の名工に表彰されるに至る。


「天狗舞 純米大吟醸50」720ml 1,700円(税抜)
天狗舞は山吹色をしているのが特徴だ。麹の製造工程において、他の酒蔵よりも麹菌を繁殖させた方法で作るため、搾りあがったばかりでも麹由来の黄色がかった色となる。通常、活性炭で無色透明に整えるのだが、天狗舞ではそれを行わずあえて自然な色味、山吹色を大切にしている。
天狗舞のウェブサイトの各日本酒のページでは、どんな料理に合うかを丁寧に紹介している。ワインは、牡蠣にはシャブリ、のようなマリアージュの基本があるが、日本酒なら牡蠣にもキャビアにもカラスミにも合う。実は日本酒はワインよりも許容範囲が広いのだ。どんな食事と合わせるか、マリアージュを楽しみながら飲むことで、日本酒のイメージはがらりと変わる。車多社長は「ワインに代わるプレミアムな、グルメとともに楽しむもの」という文脈で海外へもプロモーションし、成功している。天狗舞は日本酒の固定観念を打ち破る、チェンジメーカーのような日本酒である。
(平出淑恵 談)


銀行員から転身した八代目車多一成社長。酒サムライ、IWCでの活動を通じ、海外へのプロモーションも積極的に行ってきた。
平出淑恵セレクト 「天狗舞」おすすめの2本
天狗舞 山廃仕込純米酒
天狗舞の特徴である山廃仕込の代表的な1本。「刺身、焼魚、鍋など多くの和食、そしてステーキなどの洋食にも合うオールマイティなお酒です」。
種類:純米酒
原料米:五百万石等の酒造好適米
精米歩合:60% 全量自家精米
日本酒度:+3
720ml 1,400円(税抜)
天狗舞 純米大吟醸50
天狗舞の中では比較的軽やかなタイプ。「きれいな酸味、軽快な旨味で、冷やしてワイングラスでどうぞ。大吟醸ですが香りはおだやかなので、食事にもよく合います」。
種類:純米大吟醸酒
原料米:山田錦
精米歩合:50% 全量自家精米
日本酒度:+3
720ml 1,700円(税抜)
◆天狗舞 株式会社 車多酒造
石川県白山市坊丸町60-1
076-275-1165
平出淑恵 Toshie Hiraide
1962年生まれ。日本酒の国際化からインバウンドの地方誘客を目指す株式会社コーポ幸 代表取締役。酒サムライコーディネーター。IWCアンバサダー。昇龍道大使(中部・北陸9県のインバウンドアンバサダー)
Premium X 酒造りの誇りを胸に。世界が認める日本酒・蔵元選
日本酒の誇りを取り戻し、日本酒文化を日本国内のみならず、広く世界に伝えていくために、若手の蔵元の全国組織「日本酒造青年協議会」が2006年から始められた活動「酒サムライ」。Sake から観光立国をという夢を実現すべく活動する酒サムライ コーディネーター 平出淑恵が選ぶ、日本酒好きなら一度は訪れるべき個性豊かな酒蔵と、そこで味わいたい日本酒を紹介していく。
(敬称略)
Premium Japan Members へのご招待
最新情報をニュースレターでお知らせするほか、エクスクルーシブなイベントのご案内や、特別なプレゼント企画も予定しています。
Stories
Premium X
酒造りの誇りを胸に。世界が認める…
Premium X