北野天満宮北野天満宮

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その先の京都へ

2023.6.15

京都の北野天満宮の七不思議と上七軒散策~歌舞練場からスコンの美味しい話題のカフェまで













学問の神様として知られる菅原道真公を祀り、全国におよそ12,000社ある天満宮と天神社の総本社でもある「北野天満宮」。地元の人々に「北野の天神さま」と親しまれている神社の境内には、「天神さんの七不思議」と呼ばれる場所がある。古くから言い伝えられている7つのスポットを巡った後は、「北野天満宮」の参道でもある上七軒へ。芸舞妓さんに出合うことができるビアガーデン、京都でも有数の老舗和菓子店、メニューはただひとつのこだわりのティールーム……。花街ならではの華やかさを随処に感じさせるこの街の、お勧め立ち寄り処を紹介する。

 

 

 

 

 

 









北野天満宮 縁日や梅苑で親しまれている「北野の天神さま」

 

 

10世紀半ばに創建された「北野天満宮」は、国を守護する神様として代々皇室の崇敬を受けてきた一方で、豊臣秀吉公が境内一帯で催した北野大茶湯が物語るように、日本文化発信地の社としても仰がれてきた。また、1,500本の梅が咲き誇る梅苑、「花の庭」の公開(2月下旬から3月上旬)や、毎月25日に開かれる縁日、「天神さんの市」など、京都のみならず多くの人に親しまれる神社でもある。

 





早春、満開の梅の花が境内を艶やかに彩る。 早春、満開の梅の花が境内を艶やかに彩る。

早春、満開の梅の花が境内を艶やかに彩る。




国宝の御本殿をはじめ、重要文化財の三光門、境内西側の紙屋川沿いの散策路であるもみじ苑など、境内には幾つもの見どころが点在する。そんな見どころの中で、気が付かず通り過ぎがちになってしまうのが、古くから「天神様の七不思議」と称されてきた7つの場所。じっくりと時間をかけてひとつひとつを巡ると、なんだか道真公が身近に思えてくる。

 





古くからの言い伝え、「天神さんの七不思議」
不思議その1  初雪の日には天神様が降りてくる ─影向松─

 

 

大鳥居の右手に立つ一本の松は、創建当時からこの場所にあるとされるご神木。「影向松(ようごうのまつ)」と名づけられたこの松に、立冬から立春前日までに初雪が降ると、道真公が降臨し歌を詠まれる、という伝説がある。




初雪の日には、この松に筆、硯、墨を捧げる 「初雪祭り」が行われる。 初雪の日には、この松に筆、硯、墨を捧げる 「初雪祭り」が行われる。

初雪の日には、この松に筆、硯、墨を捧げる「初雪祭」が行われる。





不思議その2  参道の正面にあるはずの御本殿がない?! ─筋違いの本殿─

 

 

参道から楼門を潜ると見えてくるのは、摂社(本社に付属する神様を祀る社)の地主神社。正面にあるはずの御本殿は左手に。北野天満宮が創建される以前から、地主神社がこの地に祀られていたため、御本殿は地主社の正面を避けて建てられたとされている。





回廊の奥に見える赤い建物が地主社。本殿は 楼門から地主社に続く石畳の左手。 回廊の奥に見える赤い建物が地主社。本殿は 楼門から地主社に続く石畳の左手。

回廊の奥に見える赤い建物が地主神社。御本殿は楼門から地主社に続く石畳の左手。





不思議その3  「三光門」なのに、光はふたつ?! ─三光門─

重要文化財の「三光門」。「三光」とは、太陽、月、星のこと。しかし、この門に掲げられているのは、日の出(赤)と日の入り(黄)の太陽と、上弦の月の彫刻のみで星は見当たらない。平安時代、御所から天皇が北野天満宮に向かって祈りを捧げた際、この門の真上に輝く北極星を三光の「星」に見立てたとのこと。

 

ちなみに、平安時代よりかなり東に移動した現在の京都御所からは、北野天満宮は真北ではなくなっている。





(右)と月(左)のみ。星はかつて門の真上に輝いていた。 (右)と月(左)のみ。星はかつて門の真上に輝いていた。

「三光門」に掲げられた彫刻は太陽(上)と月(下)のみ。




「三光門」に掲げられた月の彫刻。 「三光門」に掲げられた月の彫刻。

「三光門」に掲げられた月の彫刻。





不思議その4   大黒様の口に乗せた小石で運勢占い ─大黒天の燈籠─

 

三光門の東側に並ぶ数多くの燈籠のひとつに、台座に大黒様が刻まれた「大黒天の燈籠」と呼ばれる石燈籠がある。江戸時代に寄進されたこの燈籠の大黒様の口に小石を乗せて落ちなければ、その小石を財布に入れて持っていると金運が舞い込むという言い伝えが。

 

 

 




「落ちない」ということで、最近では受験生の人気スポットに。 「落ちない」ということで、最近では受験生の人気スポットに。

「落ちない」ということで、最近では受験生の人気スポットに。




不思議その5   唯一この牛だけが立っている! ─唯一の立ち牛─

 

北野天満宮の境内には、菅原道真公の使いとされる牛の像が、数多くある。そのどれもが座っているのは、道真の遺体を運ぶ車を引く牛が、途中で座り込んで動かなくなったという故事に因む。唯一、御本殿の大鈴の上の欄間に彫られた牛だけが立ち姿。




なぜ、欄間に彫られたこの牛だけが立っている のかは今も謎とのこと。 なぜ、欄間に彫られたこの牛だけが立っている のかは今も謎とのこと。

なぜ、欄間に彫られたこの牛だけが立っているのかは今も謎とのこと。





不思議その6   御本殿の裏にも別の神様が!  ─裏の社─

 

北野天満宮の御本殿は、正面だけでなく裏からも拝むことができる造りになっている。「裏の社」と称されるその場所には、本殿の御神座と背中合わせの形で、道真公のご先祖様である「御后三柱(ごこうのみはしら)」が祀られている。なぜ「裏の社」が造られたのかは謎である。

 




天神様へのお参りは、「裏の社」まで礼拝するのがしきたり。 天神様へのお参りは、「裏の社」まで礼拝するのがしきたり。

天神様へのお参りは、「裏の社」まで礼拝するのがしきたり。

 

 

 






不思議その7   境内には天狗がいた!?  ─天狗山─

境内の北西に連なる朱塗りの鳥居の奥には小さな牛の石像が祀られている。この社の奥にある小高い丘が天狗山。室町末期に描かれた絵図にも、この位置にユーモラスな姿の天狗の絵が描かれている。なぜこの丘が天狗山と称されるようになったかは不明。




連なる鳥居の奥が、天狗山があったとされる場所。鬱蒼と茂る樹々が神聖な雰囲気を醸し出す 連なる鳥居の奥が、天狗山があったとされる場所。鬱蒼と茂る樹々が神聖な雰囲気を醸し出す

連なる鳥居の奥が、天狗山があったとされる場所。鬱蒼と茂る樹々が神聖な雰囲気を醸し出す。

北野天満宮
京都市上京区馬喰町
開門時間:6時~17時





芸舞妓さんによるおもてなしは、花街のビアガーデンならでは
上七軒ビアガーデン

 

 

北野天満宮の門前町である上七軒は、その発祥が室町時代と、京都の五つの花街の中で最も古い歴史を持つ。花街を象徴する上七軒歌舞練場は、夏になるとビアガーデンに様変わり。名士の社交場としても知られる期間限定の催しは、多くの人がオープンを待ち望む、上七軒の夏の風物詩となっている。今年(2023年)は、7月1日から9月5日まで開催される。もちろん一見さんも大歓迎(ただし、保護者同伴の場合も含め未成年者は入場禁止)。

 

 








歌舞練場の建物という、独特の雰囲気でいただくビールの味は格別。 歌舞練場の建物という、独特の雰囲気でいただくビールの味は格別。

歌舞練場の建物という、独特の雰囲気でいただくビールの味は格別。©上七軒歌舞会




五つ団子の紋章が入った提灯が出迎える歌舞練場の門をくぐる。華やいだ雰囲気に包まれる。日本庭園を望む室内、池に面した欄干、そして庭園内など歌舞練場内の施設が客席に。その客席を揃いの浴衣に身を包んだ芸舞妓さんがご挨拶に訪れ、「おたのもうします」と名前の入った千社札を渡してくれるのも、花街ならでは。

 

 

冷えたビールと歌舞練場独特の空気を堪能した後、上七軒の通りに出ると、宵も次第に更けてきた頃合い。三味線と、それに合わせたさざめきがどこからともなく聞こえてくる。そんな夜の花街を散策するのも楽しみのひとつだ。




芸舞妓さんの千社札は福を呼び込む縁起物といわれる。団扇も販売されているので、お土産に。 芸舞妓さんの千社札は福を呼び込む縁起物といわれる。団扇も販売されているので、お土産に。

芸舞妓さんの千社札は福を呼び込む縁起物といわれる。団扇も販売されているので、お土産に。©上七軒歌舞会

上七軒ビアガーデン
京都市上京区今出川通七本松西入真盛町742
営業時間:17時30分~22時(2時間制)





丸ごと一個の夏みかんの中に詰められた、ふるふる寒天
有職菓子御調進所 老松

 

北野天満宮の東門から上七軒通りを今出川通に向かって歩く。進行方向右手、千本格子が連なる風雅なたたずまいに掛けられた、紺地と白地の二つの暖簾が目に入る。京都でも有数の老舗和菓子鋪「老松」の北野店だ。正式な名称は「有職菓子御調進所 老松」。この名称が物語るように、「老松」は朝廷に伝わる儀式・典礼の際に登場する菓子をはじめ、茶道に用いる菓子を古くから手掛けてきた。

 

暖簾を潜り店内に。天井近くに飾られたさまざまな木型が目に入る。この木型を用いて、茶席の干菓子が作られる。紅葉、桜、菊……。季節の花や伝統的な文様を象った木型の数々は、眺めているだけでも楽しい。店内に並ぶ菓子は茶道用の干菓子や主菓子をはじめ、さまざま。なかでも、春から夏にかけてとりわけ人気なのが「夏柑糖(なつかんとう)」だ。




老松のかまえ 老松のかまえ

歴史と風格を感じさせる店構え。石畳の通りに千本格子が美しく映える。©老松




和歌山や萩で採れた夏みかんの実を絞った果汁に砂糖と寒天を加えたものが、実を取り出したあとの夏みかんのなかに入っている。この「夏柑糖」が出回るのを毎年心待ちにしている人も多い。4月上旬からお目見えし、夏みかんがなくなる6月中旬から7月上旬には品切れとなる。電話で予約してから来店するのがお勧め。



春から夏にかけてとりわけ人気の「夏柑糖」だ。 春から夏にかけてとりわけ人気の「夏柑糖」だ。

夏みかんのほろ苦さと、ほのかな甘み、さっぱりとした口当たり。残った皮はピールにするとまた格別の味。©Naoki Miyashita

 

 

有職菓子御調進所 老松
京都市上京区社家長屋町675-2
営業時間:9時~16時
定休日:木曜日






理想を突き詰めたスコンと浅煎りコーヒーを
CLEHA coffee & tea room

 

 

老松から上七軒通をさらに東へ。南に延びる細い路地を進むと2023年の1月に開店した「CLEHA coffee & tea room」がある。もとは民家だった建物を生かした店舗は、襖やガラス窓などの建具はそのまま。メニューは、スコンと飲み物のセットのみとシンプル。そこには店主佐野亮介・亜也加さん夫妻の思いが込められている。原点はふたりが初めて訪れた神戸のティールーム。以来、いつかはこんな店をと、自分たちのスコンづくりを突き詰めた。製粉から手がけるスコンはザクザクし過ぎない「全粒粉」としっとりなめらかな「プレーン」の2種が基本。外はさっくり、中はふかふか。果物に茶やハーブを合わせた酸味のある自家製ジャムとも好相性。





ヨーロッパのアンティーク家具を配した、素朴にして重厚な空間が心地よい。© CLEHA coffee & tea room ヨーロッパのアンティーク家具を配した、素朴にして重厚な空間が心地よい。© CLEHA coffee & tea room

ヨーロッパのアンティーク家具を配した、素朴にして重厚な空間が心地よい。© CLEHA coffee & tea room






英国式スコンといえば紅茶だが、こちらでは果実味と優しい甘みを持つ浅煎りコーヒーがお薦め。セットドリンクは、ネルドリップもしくは茶漉しを使って淹れるポットブリューのコーヒー2種か、ベルガモットとオリエンタルな果実が香るアールグレイのいずれか。

 

「スコンを介して人が集い会話に花を咲かせたり、ひとりのんびり過ごしたり。そんな時間を楽しんでもらえれば」と亮介さん。華美な装飾を排し、お茶の時間をゆっくりと楽しむ。そんな原点に戻ることができるティールームだ。



茶漉しを使って淹れる浅煎りのコーヒーが、スコンの味を引き立てる。 茶漉しを使って淹れる浅煎りのコーヒーが、スコンの味を引き立てる。

茶漉しを使って淹れる浅煎りのコーヒーが、スコンの味を引き立てる。(写真のチーズスコンのクリームティーセットは7月末まで)© CLEHA coffee & tea room

CLEHA coffee & tea room
京都市上京区真盛町729-12
営業時間:11時~18時
定休日:不定休(訪れる際にはInstagramで確認を)



Text by Masao Sakurai/ Nomura Erina
Photography by Yukiyo Daido for KITANOTENMANGU


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